選挙に行くともらえる「投票済証」を見せると、割引などのサービスが受けられるって本当ですか?
配信日: 2024.12.19
衆議院選挙の投票率は53.85%と、戦後3番目に低いものになったそうです。つまり有権者のうち、およそ半数に近い人たちが投票に行かなかった、ということです。「選挙のためだけに投票所に脚を運ぶのは面倒」という人が多いのでしょうか。
そこで、選挙に行った人に、プラスαのサービスを提供する「選挙割」を設けて、投票率アップに貢献しよう、というお店があります。選挙割の利用には、投票済証が必要です。そもそも投票済証とは何でしょうか?
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
選挙に行くと必ず投票済証がもらえる?
投票所に脚を運んで投票すれば、必ず投票済証がもらえるというわけではありません。そもそも投票済証には法的な根拠はありません。そのため、投票済証についての自治体(区市町村)の対応もまちまちです。
投票所や期日前投票所で、「希望のある人に渡している」「必要な人はお持ちください」という具合です。なかには投票所に来た「選挙権のない子ども」にも投票済証を渡している自治体もあるようです。
法的な根拠がないためか、投票済証のサイズやデザインもバラバラです。「投票済証は本に挟む『しおり』としてお使いいただけます」という趣旨の自治体もあります。かわいいキャラクターがデザインされた投票済証もあります。また投票済証そのものを発行していない自治体もあれば、「投票済証の発行を取りやめました」という自治体もあります。
いわゆる選挙割について
いわゆる選挙割ですが、「投票済証がクーポン等の代わりになって、プラスαのサービスが受けられる」ということになるでしょうか。
先に述べたように、投票済証そのものは法的な根拠がありませんし、発行していない自治体もあり、選挙割にも法的な根拠はありません。選挙割を設けたお店や会社等が独自の判断で行っているに過ぎません。当然のことながら、選挙割の内容も事業者によってまちまちです。
選挙割の具体例を挙げてみます。投票済証を見せると「メガネ(フレーム、レンズ)、サングラスを10%割引」というメガネ屋さんがありました。また選挙割として「1000円以上のお買い上げで5%割引」というお菓子屋さんもありました。いずれも期間限定です。
なお、投票済証がなくても「選挙の看板とご自身が一緒に写った写真でもOK」というお店もありました。
投票済証をめぐるトラブル
投票済証がインターネットのオークションサイトで売られているようです。この事実に投票済証を発行している自治体は「困惑している」そうです。そもそも投票済証は「投票所(あるいは期日前投票所)で選挙に投票した」ことを証明するものに過ぎず、当然のことながら、売買を目的としたものではありません。
しかし法的な根拠がありませんので、売買を規制することも難しいのではないでしょうか。
投票済証を売買する目的は「選挙割の利用」や「収集(いわゆるコレクター)」等が考えられます。こうしたことが横行すると、今後、投票済証の発行の取りやめを検討する自治体が増えるかもしれません。
まとめに代えて
2024年の衆議院議員選挙の投票率は53.85%で、前回2021年の衆議院議員選挙の投票率を下回りました。つまり、「選挙割をきっかけに投票率を上げよう」という考え方は非常に素晴らしいと思います。「選挙に行ったついでに、飲食店で楽しいひと時を」ということでしたら、「選挙だけのために外出するのは面倒臭い」と考える人の気持ちも変わるかもしれません。
2024年の衆議院議員選挙に投票されなかった方で、本稿をご覧になった方。来年行われる参議院選挙には投票して投票済証を受け取り、選挙割を活用することを検討してみるのはいかがでしょうか。まずはその前に、投票する自治体が投票済証を発行しているかも確認しましょう。
出典
新潟日報 2024年衆議院議員
一般社団法人選挙割協会 ホームページ
大田原市 投票済証は発行していません
青森市 青森市キャラクター付き投票済証
日本放送協会 NHK 衆議院選挙 投票率は53.85% 前回を下回り戦後3番目に低く
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役