更新日: 2024.01.18 子育て
高校生の子どもに対する扶養控除が38万円から25万円に! なぜ、そうなるかを考える
本記事では、扶養控除の見直しについて取り上げます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
児童手当と扶養控除の見直し
報道などで耳にしている方も多いかもしれませんが、「令和6年度税制改正大綱」のなかでも扶養控除の見直しは、特に子育て世帯にとって十分に注意を払う必要がある内容となっています。
児童手当の見直しについては、今回の税制改正大綱ではなく、令和6年10月分からの実施がすでに予定されています。これを踏まえて、令和6年度の税制改正として扶養控除の見直しが国会で審議されることになります。そのため、こうした流れをまず押さえるようにしましょう。
ちなみに児童手当の見直しは、支給対象を高校生まで延長し、第3子以降の支給額を3万円に引き上げるほか、所得制限の撤廃がポイントとなっています。
扶養控除の見直しの変遷
国としては児童手当を拡充する代わりに、扶養控除を見直してバランスを取るようです。ここで扶養控除の変遷について概観しておきます。
子どもに係る扶養控除は、平成23年分の所得税から年少扶養親族(16歳未満)に対する扶養控除(38万円)が廃止されています。また、それまで特別扶養親族であった16~18歳までは一般の控除対象扶養親族となり、扶養控除の上乗せ部分(25万円)が廃止されました。そして、特定扶養親族の範囲は19~23歳未満となっています。
図表1
●平成23年分の所得税から適用された扶養控除の改正
出典:国税庁 「平成23年分 所得税改正のあらまし」
これらは当時の政権下で創設された子ども手当が、それまでの児童手当から所得制限を撤廃するなど内容を拡充し、15歳までの子どもに対しては所得控除(扶養控除)ではなく、手当での対応に切り替えたことによります。
つまり、子ども手当として従来の児童手当の内容を改善した結果、それに伴って扶養控除も見直しが行われました。なお、子ども手当は平成24年度から再び児童手当となり、所得制限が設けられています。
現行では子どもに係る扶養控除について、一般の控除対象扶養親族(16~18歳まで)に対して38万円、特定扶養親族(19~23歳未満)に対しては63万円となっていますが、こうした経緯を踏まえ、令和6年度税制改正大綱では扶養控除の見直しが図られようとしています。
具体的には、現行の一般の控除対象扶養親族に対する扶養控除(38万円)について、16~18歳までは平成23年に廃止された扶養控除の上乗せ部分(25万円)を復元するというものです。
報道では、これをもって高校生の子どもに対する扶養控除が38万円から25万円に減額されるといわれることがあります。しかし、十分に留意しておく必要があるのは、所得制限の撤廃や高校生まで支給対象を拡大する児童手当の改善に、扶養控除の見直しが伴っているという点です。
まとめ
本音をいうと、平成23年分の所得税で廃止された年少扶養親族(16歳未満)に対する扶養控除(38万円)と、高校生の年代の子どもを対象としていた16~18歳までの扶養控除の上乗せ分(25万円)が復元され、かつ、児童手当がさらに拡充されることを望みたいという人もいるかもしれません。
しかし、その後に実施された高校の無償化や高等教育の実質無償化も加味して、この程度の見直しにとどめているということなのでしょう。
出典
自由民主党 令和6年度税制改正大綱
国税庁 平成23年分 所得税改正のあらまし
財務省 身近な税 子供がいる場合には、税金はどう変わるのですか?
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)