更新日: 2024.01.29 その他暮らし

節約目的で「賃貸」から「マイホーム」に買い替えます。注意点を教えてください。

節約目的で「賃貸」から「マイホーム」に買い替えます。注意点を教えてください。
「賃貸に住むより、マイホームを購入して住む方が節約になる」という記事やSNSでの投稿を、時折インターネット上で目にすることがあります。しかし、マイホームの購入にはいくつもの注意点があります。
 
今回は、節約目的でマイホームを購入する際の、注意点をお伝えします。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

「今の家賃より安くなります」が必ずしもそうとはかぎらない

マイホームを購入するきっかけの一つに「家を買った方が、今の家賃~円より安くなります」という、うたい文句があるでしょう。特に家賃を10万円以上支払っているような世帯であれば、一度や二度はそのようなことを周囲から言われたり、広告などで目にしたりしたことがあるのではないでしょうか。
 
しかし、このようなうたい文句は多くの場合、毎月のローンの支払いのみと比較したものです。
 
例えば、ある賃貸住宅に35年間住むとして、毎月10万円の家賃を支払いつづけると、支払総額は35年間で4200万円です。同様の価格帯である4200万円のマイホームに住み替えたとしましょう。40年50年と長く住むにつれて、家自体への支払総額は、確かにマイホームの方が安くなっていきます。
 
一方でマイホームは、賃貸に住む場合はなかったであろう支出が多く生じます。固定資産税といった税金の他、およそ5年から10年単位で生じるであろう、家の経年劣化による修繕維持の工事費用などがいい例です。
 
特に、老後に一軒家のリフォームをするという場合、費用が数百万円を優に超えることもあるようです。参考までに、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「2022年度 住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」によると、実施されたリフォームの平均金額は、一戸建てで471.6万円、マンションで278.6万円であることが分かりました。
 
こういった諸費用を考えると、生涯の実質的な居住費が今の家賃と比較してさほど安くならないことや、むしろ高くなる可能性があることも知っておくべきでしょう。
 

住居費に頭を悩ませることになる可能性がある

見落としがちな観点ではありますが、賃貸物件において「毎月一定額の家賃が発生する」という点は、大きなメリットです。引っ越しなどしない限り、毎月の家賃分の支出額を見込んでおけば、予想外な設備故障による修繕や、将来のリフォームに向けた貯金などに、頭を悩ませる必要もありません。
 
しかし、マイホームを購入すると、先に解説した毎年の固定資産税のほか、定期的な修繕などに頭を悩ませることになります。
 
国土交通省「住宅ローン減税制度について」には、住宅ローン控除(最大13年間、各年末の住宅ローン残高の0.7%が、所得税額などから控除されるもの)を受ける主な要件として「その者が主として居住の用に供する家屋であること」とされています。
 
そのため、例えば夫の転勤が決まっても、一家で引っ越すことができず、家族はマイホームに住みつづけて夫だけ単身赴任、ということも珍しくありません。そうなると、住宅ローンの支払いに加えて、夫が単身赴任をしている間は夫の居住するアパートの家賃も発生し、居住費に頭を悩ませるようになることも十分あり得ます。
 

収入に応じた住み替えが難しくなる

マイホームは一度購入すると住み替えが難しくなります。加えて、高価な物である以上、売るにも貸すにも時間がかかります。住宅ローンや住宅ローン控除を抱えていればなおさらです。それにより、転職や離職などで収入が5万円・10万円と大幅に下がっても住み替えができず、苦しい思いをしてマイホームに住みつづけている世帯もあります。
 
一方で、賃貸であればそういったことにとらわれず、比較的容易に引っ越しをし、柔軟なライフプラン設計ができます。
 
マイホームを購入するということは、簡単に引っ越しできなくなることと同義です。途中で収入が下がるなどして、住宅ローンを支払うことが難しくなると、もう節約どころではありません。
 
万が一のリスクを踏まえ、収入に応じて比較的容易に家賃の安い場所へ移住できる、賃貸のメリットについても十分考慮しておくことをおすすめします。
 

まとめ

「賃貸に住むよりマイホームを購入して住んだ方が、生涯での支出が安くなる」といわれることもありますが、必ずしもそうではありません。リフォームや税負担などを含めると、意外にもマイホームには多くの支出が生じます。
 
加えて、収入の減少や転勤などで居住費に頭を悩ませるようになっても、簡単には住み替えができなくなります。
 
マイホームを節約目的で購入すると痛い目を見るかもしれません。マイホームの購入に当たっては、実質的な生涯の支払額を試算し、その上で、途中で収入が減少したり途絶えたりした場合や、転勤する場合のリスクも考慮するべきでしょう。
 

出典

国土交通省 住宅ローン減税制度について
一般社団法人住宅リフォーム推進協議会 2022年度 住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査 結果報告書
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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