東京都では第一子の保育料が無償化? 戸惑う隣接する他県の子育て世帯
配信日: 2024.12.15
仮に、この都独自の制度が実現すれば、都内在住で保育園児のいる世帯では費用負担の軽減につながります。
一方で、隣接する他県に住む世帯にとっては、恨めしい差を痛感することになることでしょう。いっそ東京に引っ越そうと思う方も多いかもしれません。少子化対策にむけた自治体独自の支援とその背景、個人の生活について考えてみましょう。
執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)
CFP®認定者・相続診断士
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/
幼児教育・保育の無償化と各自治体の独自支援
今回の都知事の発言をニュースで知った、東京都に隣接する千葉県市川市に住む会社員Aさんは、夫と2歳長女、1歳次女の4人家族です。公立の保育園に入園できて喜んでいたものの、保育料や給食費、オムツ代など想定以上に費用が発生するため、何のために働いているのだろうと思うこともあるようです。
一般的には、世帯(父母)の住民税所得割額の合計額に基づく階層区分により、保育料が決定されます。共働きで世帯収入が上がるほど、保育料負担は大きくなる仕組みです。
2019年10月に始まった幼児教育・保育の無償化により3歳時から5歳児クラスの利用者負担は無料、給食費(副食費)のみ負担となりましたが、0歳児から2歳児クラスでの利用者負担は発生するのが現状です。
なお、第2子の保育料はおおよそ半額、第3子以降は無料となります。また、ひとり親世帯もしくは在宅障がい児(者)世帯に対しては、別途支援制度が適用される場合があります。
前述のAさんが住む市川市では、2023年10月より認可保育施設等の第2子以降の保育料無償化が始まりました。このように、国の「幼児教育・保育の無償化」を基盤として、各自治体が独自の支援制度を展開しています。
少子化対策は喫緊の課題
少子化対策は、喫緊の課題ともいわれています。ただし、各自治体では、重要性と必要性は理解しつつも、支援の実現は予算の確保が前提であり、その予算の確保に苦慮しているのが現状のようです。
東京都では、不妊治療や不妊検査費用の助成、0~18歳に月5000円を支給する事業(018サポート)、高校授業料実質無償化の所得制限撤廃など、独自の子育て支援策を行っています。これは予算規模の大きい東京都だからこそ可能な支援かもしれません。
とはいえ、特別地方公共団体である23区では、それぞれの人口構成や税収入に差があり、給食費負担などは区によって支援の有無や額に差が出始めています。一方で、東京都周辺の知事などからは、格差の是正に対する懸念を表明するといった状況も見られます。
子育て支援の公平を図るためには、国が率先して制度を拡充すべきとの意見もあり、今後の調整や議論に注目すべきでしょう。
生活者として、情報の分析とライフプラン、ファイナンシャルプランニングを考える必要性
東京都知事が表明した第1子保育料無料化については、現時点では都議会での検討・調整段階です。たった1駅の違いで、保育料が発生するかしないかという違いが生まれることに納得がいかないと言うAさんのもやもやした気持ちは理解できますが、まずは落ち着いて情報を見極めましょう。
1駅の違いには、物価の違いもあるかもしれません。住まいが賃貸であれば、賃貸料にも差があることでしょう。「保育料が無料になるなら、その地域に住みたい」と考える人もいるかもしれませんが、子育て支援制度の有無だけでなく、生活面での暮らしやすさや環境などの要素も含めて総合的に検討したいものです。
また、行政の施策は、各機関との調整が必要なことから決定しても施行まで時間がかかることもあります。タイミングによっては、すでに恩恵を享受できる適用要件が過ぎていることもあり得ますので、後悔しない生活スタイルを考えたいものです。
出典
こども家庭庁 幼児教育・保育の無償化概要
市川市 幼児教育・保育の無償化について
市川市 保育料第2子以降無償化について
東京都福祉局 東京都の子供・子育て支援 018サポート
東京都 所得制限なく私立高校等の授業料を支援
執筆者:大竹麻佐子
CFP®認定者・相続診断士