認知症になって預金口座が「凍結」されたらもう引き出せないそうですが、本人が「回復」したらまた引き出せるようになりますか?

配信日: 2024.12.27

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認知症になって預金口座が「凍結」されたらもう引き出せないそうですが、本人が「回復」したらまた引き出せるようになりますか?
認知症になると、預金口座が「凍結」されてしまう可能性があります。凍結されるとその口座の預金を引き出せなくなってしまいます。しかし、本人の医療費などを支払うために本人の口座から預金を引き出したいときに、預金が引き出せないのでは困るでしょう。
 
そこで本記事では、「認知症になって預金口座が『凍結』されたらもう引き出せないのか?」「本人が『回復』したらまた引き出せるようになるのか?」について解説します。すでに認知症になってしまった方のご家族だけでなく、将来認知症になったときに備えようとお考えの方の参考になると思いますので、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

認知症になって預金口座が「凍結」されたらもう引き出せないのか?

預金口座は個人の資産であるため、預金を引き出すためには原則として本人の意思確認が必要です。認知症などの場合は本人の意思確認ができないため、預金を引き出すことができなくなります。この状態を「凍結」といいます。
 
一般社団法人全国銀行協会は、会員である各銀行が金融取引を行う際や社会福祉関係機関などと連携する際の参考となるよう、「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」を公表しました。
 
これによると、「認知判断能力が低下した顧客本人との取引」に関しては、「認知判断能力の低下した本人との取引においては、顧客本人の財産保護の観点から、親族等に成年後見制度等の利用を促すのが一般的である」としたうえで、「上記の手続きが完了するまでの間など、やむを得ず認知判断能力が低下した顧客本人との金融取引を行う場合は本人のための費用の支払いであることを確認するなどしたうえで対応することが望ましい」としています。
 
また、同協会は「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引出しに関するご案内資料」のなかで、「預金者ご本人の生活費、入院や介護施設費用等のために資金が必要でお困りの際は、まずは、お取引銀行窓口まで、ご相談ください」と呼びかけています。
 
つまり、認知症になって預金口座が凍結された場合は、原則として預金を引き出すことはできませんが、状況に応じて預金を引き出せる可能性もあるようです。まずは、銀行窓口でご相談されるのがよいでしょう。
 

本人が「回復」したらまた引き出せるようになるのか?

たとえ認知症になったとしても、本人の認知症が回復したら、また預金を引き出すことは可能でしょう。
 
先述の「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」でも、「通常取引」として「銀行での高齢顧客との取引において、本人に認知判断能力がある場合(取引の有効性が確保できる場合)は、通常取引を行う」としています。
 
ただ、現代の医療では認知症の完治・回復は難しく、治療により進行を緩やかにする程度にとどまるようです。そのため、認知症になってしまった方の預金の引き出しは、本人が行うのではなく代理人が行えるよう検討していったほうがよいかもしれません。
 
銀行協会や厚生労働省は、認知症などによって認知判断能力が低下した場合、成年後見制度などを利用することを促しています。成年後見制度とは、判断能力が不十分な方の保護を目的とした制度で、家庭裁判所に選任された成年後見人が本人に代わって契約をしたり、本人の契約を取り消したりすることができるという制度です。
 
成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。法定後見制度は、すでに判断能力が不十分である方を、裁判所が選任した後見人などが支援する制度です。任意後見制度は、将来自分の判断能力が不十分になったときに備えて、本人があらかじめ結んでおいた任意後見契約に従って、任意後見人が支援する制度です。
 
法定後見制度では、後見人を裁判所が選任します。一方、任意後見制度では、後見人を本人が決定します。本人の認知症が回復した場合は、任意後見制度の利用を検討するのもよいのではないでしょうか。
 

まとめ

以上のことから、認知症になって預金口座が「凍結」されたとき、対応としては以下のようになると考えられます。
 

・原則として、預金を引き出すことはできない
・親族などに成年後見制度などの利用を促す
・場合によっては預金が引き出せることもある(銀行により対応が異なる)

 
本人が回復し認知判断能力があると判断されれば、本人による預金の引き出しは可能と考えられます。しかし、認知症は現代の医療では完治することが難しく、治療をしても進行を緩やかにする程度のようです。
 
したがって、認知症になってしまったときは、再び本人取引ができるようになるのを待つのではなく、代理取引を行うことを検討したほうがよいでしょう。
 
本人の財産を保護するのももちろん大事ですが、本人をスムーズに支援できる体制を整えることも大事です。そのために、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
 

出典

一般社団法人 全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)
一般社団法人 全国銀行協会 預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引出しに関するご案内資料
法務省民事局 いざという時のために知って安心 成年後見制度 成年後見登記制度
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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