更新日: 2024.04.05 子育て

子ども2人を私立中学に入れたいです。年収400万円+300万円の40代共働き夫婦はNISAで資産形成したほうがいいですか?

執筆者 : 柴沼直美

子ども2人を私立中学に入れたいです。年収400万円+300万円の40代共働き夫婦はNISAで資産形成したほうがいいですか?
NISAというと「非課税貯蓄」という訳語が独り歩きしているようなイメージがあります。イメージで「長期資産形成」=NISA、そして運用益に課税されない、という一部分だけを取り上げて、「子ども2人を私立中学に進学させるならば、長期投資で非課税のNISAがいい」と結論づける前に考えてみたいと思います。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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NISAはメリットばかりではない

NISAというとメリットばかりが目につきますが、注意しなければならない点もありますので整理しておきましょう。
 

1.NISAを利用したからといって必ず収益が出るわけではない
2.運用益は非課税だが、損失もなかったことにされてしまう
3.投資商品を選ぶ際に経験や知識が求められる

 
そもそも、NISAは自分たちで資産を運用することを後押しする制度です。定期預貯金のように、預けっぱなしにして資産が増えるわけではありません。定期預貯金に預けるということは、預けた先の金融機関はその資金を主に国債などの債券に投資するからです。
 
つまり、投資で得られた収益に課税しないので、「みなさんの自己責任で投資信託など(元本保証でない)商品に投資しましょう」というメッセージが込められています。言い換えると、「収益が得られた場合、それはなかったことにしてあげますよ。しかし、損失が出た場合にも、なかったことにしますからね」ということです。
 
また、投資信託は元本保証でないため、「必ず収益が出る」というわけでもありません。さらに、上場投資信託は数多くあります。そのなかから、長期的に収益が上がると思われるものを「自分で」選ばなければなりません。
 
こういった注意点を考えると、NISA=万能と考えるのはリスクがある、といえるかもしれません。
 

700万円ダブルインカムでも、子ども2人の私立中学は厳しい

次に、ベースとなる夫婦共働きでの年収700万円について考えてみましょう。
 
家計運営は教育費だけを取り出して考えることはできず、住居費や日頃の生活費などを総合的に考えあわせなければなりません。また2人のお子さまの年齢、ご夫婦の年齢なども考える必要があります。
 
2人のお子さまの年齢が大きく離れている場合は、1人目と2人目はそれぞれ1人として2回、と考えることもできますが、年齢が接近している場合は「かける2」で考えなければいけません。そのうえ、住居費が家計に対してどの程度のウエイトを占めているかによって状況は変わります。
 
仮に住居費負担が軽い場合で、年収2人あわせて700万円=2人の所得は、合算でざっくり8がけの560万円(税金・社会保険料などを控除した場合の可処分所得)と仮定した場合、これらの所得だけで2人の私立中学学費を賄うのは厳しいといえるでしょう。
 

「私立中学授業料無償化」をベースに考えるのが現実的

東京都では2024年度から年収制限を撤廃して「都内に住んでいる保護者を対象に年間10万円の授業料補助」という制度をスタートさせます。東京都以外でも行政区によって「所得制限ありの私立中学授業料無償化」などの制度を発表している自治体が増えています。
 
あるいは学校によっては、成績などの条件も含まれるケースが多いですが、「学校独自の授業料免除制度」などを打ち出して優秀な生徒を呼び込む取り組みを実施しています。こういった制度を活用するのが、最も現実的ではないでしょうか。
 
このような制度は以前よりも利用しやすくなりましたが、注意点もあります。制度は国、自治体、学校などが独自で設定しています。財政状況や年度・方針などによって変わりますので、日頃から情報収集をしっかり行う必要があります。
 
また、応募書類の提出締め切りや、必要書類がそろっていないと受理してもらえないなどのトラブルも起こりがちです。役所や学校で早めに相談する、書類不備を絶対に避けるなど、共働き夫婦には荷が重いですが、数多くある投資商品から長期的な値上がりを見極める商品を選ぶことに慣れていないならば、より実現可能性の高い手段ではないかと思われます。
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

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