更新日: 2024.10.30 子育て
変わる子育て支援制度。新たに設立された「子ども家庭センター」って、何?
これには、児童虐待の相談件数が増え、子育てに困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化しているなどの社会的な背景があります。さらに、従来の「子ども家庭総合支援拠点」や「子育て世代包括支援センター」を見直し、これらを一体的に運用するという制度設計上の課題克服も含まれています。
政府は今、地域共生社会の実現を目指し、地域社会で子どもを育てることを目的に体制の整備に努めていますが、今回の児童福祉法改正はその最たる例といえるでしょう。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
従来の「子育て世代包括支援センター」とは
従来の「子育て世代包括支援センター」は、例えば、それぞれの自治体にある「子育て支援センター」などの名前がついた施設を指します。自治体によっては「保健センター」などと連携し、運営されているところもあります。
現在、乳幼児を育てている保護者にとっては、「赤ちゃんが生まれた後、赤ちゃんを連れて息抜きがてら出掛け、育児について分からないことを相談したり、保護者同士で仲良くなったりするような場所」といったイメージがあるかもしれません。
実際の「子育て世代包括支援センター」は、妊娠期から子育て期にわたり、切れ目なく相談・支援を実行することが目的です。特に何らかの課題や問題を抱えている妊産婦や保護者、子どもに対する心身の状態や育児などの子育て環境について改善するために、相談支援の機能を持っています。
図表1
出典:文部科学省 子育て世代包括支援センターの全国展開
法改正によって設立される「こども家庭センター」とは
昨今の社会情勢の変化により、例えば、児童虐待や育児の孤立、片親世帯の貧困化、ヤングケアやダブルケアなど、生活課題の多様化は社会問題として顕在化してきました。
このような状況を受けて、より重層的な相談支援が求められるようになり、これまでの「子ども家庭総合支援拠点」と「子育て世代包括支援センター」の機能が統合・充実化された「こども家庭センター」が設立されることになりました。
このセンターの事業内容は従来の事業を踏襲してはいますが、新たに追加された事業もあります。例えばそのうちの一つに、「地域資源の開拓」というものがあります。
下の図にあるとおり、地域社会にすでに存在する社会資源(例えば保育所や学校、医療機関、障害児支援、児童クラブなど)の活用はもちろん、新たに社会資源を開発することも含め、地域で行う子育てを包括的に支援するための体制づくりを構築しようとするものです。
新たに開発する社会資源は、その地域社会にないもの、例えば子ども食堂や子どもの居場所といった、新たに生み出されるもの……と考えると分かりやすいかもしれません。
これらの社会資源も活用し、地域全体で一体的に子育て支援を充実するための司令塔に当たるのが「こども家庭センター」といえるでしょう。
図表2
出典:こども家庭庁 児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要
まとめ
近年、少子化対策や子育て支援に関する情報が、相次いで出てくるようになりました。このような現象は、社会情勢の変化が背景にありますが、その中で出てくるさまざまな生活課題や社会問題を克服・解決するために、法改正がなされ、施行されているからです。
社会情勢が変わり、法律が改正され、私たちの暮らしに変化が及ぶ……というような、社会システムの変化が浸透するまでには、何年もの時間を要します。
お金のことを知ることは、重要ではあります。しかし、その背景としてこのような社会システムの変化があることを意識しておくと、人生設計(ライフプラン)に厚みが出るのではないでしょうか。
出典
文部科学省 子育て世代包括支援センターの全国展開
こども家庭庁 児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)の概要
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)