1994年の世帯所得をいまだに超えられない! 株価は上がっても所得は上がらない厳しい現実
配信日: 2024.06.15
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
1994年の世帯所得を超えられない
厚生労働省の国民生活基礎調査で日本の世帯所得を確認し、1985年からの推移を世帯構造別にグラフにしてみました。2019年(2020年調査)は新型コロナウイルス感染症の影響で調査中止となっています。
所得とは、稼働所得(税金や社会保険料を含む給与や賞与、仕入原価や必要経費等を差し引いた事業収入等)だけでなく公的年金や個人年金、財産取得等の所得も含みます。子は未婚の子のことです。
図表1
厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」より筆者作成
グラフは1985年(昭和60年)から2021年(令和3年)までの36年間(2019年を除く)なので、不動産バブルより前からの推移となります。6つのグラフのうち総数(黒い線)の世帯所得を見ると、1990年代のほうが今より多いのは一目瞭然です。
2021年の総数の世帯所得545万7000円に対し1994年は664万2000円なので、所得差は実に118万5000円にもなります。月々でいえば約10万円も減っていることになるので、生活が苦しい世帯はかなり多いはずです。
世帯構造別でみても、夫婦のみ世帯は2021年の529万円に対し1996年は596万8000円、ひとり親+子世帯も2021年の416万4000円に対し1993年は489万6000円で、1990年代のピークを超えられずにいます。
一方で、女性単独世帯は2016年の237万6000円が1985年以降では最も多く、2021年は若干下がってはいますが227万5000円で近い水準にあります。男性単独世帯とはまだ大きな差がありますが、女性単独世帯の所得は増加傾向にあります。
夫婦+子世帯(いわゆるファミリー世帯)は1997年が814万9000円で最も多いですが、2021年は803万3000円でほぼ変わらない水準まで戻ってきています。総数との差が1997年の157万2000円から2021年の257万6000円へ100万円も開いています。
教育費のために一生懸命働いて所得を増やしている(増やさないと生活できない)のか、それとも所得の多い世帯しか子育てができなくなっているのでしょうか。
世帯所得の中央値は423万円で平均より122万円も低い
同じく厚生労働省の国民生活基礎調査で、世帯所得の中央値も確認してみました。平均値は一部の高所得世帯の影響を大きく受けるので、中央値のほうがより実態を表しているともいえます。グラフは1985年から2021年までの推移です。2019年(2020年調査)は新型コロナウイルス感染症の影響で調査していません。
※中央値…所得を低いほうから高いほうへ順に並べて2等分する境界の値
図表2
厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」より筆者作成
2021年度の中央値は423万円で、平均所得545万7000円より122万円も低く、平均所得以下に616%の世帯が入っています。つまり、一部の高所得世帯が平均値を大きく上げているといえます。
中央値の36年間の推移は、先ほどの平均世帯所得(総数)と似たような傾向にあります。直近2021年の中央値は423万円ですが、1993年と1995年は550万円あったので、26年で127万円も減っています。
平均値だけでなく中央値も大きく減っているということは、過去20~30年で私たちの生活は相当厳しくなっているといえます。特に最近はインフレや円安等の影響で家計支出が増加傾向にあることから、多くの人が厳しさを感じているのではないでしょうか。
平均値や中央値を上げることは国全体として考えていかなければなりませんが、厳しい時代でも個人レベルでできることはいろいろあります。コツコツと資産運用や節約等をして、世帯所得を増やす努力をしていきましょう。
出典
厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者