更新日: 2024.11.30 その他暮らし

60代の父が生活保護を頼るらしく、「扶養照会」が届いていました。私の年収は300万円なのですが、それでも扶養すべきなのでしょうか…?

60代の父が生活保護を頼るらしく、「扶養照会」が届いていました。私の年収は300万円なのですが、それでも扶養すべきなのでしょうか…?
いきなり扶養照会が届いたとしたら、自分の収入や生活状況によって親を支援できるか悩むこともあるでしょう。本記事では、生活保護の扶養義務にはどのような基準があるのか、また扶養が求められる場合の対応方法について解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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扶養照会とは

生活保護の扶養照会は、生活保護を申請した人に親族がいる場合、その親族が経済的支援を行えるかを自治体が確認するためのものです。
 
例えば、親が生活保護を申請すると、子どもに対して扶養照会が届くことがあります。生活保護は国による支援制度ですが、まずは家族による扶養が優先されるため、この確認が行われるのです。
 
この扶養照会では、申請者や受給者について親族が仕送り可能かどうかを自治体が尋ねます。生活保護の方針として、「扶養が優先される」という決まりがあり、民法上の扶養義務を持つ3親等以内の親族が対象です。
 

生活保護法改正と扶養義務者の範囲縮小

生活保護法改正により、申請後の扶養義務者への通知(第24条第8項)と報告の要求(第28条第2項)は「限られた場合のみ」に適用されることになりました。
 
扶養義務の履行ができないと判断される基準を、厚生労働省「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」を基にご紹介します。
 

・当該扶養義務者が被保護者、社会福祉施設入所者、長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者、未成年者、概ね70歳以上の高齢者など
・要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない
・当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者

 
上記はあくまでも例示であり、直接当てはまらない場合においても、これらの例示と同等のものと判断される場合は扶養義務履行が期待できないと判断されるようです。
 
また、配偶者や子以外の扶養義務者については、自分や同居家族が生活に余裕があれば援助するという「弱い義務」にとどまるとされています。
 

年収が低いと経済的な援助は難しい

税金・保険料シミュレーションを使用して、単身世帯で年収300万円の月収を調べると25万円でした。ここから税金や保険料を差し引くと、月あたりの手取りは約19万7519円になります。では、単身世帯の支出はどれほどなのでしょうか。
 
総務省統計局が公表している「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、単身世帯の平均消費支出は16万7620円となっています。
 
このように、年収300万円の単身世帯では手取り収入に対して支出が多く、貯蓄や予備費に回せる余裕がないことは明らかです。したがって、年収300万円では自分の生活にも十分な余裕がないため、経済的な援助は難しいと考えられます。
 

経済的余裕がない場合、無理に扶養する必要はない

経済的に余裕がない場合、無理に扶養することは申請者と親族双方に負担をかける可能性が高いため、扶養を強いられることはまずないでしょう。
 
生活保護は、生活に最低限必要な支援を提供する制度のため、その支給額は決して多くはありません。しかし、生活保護には医療費が無料になる医療扶助や、介護サービスを無償で受けられる介護扶助といった利点もあります。これらのサポートを受けることで、申請者が困窮することなく生活を送れるようにすることが目的です。
 
そのため、親族に経済的な余裕がない場合、無理に扶養を強いられることは、双方にとって生活を圧迫し、結果的に負担が増すことになります。扶養義務が発生する範囲や状況には限度があり、親族が無理に扶養する必要はないでしょう。生活保護を受けることで、申請者は必要な支援を受けることができ、親族も経済的負担から解放されます。
 

扶養照会を受けても資産や収入は公開されない

扶養照会は福祉事務所などの公的機関から送られてきます。そのため、親族が扶養照会を受けた際に、「自分の資産や収入が知られてしまうのでは?」と不安に感じることもあるかもしれません。しかし、扶養照会には個人の収入や資産を強制的に調べる権限はないようです。
 
つまり、もし扶養照会を受けても、記入することに抵抗がある情報については、そのまま記入せずに返送しても問題ないでしょう。
 

年収が300万円である場合、経済的に無理に扶養する必要はない

経済的な余裕がない場合、扶養照会を受けたことに対して「扶養すべきなのか」という疑問が生じるのは自然なことです。
 
生活保護は、最低限の生活を支援する制度ですが、まずは親族から経済的支援を受けられるかどうかの判断が必要になります。とはいえ、扶養義務は必ずしもすべての親族に適用されるわけではありません。扶養義務について考える際には、経済的な余裕があるかどうかが重要なポイントとなります。
 
年収300万円の場合、手取り収入は月々20万円程度となりますが、そもそも家計に余裕がないのであれば、無理に扶養の義務を果たす必要はないといえます。
 

出典

厚生労働省社会・援護局保護課 扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要(15ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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