更新日: 2019.01.10 その他暮らし
見覚えのない保証人契約 勝手に保証人として名前を書かれたら有効?無効?
保証人としての地位は非常に責任の伴うものです。無断で保証人として名前を書かれてしまった場合、その契約は有効となるのか、無効となるのか、確認しておきましょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
保証人として契約書に名前が!
ある日突然、Aさんのもとに次のような内容の書類が届きました。
「あなたはBさんの保証人として、保証契約の書面に署名と押印をいただいております。つきましては保証人として、Bさんに代わり100万円のお支払いをお願いします」
しかし、Aさんにはそのような保証契約の書面について、まったく心当たりはありませんでした。実際、保証契約の書面に署名したこともなければ、押印した記憶もありませんでした。また、Bさんに名前を書いた書類を渡したことも、印鑑を預けたこともなく、Aさんは不思議に思っていました。
そこで、Bさんに状況を確認したところ、前述の保証契約の書面について、BさんがAさんに無断で署名し、押印をしたという事実が判明しました。
さて、身に覚えはないとはいえ、書面に署名と押印をされてしまった以上、AさんはBさんの保証人としての責任を果たさなければならないのでしょうか。
保証契約の成立には本人の意思が必要です
結論として、Aさんに保証人としての責任を果たす必要はありません。
なぜなら、保証契約の書類への署名と押印はBさんが勝手にしたものであり、Aさんの意思がありません。さらに、Bさんは保証契約についての代理権を何も与えられていないうえ、Aさんが印鑑などを渡したという事実もない以上、代理権を与えたと同視されるような特別な事情も存在しません。
保証契約は民法446条において「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」とありますが、書面ですれば無条件に成立が認められるわけではありません。保証契約も契約である以上、保証人となるAさんの同意や意思なく成立することはありえないのです。
契約の成立には、当事者の同意が必要というのが契約の一般的なルールであり、保証契約においてもその点に違いはありません。
以上のような理由から、AさんはBさんの保証人とはなってはおらず、保証人としての責任を負う必要はないと判断されるのです。
無効な保証契約が有効に!?
今回、BさんがAさんを勝手に保証人とした行為は無権代理行為(勝手に代理人として振る舞うこと)に当たります。
無権代理は追認(あとから内容を認めること)することができ、追認したとみなされてしまうと、無権代理人のした行為が有効となってしまうのです。(民法113条)すると、Bさんが勝手にAさんを保証人とした保証契約は有効となってしまい、Aさんは保証人としての責任を負うこととなってしまいます。
特に、書面上にて保証契約の追認(保証人であることを確認する旨の書面に署名、押印するなど)を行うことだけは避けるようにしてください。
地裁レベルではありますが、保証契約の追認には、その意思が書面により明らかになっていることが必要だとされた判決も出ており、取り返しのつかない事態になってしまうこともあるからです。(平成21年12月22日長崎地裁など)
覚えのない保証人としての責任を負う必要はありません
友人に勝手に名前を書かれ、保証人とされてしまっても、その友人に代理権を与えていたり、それに準ずると判断されるような特別の事情のない限り、保証人としての責任を負う必要はありません。
名前を書かれてしまったからと慌てず、まずは落ち着いて状況を確認するようにしましょう。
また、必要に応じ各種専門家や相談機関へ相談し、安易に保証人としての地位を受け入れないようにしてください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士