更新日: 2019.07.17 その他暮らし
近居・同居への補助金とは?三世代同居・近居住宅支援の具体例
2020年に向けて、国の住宅政策の目指す枠組みがこれまでとは変わり、中古住宅市場の環境整備やリフォーム・リノベーションの推進、また、核家族といった単一世帯でなく、祖父母・父母・子どもの三世帯同居や近居が奨励されるようになりました。
今回は、近居・同居に対する支援策についてお伝えしていきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
なぜ、近居・同居なのか
近居・同居を支援する流れとなっている理由は、一言でいうと将来、高齢化・少子化にともない人口が減っていく予測をしているからです。日本の住宅事情がどのように変わっていくかを想定し、2020年以降、新たな住宅環境を確立するための動きが今、盛んに進められています。
このような国の政策をみていくと、マイホームを買うのは国にとって住宅投資であるため、それらを購入する私たちは、国が提示している住宅政策のうちいずれかひとつに乗るということになります。
すなわち、マイホームを購入する際、国がこれから何を推進していこうとしているかを捉え、その中から自分に合った住まい方を選択すれば、おのずと資金効率が高まるということです。
※住むこととお金を近似的に捉えるのはあまり良くありませんが、お金の話をしているので、効率よくマイホームを買うという視点でご理解ください。
近居・同居に対する支援策についてお伝えする前に、なぜ、国が「近居や同居」を推奨しているかについて少し考えていきたいと思います。
ものすごく簡単に言ってしまうと、「核家族って、今も、これからも、いろいろと問題あるよね」ということになります。社会的には、核家族は地域分断のひとつの要因になっています。
また、経済的には所得の格差が広がったため、核家族のように世代間の協力なしで家計を切り盛りするのは困難になってきています。さらに、子育てや親の介護を家族みんなで担っていかざるを得ない状況も出てきているのです。
なぜ、そのようになってしまったのかということについては、今回は触れませんが、現状の問題を未来に向かって解決するための方策として、今、国が近居や同居を推し進めているというのは頭の片隅に入れておくといいかもしれません。
三世代同居・近居住宅支援の具体例
今回は、イメージしやすい例として、千葉県四街道市の「四街道市三世代同居・近居住宅支援事業補助金」を取り上げます。
リフォームへの支援が「助成金」であるのに対し、近居・同居への支援は「補助金」になっています。これは、助成金が恒久的なものであるのに対して、補助金は期間限定の一過性のあるものであるため、政策の重要性がリフォームに比べて低いことを意味しています。
近居・同居の補助金も、前回お伝えしたリフォーム助成金と同じく、お住まいの自治体で申請することができるようになっています。ただし、自治体によってはそもそも準備していないところもあるので注意しましょう。
四街道市三世代同居・近居住宅支援事業補助金の中身は、次のようになっています。
(1)親世帯または子世帯の一方が市外から四街道市に転入すること。
(2)親世帯または子世帯の一方が四街道市に継続的に1年以上住んでいること。
(3)18歳未満の孫がいること。
(4)三世代同居または近居のために住宅を購入すること。
(5)三世代同居または近居を3年以上継続すること。
(6)当該年度の2月末までに実績報告書を提出すること。
要件をみると、四街道市の場合、市内への転入を促進し、移住を期待しているのがうかがえます。人口の減少を抑制し、子育てや介護を地域ぐるみで行っていけるまちづくりをしていきたいということなのかもしれません。
ちなみに近居は、親世帯と子世帯が直線で1㎞以内の範囲に居住することと定義されています。また、住宅は新築や中古、戸建はもちろんマンションでもよいので、後々、住民人口の流動性を高める配慮がされていると言えます。
気になる補助金ですが、補助率は、住宅取得費用の2分の1で、限度額は100万円となっています。
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住宅選びは慎重に
ここで注意しておきたいのは、二世帯住宅を建てる場合です。
二世帯住宅を「資産」の点でみると、一般的な戸建住宅と比べてニーズが限定されるため、売ることが難しくなる恐れがあります。資産の面から考えるなら、三世代同居をする場合は二世帯住宅にせず、一般的な戸建住宅やマンションの中でどのように住まうかを検討することが必要だと考えられます。
とはいうものの、実際には家族間の価値観の違いなどもあるかもしれませんので、十分な話し合いのもと実行するようにしましょう。次回は、マイホームの出口戦略についてお伝えしていきたいと思います。
出典:四街道市ウェブサイト 四街道市三世代同居・近居住宅支援事業補助金制度
Text:重定 賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)