生活保護を受けるなら「車」も手放すべきですか? 近くのスーパーまで「徒歩40分」はかかりますし、バスなどを利用するとかえって高くつきます…
配信日: 2024.06.14
しかし、自家用車が生活保護受給者の生活に不可欠な場合はどのように扱われるのでしょうか。本記事では、生活保護受給者が例外的に自家用車を所有できるケースについて解説します。
執筆者:山田圭佑(やまだ けいすけ)
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
生活保護を受けながら自動車を保有できるケースとは
生活保護法第4条第1項には、生活保護を受ける場合は「生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件」とすると定められています。
資産の面においては、「利用しうる資産」を目いっぱい使いきらないと(換金可能な資産を持たず、預貯金がゼロに近くないと)生活保護が受けられないという意味であり、ここでの「利用しうる資産」とは不動産や預金の他に「自動車」も含まれるため、原則としては生活保護受給者が車を保有することはできません。
特に生活保護受給者は、万が一交通事故を起こした場合に賠償金を支払う能力が乏しいとみなされることも、車を所有できない大きな要因となっています。
しかし、実際の生活において自動車がどうしても必要であると思われる場合はこの限りではなく、以下のような条件に当てはまるときは、生活保護受給者でも自動車の所有を特別に認められることがあります。
通勤・通学・通院などに必要である
生活保護受給者が「公共交通機関の利用が著しく困難な地域」に住んでいる場合や、生活していくうえで必ず通う必要のある学校・職場・病院が「公共交通機関の利用が著しく困難な地域」にある場合は、自動車の保有が認められることがあります。
自営業をいとなむために必要である
生活保護受給者が配送業などの事業をしており、自動車の保有が事業運営に必要不可欠であるときは、自動車の保有が認められることがあります。
子どもの送迎に必要不可欠である
子どもを保育園などへ送迎する際、公共交通機関が利用できずどうしても自動車が必要である場合は、自動車の保有が認められることがあります。ただし、以上の要件にあてはまる場合でも自動車保有のためには
・自動車の処分価値が小さく、通院等に必要最小限のもの(排気量がおおむね2000cc以下)であること
・自動車の維持に要する費用が、他からの援助等により、確実にまかなわれる見通しがあること
・地域の自動車普及率が高いこと
などの条件が付けられます。自分の場合は自動車保有が可能な場合に当てはまるかを、あらかじめ確認しておきましょう。
なぜ車が生活に必要なのか、ケースワーカーを通してきちんと理由を伝えよう
公共交通機関が発達した都市部以外に居住している場合など、自家用車が生活に必要不可欠と認められる地域は日本に広く存在します。
生活保護受給者は「健康的で文化的な最低限度の生活」が保障されており、その範囲内に「自動車の保有」が入るかどうかについては長く議論されていて、場合によっては認められるケースも数多く存在しています。
生活保護受給を申し込む際、通勤・通院・買い物など、日常生活において自動車の運転が必要不可欠である人は、まずケースワーカーに相談してみましょう。
その際、自分の日常生活における自動車の必要性や所有する車両のスペック・価格、周辺地域の自動車保有率などについては確実に聞かれますので、あらかじめまとめておくと安心です。
まとめ
生活保護を受けるためには所有する資産を売却してほぼ使い切ることが要件であり、原則として生活保護受給者が自動車を保有することはできません。ただ、公共交通機関を利用できない地域に居住しているなど、日常生活に自動車が必要不可欠な場合は自動車保有が認められる可能性があります。
日常生活にどうしても車が必要である場合は、生活保護を申し込む前に自分の状況を整理し、ケースワーカーに伝えてみましょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 R5.5生活保護制度に関するQ&A
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント