「家賃11万→18万円に値上げします」と突然の連絡! 同意がなければ家賃は変わらない? 知っておきたい「賃貸契約書」の見るべきポイントを、元不動産営業の筆者が解説します
配信日: 2025.03.07

結論から言うと、貸主が値上げを提示することは法的に問題ありません。ただ、賃貸契約の内容によって拒否できる場合もあれば、受け入れざるを得ない場合もあります。
本記事では、元不動産営業の筆者が自身の経験をもとに、家賃値上げ通知時に契約書で確認すべきポイントを解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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賃貸契約書は主に「普通借家」と「定期借家」の2つだけ
賃貸契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があり、それぞれ借主と貸主のどちらに有利かが異なります。
普通借家契約(借主の立場が強い)
借主が希望すれば、契約期間が終わっても契約は更新されます。貸主が更新を拒む場合、法律で定められた「正当事由」が必要です(借地借家法第28条)。
正当事由には、建物の老朽化や貸主自身の使用などが含まれますが、「新しい借主に貸したい」「家賃を上げたい」といった理由では認められず、一方的に契約を終了させることはできません。
また、家賃の値上げには借主の合意が必要であり、貸主が一方的に大幅な値上げをすることは借地借家法第32条で制限されています。貸主が値上げを求める場合、周辺相場や経済状況など合理的な根拠を示す必要がありますが、借主が同意しなければ原則として成立しない可能性が高いです。
定期借家契約(貸主の立場が強い)
契約期間があらかじめ定められ、満了後は自動更新されず契約が終了するのが原則です(借地借家法第38条)。借主が引き続き住みたい場合、貸主と合意すれば再契約できる可能性はありますが、保証はありません。
再契約の際には新たな契約条件を設定できるため、家賃が大幅に変わることもあります。このように、借主が希望した場合に契約が自動更新されるかどうかが、普通借家契約と定期借家契約との大きな違いです。
筆者経験談「普通借家」で家賃値上げを拒否し住み続けたケース
入居者は長年同じ物件に住んでおり、特にトラブルもなく契約を更新し続けていました。しかし、物件のオーナーが相続により変わったことで状況が一変します。
新しいオーナーは、周辺の賃料相場との乖離や物価の高騰を理由に、家賃の引き上げを検討しました。確かに、その物件の家賃は近隣の相場より低く、オーナーとしては適正価格へ見直したいと考えるのも無理はありません。
相談を受けた私たち不動産会社は、状況を踏まえたうえで家賃の改定を借主に伝えました。しかし、借主は普通借家契約であることを理由に、値上げには応じられないと主張。貸主側も交渉を試みましたが、契約上、強制力がないため最終的に借主は従来の家賃で住み続けることになりました。
入居者が同意しない場合、最終的には裁判で判断されますが、時間や費用などの負担が大きいため、実際に裁判へ進むケースは少ないのが現状です。
筆者経験談「定期借家」で再契約時に家賃が値上げされたケース
定期借家契約では、契約期間が終了すると入居者は原則として退去します。引き続き住みたい場合は、貸主の同意を得て再契約を結ぶ必要があります。再契約では、新たな契約条件を設定できるため、このタイミングで家賃の値上げが行われることもあります。
実際にあったケースでは、貸主の裁量で「これまで月11万円だった賃料を、再契約の際は18万円に引き上げる」と提示しました。テナントとして入居していた借主は、この値上げに応じることができず、最終的に退去を選択しました。
定期借家契約では、新たな契約条件に合意できない場合、契約を継続できないことが特徴といえます。
まとめ
家賃値上げの通知を受けたら、まず契約の種類を確認しましょう。普通借家契約なら、借主の同意が必要なため、値上げを拒否できる可能性があります。
一方、定期借家契約では再契約時に新たな条件が設定されるため、値上げを受け入れない場合は契約を継続できないこともあります。いずれの場合も、円満に話し合うために周辺の賃料相場を把握し、冷静に対応することが大切です。
出典
国土交通省 『賃貸住宅標準契約書』について
国土交通省 『定期賃貸住宅標準契約書』について
e-Gov法令検索 借地借家法
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー