母が田舎に一人暮らししており、「月8万円」の年金でやりくりしているようです……「年間110万円」までなら支援してもいいでしょうか?
配信日: 2024.05.30 更新日: 2024.05.31
そこで、1月当たり8万円の年金で一人暮らしをしている親へ、「支援は年間110万円まで」と考えている方の相談例を基に、解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
相談者はなぜ「年間110万円」と考えてしまうのか
「親への支援は年間110万円まで」と考える方がいる原因には、「贈与税」の存在があります。贈与税とは、個人間への贈与へ適用される税金で、年間110万円を超える部分について発生するものです。例えば、親から子へのお小遣いの他、子から親への仕送りやプレゼントなどが該当します。
贈与税が年間110万円までなら発生しない理由には、それに係る基礎控除の存在があります。贈与税には、110万円という額で基礎控除が設定されているからです。基礎控除の範囲内であれば、贈与税の計算上は所得が存在せず、贈与税が発生しないこととなるのです。
生活支援のためであれば110万円を超えてもよい
先述の「年間110万円まで」という基礎控除額は、一般的な贈与の範囲に関するものです。しかし単なる贈与ではなく、生活のための資金援助であれば、贈与税の基礎控除の範囲内とは別枠で、かつ、110万円を超える額であっても非課税となります。
なぜなら、親子間において生活をしていくための資金援助なら、扶養義務者間での支援となるため、金額にかかわらず非課税とされるからです。ただし、その額が生活に必要な額を超えてしまっている場合は、贈与扱いとなります。
例えば、相談者の母には現時点で1月当たり8万円の年金があります。年間では、96万円の収入があるわけです。生活していくためにはあと120万円が必要というような場合、その120万円には贈与税がかからず、非課税となるのです。
なお、何円までなら扶養義務者における「扶養」の範囲となるのか、明確に基準があるわけではありません。その点は、個別の事情を加味して相当な額を考えることとなります。そのため、具体的な額は個別の事情によって異なってくることを知っておいてください。
離れた親に支援するなら、扶養も検討を
離れた親に仕送りをしているのであれば、親を扶養に入れることを検討してみましょう。扶養に入れることで、税金を安くすることができます。
扶養に入れるというと、同居が必要であるように感じられるかもしれませんが、そうではありません。遠隔地に住む親も扶養に入れることが可能です。そのためには、扶養していることの証明として、定期的な仕送りが必要です。例えば、毎月生活費と病気の治療費として15万円ずつ仕送りをしているなどです。
なお、扶養に入れる場合、収入要件も問題となります。とはいえ、親が年金をもらっている65歳以上であれば、1月当たり8万円の年金をもらっていても所得は0円となるので、収入面も問題ありません。
まとめ
離れている親に仕送りをしている場合、年間110万円といわず、必要な範囲であれば「扶養の範囲内」として扱われ、仕送りには税金がかかりません。むしろ親を扶養に入れる場合は、自身の税金を安くすることができます。
とはいえ、親を扶養に入れることや税に関することは複雑です。心配であれば、一度内容に応じて、勤務先や自身の住所地を管轄する税務署へ相談するようにしてください。
執筆者:柘植輝
行政書士