更新日: 2024.01.29 その他暮らし
ファイナンスとは何か? その3 ファイナンスの種類 パブリック・ファイナンスとソーシャル・ファイナンス
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
パブリック・ファイナンス(Public Finance)とソーシャル・ファイナンス(Social Finance)
パブリック・ファイナンス
主体:
政府またはその関連組織です。
目的:
パブリック・ファイナンスの目標は、政府が市場の失敗を防ぎ、リソースの適切な配分、所得の公平な分配、経済の安定化を実現することです。政府は公共サービスの提供、インフラの整備、福祉プログラムのサポートなど、広範な社会的目標を達成するために資金を提供します。
市場の失敗を防ぐとは、市場経済において市場メカニズムが十分に効果的でない場合、公共の利益を守り、経済の安定性を維持するために政府が市場経済に介入することを指します。
ツール(目的達成のための手段):
パブリック・ファイナンスの手段には課税、融資、補助金、援助、公債の発行などがあります。パブリック・ファイナンスの主な財源は税金であり、政府は市民や企業から税金を徴収します。必要に応じて民間部門に融資をしたり、補助金を出したり、公債を発行したりします。
ソーシャル・ファイナンス
主体:
ソーシャル・ファイナンスの主体は、非営利団体、社会的な企業、社会的な起業家、インパクト・インベスター、および社会的な投資ファンド、個人投資家などのプライベートセクターの機関と個人です。ソーシャル・ファイナンスは、社会的な目標を達成するために財政的な支援を提供し、社会的な利益を最大化するためにこれらの主体が協力して資金を調達します。
主なソーシャル・ファイナンスの主体には以下のものが含まれます:
1.非営利団体:慈善団体や非営利団体は、社会的な使命を達成するために資金を調達し、社会的なプロジェクトやプログラムを実施します。
2.社会的な企業:企業は利益を追求するだけでなく、社会的な目標も達成しようとする社会的な企業が増えています。これらの企業は社会的な問題の解決や社会的な影響の最大化を重視します。
3.インパクト・インベスター(Impact Investor):
インパクト・インベスターは収益を追求するだけでなく、社会的な影響や環境へのポジティブな影響を追求する投資家を指します。彼らは、投資先の事業やプロジェクトが社会的な課題の解決や持続可能な開発に貢献することを重視します。
インパクト・インベスターは、社会的なリターンや環境への影響を評価し、金融リターンと両立させることを目指します。彼らの投資は、社会的な変革や持続可能な開発の推進に寄与することが期待されています。
4.社会的な投資ファンド:
社会的な投資ファンドは、社会的なプロジェクトや企業に資金を提供し、社会的な目標を達成するために専門的なファイナンスソリューションを提供します。
目的:
ソーシャル・ファイナンスとは、営利目的だけでなく、社会的な使命を持つ主体によって推進され、社会的な課題の解決や社会的な影響の最大化を実現しようとする資金調達と投資のアプローチということができます。
ソーシャル・ファイナンスは、資金調達と資金の配分において社会的な影響を最大化することを主要な目標としています。これは、社会的な問題の解決、慈善活動、社会的な起業家精神の促進などを含みます。
ツール(目的達成のための手段):
ソーシャル・ファイナンスは、慈善団体への寄付、社会的な企業への投資、マイクロファイナンスなどの手段を使用して社会的な目標を達成しようとします。
資金調達方法は、主にプライベートセクターからの寄付や投資を利用します。社会的な投資ファンド、社会的な企業、慈善団体などが資金を受け入れ、それを社会的なプロジェクトや慈善活動に割り当てます。
パブリック・ファイナンスとソーシャル・ファイナンスの比較
主体:
パブリック・ファイナンスは政府が中心となり、公共サービスや国家の運営を支援し、社会全体の福祉を向上させるために資金を管理します。一方、ソーシャル・ファイナンスは非営利団体やプライベート部門が中心となり、社会的な課題の解決や社会的な目標の達成、環境問題の改善などに取り組みます。
目的:
パブリック・ファイナンスの目的は政府が設定した公共サービスの提供、インフラの整備、社会的なプログラムの支援、国防など、社会全体の福祉に貢献することです。また、市場の失敗を防ぎ、経済の安定性を維持し、所得の再分配を行うこともパブリック・ファイナンスの目的です。
それに対し、ソーシャル・ファイナンスはプライベート部門が設定した社会的な目標の達成、社会的な課題の解決、環境保護、社会的な影響の最大化です。ソーシャル・ファイナンスは、利益追求だけでなく、社会的な使命の達成を重視します。
ツール(目的達成のための手段):
パブリック・ファイナンスのツールには、税収、政府予算、政府債券、財政政策、金融政策などがあります。政府はこれらの手段を使用して収入を確保し、支出を計画し、経済を調整し、社会的なニーズを満たします。それに対し、ソーシャル・ファイナンスの主体はプライベート部門のため、自ら資金を調達する必要があります。
ソーシャル・ファイナンスのツールには、ソーシャルインパクトボンド(SIBs)、社会的な投資ファンド、社会的な企業からの寄付、社会的な投資基金、マイクロファイナンスなどが含まれます。これらの手段を使用して、社会的な課題に資金を提供し、社会的な影響を評価し、社会的な変革を実現します。
マイクロファイナンス(Microfinance)は、小規模な企業や個人が金融サービスにアクセスできるようにする金融の形態です。通常、これらの個人や企業は銀行などの伝統的な金融機関から融資を受けにくいため、マイクロファイナンスは彼らに貸し付け、貯蓄、保険、その他の金融サービスを提供します。
パブリック・ファイナンスとソーシャル・ファイナンスはともに公共の福祉を最大化するという目標は似ていますが、パブリック・ファイナンスは主体が政府のため、政府の政策にそって目標設定されるのに対し、ソーシャル・ファイナンスはプライベート部門または資金提供者が立てた目標に沿って活動が行われるのが相違点です。
まとめ
3回にわたり、ファイナンスに関して解説しました。ファイナンスとは単なる銀行融資ではなく、株式発行や社債発行やそれらに関係する資金調達、資産運用などの広範な経済活動を指す言葉だということが分かっていただけたと思います。
また、ファイナンスを行う主体により目的達成のための手段(ツール)も異なり、さまざまなやり方があることもご理解いただけたと思います。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー