更新日: 2019.06.28 その他暮らし
住宅にも一層の性能向上が求められる時代到来!エネルギー消費の年間収支0
実は「Net Zero Energy House」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のことです。具体的には、どんなものなのでしょう……。
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
目次
「ZEH」とはこのようなものです
経済産業省 資源エネルギー庁のホームページ(※)では、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」と説明されています。
2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」との政策目標が設定されています。2016年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」においても、同様に政策目標が設定されています。
省エネルギーや地球温暖化への対策として、住宅にもより一層の性能向上が求められる時代なのです。
このZEHですが、次のイメージ図のように3つのポイントで構成されます。
(1)断熱(エネルギーを極力必要としない)
(2)省エネ(エネルギーを上手に使う)
(3)創エネ(エネルギーを創る)
いきなりエネルギー面で完全に自立独立した住宅を目指すものではなく、ロードマップの節目は2020年および2030年です
この3つの合わせ技で、エネルギー消費の年間収支「ゼロ」を目指すわけですが、その対象はイメージ図にもあるとおり、暖房・冷房・換気・照明・給湯です。冷蔵庫・電子レンジやテレビ・ビデオなどの家電による電力消費は含まれません。
エネルギー面で完全に自立独立した住宅を、いきなり目指すものではないようですね。
先ほどの政府政策目標でも2020年および2030年の節目に向けて、普及のロードマップが設定されているZEH。
達成目標の具体的な対象として、「2020年まで」はハウスメーカーなどが「新築する注文戸建住宅の半数以上」、「2030年まで」は、注文戸建に、建て売り戸建やマンションを加えた「新築住宅の平均で」、とされています。
個人住宅をスタートにして、分譲(一部賃貸)住宅に拡げていく道筋のようですね。
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マンションの取り組みも本格化する予定
一方、マンションに対してもZEHの定義を明らかにし、補助金サポートも用意した公的取り組みが、2018年度から始まりました。
マンションのZEHは、省エネや創エネの性能によって4つのランクが設定されていますが、いずれも住棟単位(共用部と専有部の両方)と住戸(専有部のみ)の両方での基準が定められています。
また、太陽光パネルなど創エネ設備は高層になるほど(総戸数に対しても)設置余地が限られるため、6階建て以上では、再生エネルギーに関する基準が緩和されている点が特徴です。
公的取り組みの代表的なものが、住宅用途部分6階建て以上を対象にした「高層ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」です。
2018年度分は6月の公募の結果15件(分譲14件、賃貸1件)が決定。都道府県別内訳は[広島県3件、北海道・千葉県・神奈川県各2件、福島県・東京都・山梨県・静岡県・島根県・沖縄県各1件]となっています。
またZEH-Mの普及推進の中心的な役割を担うことが期待される、マンションデベロッパーやゼネコンなどを登録する「ZEHデベロッパー」も2018年4月から公募が始まりました。公的制度のもとで、今後はZEHマンション供給が増えていく見込みです。
まとめ
ZEH-Mは、断熱性を高めるための断熱材やサッシ、創エネのための太陽光パネルや、家庭用燃料電池ほかの部資材などで、コストが高くなります。
実証事業を先取りした形のZEH-M基準の分譲マンションは、既に複数着工されていて2019年春以降に入居開始予定ですが、ある物件のZEH化のためのコストは、1戸当たり約300万円とも言われています。
一方で、省エネ・創エネによって、月々の光熱費(場合によっては月々の管理費も)の負担が節減されることにつながるため、購入した後も、将来的に売却する際にも大きなセールスポイントとなることが期待されます。
注文住宅から分譲住宅へ、そして戸建からマンションへと、今後ますます裾野が広がっていくことが予想されるZEHです。マイホーム計画の選択肢のひとつとしても覚えておいて損はないと思われます。
出典:※経済産業省 資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について」
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士