兄から「400万円」を借りるのですが、「契約書を作ろう」と言われました。兄弟間でも作るべきですか?
配信日: 2024.02.25 更新日: 2024.02.27
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
お金の貸し借りには本来契約書は不要
基本的にはお金の貸し借りは契約書がなくとも成立するようです。お金の貸し借りは、民法五百八十七条にあるように、いずれ返すことを約束してお金を受け取れば「有効にお金の貸し借りをした」という契約が成立します。契約書の作成や押印は、契約の成立要件とはされていないのです。
例えば、兄から400万円のお金を「10年後に返す」という合意の下で受け取れば契約成立、という具合です。このように、契約書はお金の貸し借りにおいて、絶対的に必要というものではありません。
契約書を作ることで、贈与と間違われることを防ぐ
兄弟間でお金の貸し借りをする際に、契約書を作成する最大のメリットには「贈与と間違われることを防ぐ」という点があります。
仮に相続などが起こり、税務署からお金の動きについて尋ねられた際に、それが贈与であるのか貸し付けであるのか外形的には判断ができないこともあるでしょう。
定期的に一定額のお金が返済されていれば、それで証明できることもあるのですが、兄弟間でよくある「余裕ができたときに返す」などであれば、特に判断がつきづらいです。そういった場合でも契約書があれば、贈与でないことを客観的に証明することができます。
例えば、贈与税は年間110万円を超えた部分にかかります。仮に400万円のお金の貸し借りがあったとして、それが万が一贈与だと見なされてしまうと、およそ33万円の贈与税が発生します。
契約書を作る際のちょっとした手間で、贈与税が発生することを防げると考えると、契約書を作成する意味は大いにあるでしょう。
争いを防ぐことにもつながる
家族という関係性も相まって、兄弟間ではお金の貸し借りについて緊張感がなくなってしまうこともあるでしょう。
口約束で「いつまでに返す」「毎月何円ずつ返す」と決めていたとしても、返済がなされなかったり返済が滞ったりするなどのことから、トラブルになるのもよくある話です。
兄弟間に限らず、親子や親戚の間など「身内でのお金の貸し借りがトラブルになった」という話は、誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。こういった事例では多くの場合、契約書が作られておらず、トラブルが起こっていてもおかしくありません。
一方で、兄弟間であったとしても、貸し借りの日付や金額、返済日や返済額などを明確にした契約書を作ることで、そういった争いを一定程度防ぐことができるようになります。内容が明確に書面として残ることで、双方の勘違いや思い込みがなくなるからです。
契約書は公正証書にしておくべき?
契約書には、公証役場にて公証人の認証を受けて作成する「公正証書」というものもあります。公正証書とすることで、内容について法の専門家たる公証人の認証を受けられ、契約書の存在をより厳格なものとすることができます。
ただし、公正証書を作成するには一定の費用や手間がかかります。そのため、公正証書は一般的に、相手が逃亡する恐れがある場合や、信用が完全にできない場合に利用されます。通常、兄弟間であればそこまで手間をかけて作成する必要はないため、無理に公正証書とまでする必要はないでしょう。
まとめ
兄弟間のお金の貸し借りであっても、贈与と間違われることや勘違いなどから起こる争いを防ぐためにも、契約書は作成しておくべきでしょう。金額が400万円とあれば、決して小さな額ではないため、なおのこと作成しておくことをおすすめします。
もし、兄弟間でお金の貸し借りがあれば、兄弟間だからこそ、お互いのために契約書を作成した方がいいでしょう。
出典
e-GOV法令検索 明治二十九年法律第八十九号 民法 第五百八十七条
国税庁 No.4408贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:柘植輝
行政書士