更新日: 2019.06.19 その他暮らし

廃止が決定した妊婦加算 どんな制度だったのだろうか

執筆者 : 下中英恵

廃止が決定した妊婦加算 どんな制度だったのだろうか
みなさんは「妊婦加算」という制度をご存知でしょうか。これは、赤ちゃんを妊娠している女性に関わる医療費制度の1つで、2018年にスタートしました。しかし、2019年1月から、すでに凍結されることが決定し、今後廃止される予定です。
 
今回は、そもそも医療費はどのように決まっているのか、また妊婦加算とは一体どういう制度だったのかということについて、一緒に見ていきましょう。
 
下中英恵

執筆者:下中英恵(したなかはなえ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者

“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。

富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”

医療費はどう決まる?

まずは、私たちの医療費はどのように決まっているのかについて、ご説明します。みなさんは、病院や調剤薬局でもらう領収書をきちんと見たことがあるでしょうか。そこには、注射や薬の処方について、「点数」が記載されています。日本では、医療行為には、それぞれ点数が付けられており、この点数によって、医療費が決められているのです。
 
例えば、日本の病院での一般的な初診は、「282点」という点数が付いています。1点は10円として計算するので、初診料は「2820円」となります。実際は、会社員などで、医療費が3割負担となっている方の場合、846円(2820円×0.3)を病院の窓口で支払うことになります。
 

妊婦加算とはどういう制度?

では、今回話題となった「妊婦加算」とは、一体どういう制度だったのかを見ていきましょう。妊婦加算とは、赤ちゃんを妊娠している女性が、医療機関を受診した場合、通常の初診料や再診料に加えて、医療費が上乗せされるというものです。
 
例えば、初診料については、通常の初診料に加えて「75点」を負担しなければなりませんでした。医療費の自己負担が3割の妊婦さんの場合、225円負担が増えたことになります。
 
さらに、時間外や休日、深夜に、妊婦さんが病院で診察を受けた場合、より大きな負担額が設定されていました。例えば、深夜の初診料は、通常の初診料に加えて「695点」の負担増となっており、医療費の自己負担が3割の妊婦さんの場合、初診料は、通常の場合に加えて2085円も負担が増えたことになります。
 
微熱やせきなど風邪の場合や、腹痛などの症状がある場合、赤ちゃんのことが心配で、休日や夜間でも、すぐにお医者さんに診てもらいたいと考える妊婦さんは多くいらっしゃいます。しかし妊婦加算は、特に休日や夜間の負担額が大きく、家計にとっても大きな負担であったと言えるでしょう。
 

妊婦加算は実質廃止へ

たしかに、妊婦さんを診察する場合、医者はお腹の赤ちゃんの安全性を考慮し、使用する薬や処置方法に細心の注意を払わなければなりません。妊婦加算は、もともと、妊婦さんが安全に医療行為を受けられるようにするために、始まった制度だったのです。
 
しかし、周知が徹底しておらず、医療費アップに戸惑った妊婦さんは多くいらっしゃいました。そして、妊婦さん限定で医療費がアップしたことに多くの批判の声が上がり、妊婦加算はわずか1年で実質的に廃止されることになったのです。
 
今回の妊婦加算のように、医療費制度の改定は、私たちの家計に大きな影響を与えることがあります。まずは、医療費の点数制度を理解して、病院の領収書をしっかりチェックする習慣を身につけましょう。また、病院を利用する際に、「こんな制度知らなかった」と戸惑うことがないよう、医療費にかかわる制度については、今後もぜひ注目してみるようにしましょうね。
 
執筆者:下中英恵(したなかはなえ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
 

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