更新日: 2024.03.14 子育て

子どもが3人いると「大学無償化」になるって本当ですか? わが家は「2歳差」なのですが、全員の学費が無償になりますか?「年の差」によっては難しいのでしょうか?

執筆者 : 山田圭佑

子どもが3人いると「大学無償化」になるって本当ですか? わが家は「2歳差」なのですが、全員の学費が無償になりますか?「年の差」によっては難しいのでしょうか?
2023年12月22日に閣議決定された「こども未来戦略」において「多子世帯の大学等の授業料等無償化」が盛り込まれ、話題になりました。ここで言う多子世帯とは「3人以上の子どもを扶養する世帯」を指しています。
 
本記事では、無償化となる条件を確認するとともに、2歳ずつ年の離れた3きょうだいのケースと、1歳ずつ年の離れた3きょうだいのケースで、実際にどれくらい無償化の恩恵を受けられるのかシミュレーションします。整理しながら理解していきましょう。
山田圭佑

執筆者:山田圭佑(やまだ けいすけ)

FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

「3人以上の子どもを扶養している」状況とは

「3人以上の子どもがいる世帯は大学無償化」という言葉に、「子どもが3人いれば条件に当てはまり、3人のきょうだい全員が大学無償化の対象になる」と思いがちですが、そうではありません。あくまでも「親世帯が子ども3人以上を扶養している間」は、子どもの通う大学等の学費が、実質無償化になるというものです。
 
具体的には、3きょうだい全員が親の扶養を受けている時期は、その間大学生等の身分であるきょうだい全員の学費が無償化されますが、3きょうだいのうち1人でも親世代の扶養を外れて働くようになると、「親世帯が3人以上を扶養している」という条件に当てはまらなくなり、この世帯は無償化の対象外となります。
 
文部科学省の資料によれば、この政策の考え方・目指す効果は以下とされています。
 

・子どもが何人いても、全ての世帯の大学等の授業料等の負担を最大2人分までにする
 
・「同時に多くの子どもを扶養して、家計負担が重くなっている時期」の教育費負担を軽減
 
・多子世帯において、長子等の教育費負担が第2子以降に影響しないようにする

 
2人きょうだいまでの場合は大学等の学費は全額家庭が負担、3人きょうだい以上であれば全額無償化という状況では差がありすぎて、国民からの反発も予想されます。
 
「親世帯が3人以上を扶養している間」という条件は、ひとりっ子や2人きょうだいを扶養する家庭と、3人以上のきょうだいを扶養する家庭との間の公的支援額の格差を防ぐための措置とも言えるでしょう。
 

「2歳ずつ年の離れた3きょうだい」は、どれだけ学費が「無償化」される?

ここからは、「2歳ずつ年の離れた3きょうだいが、全員4年制の大学に入学、留年・浪人などはせずに卒業し、卒業後はすぐに親の扶養から抜ける」という状況を仮定し、その場合、どれだけの学費が無償化されるのかをシミュレーションしてみます。
 
この制度による支援金額は、閣議決定の資料に記載されている通り、「(年間)授業料は国公立約 54 万円、私立約 70 万円、入学金は国公立約 28 万円、私立約 26 万円」とします。
 
このケースの場合、無償化の対象となる期間、無償化される大学の学費は図表1の通りになります。
 
図表1

図表1

文部科学省の資料から筆者作成
 
今回のモデルケースでは約380万円~約472万円相当の学費が無償化されると見込まれます。なお、3きょうだいがそれぞれ1歳違いの年子であった場合は、図表2の通りになります。
 
図表2
図表2

文部科学省の資料から筆者作成
 
総額で約570万円~約708万円の大学の学費が無償化となり、3きょうだいが2歳違いである場合よりも約190万円~約236万円、金額が増えるという結果になりました。
 
また、レアケースだと思われますが、3人きょうだいが「三つ子」である場合は全員が大学等の卒業まで入学金・年間授業料とも無償化の対象となるため、語弊を恐れずに言えば「最も得をする」パターンと言えます。
 
なお、「無償化」の対象となる学校はいわゆる「大学」だけでなく、短期大学や専門学校も対象となります。自分の子どもが希望する進学先は無償化の対象になるのかを調べたい場合は、文部科学省が公開している「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧覧」をご覧ください。
 

今後明らかになる細かい制度・条件にも注目しよう

現在までに公開されている情報をもとにシミュレーションしましたが、これはあくまで現時点に判明している政策の概要であることに注意しましょう。
 
筆者が調べた限りでは、子どもが大学などで留年するなど、イレギュラーな事態が起きた場合の対応については現時点で想定されていないようでした。今後、政策の実施時期が近付くにつれて、制度の詳細が明らかになっていくと思われます。本制度について関係のある世帯の方は、引き続き注目していきましょう。
 

まとめ

「2歳ずつ年の離れた3きょうだいが、全員4年制の大学に留年・浪人などはせずに卒業し、卒業後はすぐに親の扶養から抜ける」というモデルケースにおいては、3きょうだいの進学先が全員国公立大学であれば約380万円、全員私立大学であれば約472万円分の学費が無償化されると見込まれることが分かりました。
 
あくまで今回のシミュレーションは現時点で判明している情報によるものですので、本制度に関係のある子育て世代の方は、今後の制度の動きに注目していきましょう。
 

出典

文部科学省 奨学金制度の充実 (令和7年度~)こども未来戦略を受けた多子世帯の大学等の授業料等無償化について
文部科学省 「こども未来戦略」の「加速化プラン」等に基づく高等教育費の負担軽減策について(令和6年度開始)
文部科学省 支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧
内閣官房 「こども未来戦略」
 
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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