「セルフエステ」はクーリングオフできないって本当ですか? 「エステ」はクーリングオフできたのですが…… どう違うの?
配信日: 2025.01.29
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スマホを見ていたら、歯のセルフホワイトニングの広告に目がとまりました。無料体験ができると知り、早速予約を入れました。
今回は、Aさんの事例を見ながらセルフエステのクーリングオフについて確認してみましょう。
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執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
クーリングオフができない
無料体験後、担当者はAさんに月額1万円のコースを勧めてきます。「契約はすぐに決められない。帰宅して検討したい」と伝えても、「今考えて」「今入会しないと月額料金が増える」とあれこれ言ってきます。契約しなければ帰れないと困ったAさん、「契約する」と担当者に言いました。
すると、その後で、中途解約すると違約金が2万円かかると聞かされました。契約前に言うべきことを後出しすることに不信感を持ったのですが、契約すると言ってしまったので契約しました。
やはり不信感はぬぐえず、帰宅後にやはり解約するためにメールでクーリングオフを通知したら、事業者から「クーリングオフ対象の取引ではない。解約するなら違約金を請求する」と返信がありました。
事業者の言っていることは本当でしょうか。ごまかすために言っているのではないのでしょうか。
セルフエステは特定商取引法の対象外
クーリングオフの対象となる取引は、主に特定商取引法により規定されています(金融商品取引法、宅地建物取引法等にもクーリングオフがあります)。
エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの7役務のうち、5万円を超えるもので、一定の期間(エステティックや美容医療は1ヶ月、他は2ヶ月)を超えるものが、特定商取引法の「特定継続的役務」として指定されています。
特定継続的役務提供を受ける場合は、正しく記載された書面(申込書面または契約書面)を受け取ってから8日間であれば、クーリングオフができます。
また、クーリングオフの期間が過ぎても、将来に向かって中途解約ができます。その際、事業者が中途解約における損害賠償などを求める場合がありますが、エステティックや美容医療が2万円(役務提供開始後は2万円か契約残金の10%のうちいずれか低い額)に上限金額が定められています。
しかし、セルフエステは自分で機械を使って行う(店舗の機械を使う、機械を借りるか購入して家で行うなど)で、エステティシャンによる施術を受けるものではないので、特定継続的役務提供にならず、特定商取引法の対象外です。よって、クーリングオフはできませんし、中途解約の損害賠償の上限も適用外なのです。
ただし、特定継続的役務提供にならなくても、街頭で勧誘を受けて店舗に連れてこられて契約したのであれば、訪問販売としてクーリングオフができることもあります。
トラブルを防ぐために、何に気を付ける?
セルフエステに関する危害や契約トラブルが増加していると、国民生活センターは令和2年2月に注意喚起を行いましたが、依然として相談が増加し、近年はセルフホワイトニングのトラブルが急激に増加しています。
図表1
セルフエステは特定商取引法の対象外で、クーリングオフや中途解約時のルール、契約書面の交付義務などの適用がありません。よって、契約をするときに、契約内容や解約条件、違約金の有無を確認しましょう。
また、「無料」という言葉に注意をしましょう。「無料だから」と店舗に体験に出向くと簡単には帰れません。契約するつもりはない、もう少し考えたいときは、キッパリ断りましょう。
トラブルになったり契約に不安になったりしたときは、ひとりで悩まず局番なしの188(消費者ホットライン)や、お近くの消費生活センターに相談しましょう。特定商取引に該当しない場合でクーリングオフができなくても、消費者契約法で定める不当な勧誘による契約であれば、消費者契約法により取り消しができる場合があります。
出典
国民生活センター 「セルフエステ」の契約トラブルに注意! - 特に「セルフホワイトニング」に関する相談が増えています -(令和6年7月31日)
消費者庁 特定商取引法ガイド
消費者庁 知っていますか? 消費者契約法
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者