あれ?入院日数は短期化していても、入院費用は増加している謎
配信日: 2018.11.27 更新日: 2019.01.11
国民医療費を性別と年齢階級別に分けて探ってみました。今回は国民医療費のうち入院の医科診療医療費を取り上げます。
Text:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
男性は65歳~69歳に最も入院医療費がかかっている
厚生労働省の患者調査によると、2014年度の退院患者の平均在院日数(入院日数)は31.9日で徐々に短くなっており、1993年と比べたら10日も短くなっています。
しかし、日数は短くなっても入院の医療費が減っていくとは限りません。
同じ厚生労働省の統計に国民医療費があり、入院費についても取り上げています。
下記の表は、その国民医療費から男性の入院医科診療医療費を年齢階級別に一覧にしてみました。
医療費がどのくらい増減しているかを確認できるよう、2010年から2016年までの7年間分を載せ、増減率も計算してみました。
男性2016年の結果を確認すると、全年齢の入院医療費は7兆8645億円で、前年より1006億円増えています。
年齢階級別にみると65歳~69歳の入院費が1兆970億円で最も多く、次が75歳~79歳の1兆723億円、その次が70歳~74歳の1兆141億円となっています。
80歳~84歳と85歳以上も1兆円弱あるので、65歳以上はどの年齢も入院費が多くかかっていると言えます。
逆に入院費が最も少ないのは,10歳~14歳の571億円で、65歳~69歳の僅か5%程度です。
次に少ないのは5~9歳の586億円、その次が20~24歳の634億円で、34歳くらいまではあまり医療費がかかっていません。
しかし、生後間もない0歳~4歳までは2439億円で、40歳代並みに医療費がかかっています。
2010年から2016年までの推移をみると、僅か6年で男性全年齢の医療費が11.4%(8033億円)も増えています。
年齢階級別にみると85歳以上の増加率が49.4%で最も高く、次に65歳~69歳が29.9%増加しています。
一方で減少している年齢階級もあります。60歳~64歳は17.4%減っており、65歳~69歳とは逆の傾向にあります。
他にも35歳~39歳で17.2%減等、5つの年齢階級で医療費が減少しています。
女性は85歳以上に最も入院医療費がかかっている
続いて女性の入院医科診療医療費も年齢階級別にみてみましょう!
女性2016年の結果を確認すると、全年齢の入院医療費は7兆9288億円で、前年より1176億円増えています。
年齢階級別にみると85歳以上の医療費が2兆374億円で圧倒的に多く、次が80歳~84歳の1兆1596億円となっています。
男性の結果とはかなり違いますが、表の医療費は1人あたりの医療費ではなく年齢階級ごとの医療費なので、人口が多い階級は当然医療費も多くなります。
女性は男性より85歳以上の人口が多いので、85歳以上の医療費が男性に比べてその分膨らんでしまっています。
女性の場合、0歳~4歳を除けば5歳~9歳が449億円最も医療費が少なく、そこから年齢階級が上がるにつれて医療費も順に増えています。
0歳~19歳までは男性より女性の方が医療費は少なくなっています。
女性の方が丈夫なのでしょうか? それとも大人しいからなのでしょうか?
2010年から2016年までの推移をみると、僅か6年で女性全年齢の医療費が12.8%(8992億円)も増えています。
年齢階級別にみると増加率が最も高いのは85歳以上の30.4%ですが、次は40歳~44歳の28.4%となっています。
40歳代は45歳~49歳も24.9%増加しており、女性40歳代の入院事情が6年前とは変わってきているようです。
入院医科診療医療費は国民医療費の37%を占めており、もし入院することになれば、患者自身の医療費負担は大きくなりがちです。
性別・年齢階級別の統計から、入院する可能性の高低はある程度推測できます。
このような統計を参考にして将来も安心できる備えをしてみてはいかがでしょうか。
Text:松浦 建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者