息子が通う大学が来年度から「大学無償化制度」の対象から外れると聞きました。対象から外された場合、在学生も制度支援を打ち切られるのですか?

配信日: 2025.03.20 更新日: 2025.03.21

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息子が通う大学が来年度から「大学無償化制度」の対象から外れると聞きました。対象から外された場合、在学生も制度支援を打ち切られるのですか?
修学支援新制度(大学無償化制度)の対象となる大学等は、経営状態に問題がなく、十分な教育体制が整っていることなどの一定の要件を満たした学校です。
 
ここ数年、少子化の影響で定員割れの私大が増え、修学支援新制度の対象校の要件を満たさなく取り消しになるケースが増えています。修学支援新制度を利用して大学等への進学を考えている人は、この制度の対象になっているかをしっかりと調べることが重要です。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

修学支援新制度の現状

修学支援新制度は、経済的理由で大学等への進学をあきらめないよう、意欲ある子どもたちの進学を経済的に後押しすることを目的に、「授業料・入学金の免除または減額」および「返還不要の給付型奨学金」制度が2020年4月にスタートしました。
 
2024年度からは、多子世帯(扶養する子どもが3人以上いる世帯)や私立の理工農系の学部等に通う学生等の中間層に対する支援を拡大し、2025年度からは多子世帯の学生等について、所得制限を設けず、大学等の授業料・入学金について全額支援(上限あり)を行います。
 
JASSOの資料によれば、令和5年度の給付奨学金の新規採用数は、11万9673人となっています。奨学生としての適格性を審査するため、毎年、大学等に在籍していること、および家族情報等を報告する「在籍報告」やマイナンバーにより取得した奨学生本人、および生計維持者の経済状況、学業成績や学修状況を確認する「適格認定」を実施しています。
 
その結果、経済状況により支援区分の変更、支援の停止や、学業成績が不振の場合、廃止、停止、警告の処置がなされます。同資料によると、学業不振で廃止になった学生は1万2650人(返還が必要なのは766人)、停止は7446人、警告は4万1729人となっています。
 
2025年度より学業要件が厳しくなりますので、しっかり学業に力を入れましょう。
 

大学の志願者数等の状況

日本私立学校振興・共済事業団「令和6(2024)年度 私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、令和6年度は志願者数、受験者数、合格者数、入学者数は前年度から減少しましたが、入学定員は増加しました。
 
具体的には、志願者数は8330人減の370万4471人、受験者数は9274人減の353万4534人、合格者数は3344人減の149万680人、入学者数は5869人減の49万4730人、入学定員は1239人増の50万3874人となっています。
 
この結果、入学定員充足率は98.19%となりました。入学定員充足率が100%未満の大学は34校増加し354校となっていて、大学全体に占める未充足校の割合は59.2%と1989年度の調査開始以来で過去最高となりました。
 
収容定員ごとの動向を見ると、充足率が最も高いのは大規模大学(収容定員8000人以上)で103.45%、続いて中規模大学(収容定員4000人以上8000人未満)で101.33%、最も低いのは小規模大学(収容定員4000人未満)で88.86%でした。大規模大学には学生が集まっており、小規模校で定員割れが加速していることがわかります。
 
地域別では、定員充足率が100%を上回ったのは、「関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)」「東京」「大阪」「福岡」でした。一方、「四国」「埼玉」「東北(宮城を除く)」の定員充足率の低下が目立ちました。
 
学部系統別の動向を見ると、すべての学部系統で入学定員充足率が下降しています。特に、「保健系」「家政系」の下降が目立ちます。一方、「医学」「農学系」「社会科学系」「芸術系」では、入学定員充足率が100%を超えています。
 

定員充足率と修学支援新制度

文部科学省の調査によると、学校数(2024年11月29日)は、大学・短期大学が1055校、高等専門学校が57校、専門学校が2598校となっています。このうち修学支援新制度の対象となる学校(2025年4月1日)は、大学・短期大学が1002校(95.0%)、高等専門学校が56校(98.2%)、専門学校が2037校(78.4%)です。
 
現在、対象校であっても来年度は対象校である保証はありません。たとえば、定員充足率が3年連続で8割未満だと、対象校から除外され翌年度の新入生から修学支援新制度が受けられなくなります。
 
ただし、直近の収容定員充足率が5割未満に該当しない場合であって、直近の進学率・就職率が9割を超える場合は、確認取り消しが猶予されます。
 
専門学校の場合は、定員充足率が3年連続で5割未満だと対象から外れますが、地域の経済社会にとって重要な専門人材の育成に貢献していると都道府県知事等が認める場合には、確認取り消しが猶予されています。
 

まとめ

日本私立学校振興・共済事業団の調査により、小規模大学の経営の厳しさが浮き彫りになりました。この機会に、自分の志望校が修学支援新制度の対象校であるかどうか、自分自身が対象となる要件を満たしているかどうかを調べてみましょう。
 
なお、すでに修学支援新制度を利用している在学生は学校が対象校から除外されても引き続き利用できますので安心してください。
 
修学支援新制度の対象となっているのはどの学校なのか、翌年度から対象校でなくなるのはどの学校かは文部科学省のホームページに夏ごろ公表される資料を閲覧すれば確認できます。
 

出典

日本学生支援機構 JASSO年報(令和5年度)
文部科学省 確認の取消しを行った大学等の公表(令和7年2月現在)
文部科学省 修学支援新制度の確認大学等の一覧(対象機関リスト)
日本私立学校振興・共済事業団 令和6(2024)年度 私立大学・短期大学等入学志願動向
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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