更新日: 2024.02.08 その他暮らし

座って通勤するために、ひと駅前の「始発駅」から乗車したいです。「定期券区間外」なのですが、犯罪になるって本当ですか? バレたらどうなるのでしょうか…?

執筆者 : 浜崎遥翔

座って通勤するために、ひと駅前の「始発駅」から乗車したいです。「定期券区間外」なのですが、犯罪になるって本当ですか? バレたらどうなるのでしょうか…?
終着駅でいったん下車した後、折り返し運転の同じ電車に乗りなおす、もしくは下車せずに乗り続ける人を見たことはありませんか? ラッシュ時でもなんとか座って通勤や通学をしたい人たちが裏技的に使う乗り方です。
 
中には、「自分もやってみよう」と思う人もいるかもしれません。一方で、定期区間外の終着駅で折り返す、つまり「定期区間外の始発駅まで戻る行為は不正乗車である」「バレたら多額のお金を払うことになる」などと耳にしたことがある人もいるはずです。

本記事では実際に不正行為にあたるのか、もし不正行為にあたるとして発覚した場合はどれだけのお金を支払うことになるのか解説します。
浜崎遥翔

執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

定期券区間外の始発駅まで戻ることは不正乗車になる

定期券区間外の始発駅まで戻る行為は不正乗車です。根拠は運賃の決まり方にあります。
 
「運賃は改札を通った2つの駅で決まる」は多くの人が思い込んでいる誤解です。例えば東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の場合、「旅客運賃・料金は、旅客の実際乗車船する経路及び発着の順序によって計算する。」と旅客連絡運輸規則第42条に明記しています。
 
つまり、実際の運賃は乗車した経路によって決まります。図表1のようにB駅からA駅に戻ってC駅に乗車するケースではB駅からA駅の運賃とA駅からC駅の運賃が必要です。
 
図表1

筆者作成
 
B駅からC駅までの定期券しか持っていないにもかかわらずA駅に戻った場合、本来支払うべき運賃を支払っていないため不正乗車に当たります。
 

不正乗車をするとどうなる? 2つの大きなペナルティ

万一、不正乗車がバレたとき、乗客は2つの大きなペナルティを受ける可能性があります。定期券の没収と割増運賃の支払いです。
 

不正乗車に使われた定期券はその場で没収

JR東日本の旅客運輸規則第168条によると「係員の承諾を得ないで、定期乗車券の券面に表示された区間外の区間を乗車したときは定期乗車券が無効となる」とされています。
定期区間外の始発駅に戻る行為が発覚すると、定期券を失うことになるのです。
 

割増運賃で支払いは通常の3倍

JR東日本の旅客連絡運輸規則第265条によると、「定期乗車券を無効として回収する場合、不正に乗車した区間に対する普通旅客運賃とその2倍に相当する額の増運賃をあわせて収受する。」としています。
 
つまり通常の3倍の支払いが必要で、始発駅までの片道料金が190円である場合、請求される金額は往復料金380円の3倍に当たる1140円です。
 
定期券を使った不正の場合は毎日不正を行っていたものとみなされ、定期券使用開始日からさかのぼって請求されることもあり得ます。例えば、定期券の開始が90日前であった場合は10万2600円です。
 
発覚したときの対応は悪質度などによって個別に変わってくるので、必ずしも高額の割増料金を請求されるわけではありません。しかし、大きなペナルティを受ける可能性があることを知っておきましょう。
 

乗り過ごしや間違えて乗ってしまった場合の支払いは免除

「疲れて寝過ごした」「乗る電車を間違えた」などのケースでは、追加の運賃を支払う必要はありません。
 
JR東日本の旅客営業規則第291条にも「乗車券面に表示された区間外に誤って乗車した場合において、係員がその事実を認定したときは、別に誤乗区間の旅客運賃・料金を収受しない。」と記載されています。駅員に理由を聞かれたときは、正直に説明しましょう。
 

座って通勤したいなら正しい定期券を購入しよう

どうしても戻って座りたいなら、始発駅まで含めた区間の定期券を買いましょう。月あたり数千円負担が増えますが、快適に通勤できるなら決して高くないのではないでしょうか。
 
自宅最寄り駅からでも、始発駅からでも目的地までの定期券代が変わらないというケースもあります。例えば西千葉駅から東京駅までの1ヶ月の定期券代は1万9980円ですが、始発駅の千葉駅から東京駅までの定期券代も同額です。
 
発覚する可能性は低いかもしれませんが、定期区間外の始発駅に戻る行為は不正乗車に違いありません。無用なトラブルを防ぐためにも、正しい運賃を支払った方が良いでしょう。
 

出典

東日本旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸規則
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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