増える薬局調剤医療費を年齢・性別でみてみると、どの層の増減率が高いのか
配信日: 2018.12.04 更新日: 2019.01.11
Text:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
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男性の薬局調剤医療費は6年で7521億円も増えている
2016年度の国民医療費は42兆1381億円であり、そのうち薬局調剤医療費が7兆5867億円となっています。薬局調剤医療費は20年前の1996年には1兆4401億円でしたが、この20年で6兆1466億円(5.3倍)も増えています。
増えている要因がどこにあるのか確認するために、厚生労働省国民医療費で薬局調剤医療費を性別・年齢階級別に確認し一覧表にしてみました。
一つ目の表が男性、二つ目の表が女性です。薬局調剤医療費がどのくらい増減しているかを確認できるよう、2010年から2016年までの7年間分を載せ、増減率も計算してあります。
男性2016年の結果を確認すると、全年齢の薬局調剤医療費は3兆5600億円で、前年に比べたら1620億円も減っていますが、2010年と比べると7521億円も増えています。
年齢階級別にみると他の医療費と同様に65歳~69歳が4644億円で最も多く、次が75歳~79歳の4329億円、その次が70歳~74歳の4298億円となっています。
薬局調剤医療費が最も少ないのは20歳~24歳の394億円で、次に少ないのが15歳~19歳の468億円、その次が25歳~29歳の517億円となっています。
2010年から2016年までの推移をみると、6年間で男性の薬局調剤医療費は26.8%も増えています。1年あたり4.5%程度の増加なので、経済成長をはるかに上回るペースでの増加と言えます。
年齢階級別にみると、増加率が最も高いのは85歳以上で71.2%増、次に65歳~69歳の49.3%増、そして45歳~49歳の49.2%増が続きます。これらの階級は高齢化や団塊世代等で人口が多いことも要因として挙げられそうです。
多くの階級で増加している薬局調剤医療費ですが、実は減少している階級も2つかあります。0歳~4歳は1.5%減で6年間あまり変化がありません。60歳~64歳は前年から337億円減ったことで2010年比3.0%の減少になっています。
女性の薬局調剤医療費は85歳以上が最も多い
続いて女性の薬局調剤医療費も年齢階級別にみていきます。
2016年の女性の薬局調剤医療費を年齢階級別に確認すると、全年齢合計では4兆0268億円で男性より4668億円多く、前年比では2343億円も減っていますが、2010年と比べると6935億円も増えています。
女性の方が男性より多いのは高齢者層への医療費が圧倒的に多いからです。その証拠に0歳~74歳までで男女を比較すると、男性2兆5059億円、女性2兆4601億円で男性の方が多いです。高齢者層の人口差が大きく影響しているのでしょう。
年齢階級別にみると最も多いのは85歳以上の5512億円、次に多いのが75歳~79歳の5173億円、その次が80歳~84歳の4980億円で、女性の高齢者層は薬局調剤医療費が非常に多くかかっています。
薬局調剤医療費が最も少ないのは15歳~19歳の403億円、次に少ないのが20歳~24歳の498億円、その次が10歳~14歳の520億円で、いずれも85歳以上の1/10以下です。
2010年以降の6年間の推移をみると、高齢者だけでなく10歳代や40歳代も大きく増えています。その一方で減少している階級も2つあり、男性と同じく0歳~4歳は0.1%減り、60歳~64歳は10.0%も減っています。
薬局調剤医療費の増加のスピードが速いのは、高額な薬が数多く開発されていることも影響しているため、国は医療費抑制のためにジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用を促進しています。
2016年に薬局調剤医療費が下がったことにジェネリック医薬品がどのくらい貢献しているかはわかりませんが、適切な利用を拡大させて薬局調剤医療費が抑制されることを願っております。
Text:松浦 建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者