1歳の子どもがいます。育休が明けて復職しましたが、育児との両立が思ったよりも大変です。「育児時短就業給付」がスタートすると聞きましたが、どんな制度ですか?
配信日: 2024.07.15
その名のとおり、育児のために時短勤務で働いている人にお金を支給する制度ですが、具体的にはいつから、いくらくらい受け取れるのでしょうか。制度の詳細について、見ていきましょう。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
育児時短就業給付とは?
育児時短就業給付の概要は以下のとおりです。
●誰が対象?……子どもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した人
●どんな支援?……時短勤務時の賃金の10%を支給する
時短勤務を選択すると、通常は収入が下がります。育児時短就業給付は、その収入減少を補って、育児や家事に取り組みやすくする目的で創設されます。
女性ばかりが時短勤務を選択し、キャリアをあきらめざるを得なくなる現状(いわゆる「マミートラック」)に配慮したうえで実施される方針で、男女問わず利用できる制度となる予定です。
2023年12月に「こども未来戦略」の施策の1つとして策定され、現在は「2025年度からの実施を目指す」とされている状態です。詳細は未定ですが、以下のような給付が実現する可能性があります。
●通常時は「月給30万円」の人(子ども0歳)が時短勤務を選択
●時短勤務中は「月給23万円」
支給額:23万円×10%=2.3万円
時短勤務中の収入:月給23万円+給付2.3万円=25.3万円
上記の例だと、収入が減った分の全額をカバーすることはできないものの、月額2万円程度は受け取れる計算です。
なお、育児時短就業給付を行うための財源として、2026年に創設される予定の「子ども・子育て支援金」の一部が充てられる予定です。
子ども・子育て支援金は、国民が受け取れるお金ではなく、支払うお金です。現状、公的医療保険に加入している人が、1人あたり250~600円程度を今の医療保険料に追加して負担することになる見込みです。
今後創設予定の子育て支援策は他にもある
「育児時短就業給付」以外にも、今後さまざまな支援策の創設や拡大が予定されています。たとえば以下のとおりです。
●現状:67%(手取りで8割相当)
●今後:80%(手取りで10割相当)
●所得制限の廃止
●高校生年代まで受け取れるように延長
●第3子以降の増額
●子どもが3歳になるまで
現状:時短勤務の措置義務+フレックスタイム等の努力義務
今後:上記に加え、テレワークも努力義務に
●子どもが3歳以降小学校就学前まで
職場が以下の5つから複数の選択肢を用意する
(1)フレックスタイム制を含む出社・退社時刻の調整
(2)テレワーク
(3)短時間勤務制度
(4)保育施設の設置運営等
(5)新たな休暇
●残業免除を請求できる期間
現状:子どもが3歳になるまで
今後:子どもが小学校就学前まで
上記はあくまで一例です。その他、2026年度の法改正に向けて、出産費用の負担軽減のために保険適用や給付金の支給が議論されているという話もあります。
なお、以上はすべて国の施策ですが、お住まいの地域によっては自治体独自の子育て支援策もあわせて利用できる場合があります。自ら知って申請しないと使えない制度もあるので、一度自治体の公式サイトや広報誌などをチェックしてみるのがおすすめです。
まとめ
「子どもがほしいけどお金のことが心配」という人は少なくないでしょう。子ども・子育て支援金など社会保険料・税の負担増や物価高など、不安になる要素もあります。
ただ、子育て支援策は従来に比べて拡充されてきていますし、今後もその傾向は続きそうです。それだけですべての問題が解決するとは限りませんが、自分や家族が利用できる制度を知って、活用して、少しでもうまく乗り切れるようにしたいですね。
出典
こども家庭庁 「こども未来戦略」ちらし 統合版
こども家庭庁 子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算について(令和6年3月29日)
厚生労働省 育児時短就業給付(仮称)の創設について(令和5年9月22日)
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表