更新日: 2019.06.19 その他暮らし

インフレ(物価上昇)で損する、元本保証商品のリスク

インフレ(物価上昇)で損する、元本保証商品のリスク
日本の家計の金融資産の半分以上が現金・預金です。日銀のマイナス金利政策の影響で預金金利はほぼ0%のため、預けていても資産は増えません。
 
政府は確定拠出年金制度やNISA制度の拡充を図り、預金資金が投資に向かうよう優遇処置を行っていますが、大きな成果に結びついていません。投資価格の下落リスクを恐れ、預金など安全性の高い元本保証商品に預ける人が多いからです。
 
原材料価格の高騰や人手不足による人件費、運送費の高騰から多くの企業が値上げを予定しています。
 
インフレになると、安全性の高い元本保証商品に預けても物価上昇率よりも預金利回りが低ければ、実質的にはお金が目減りしていき損をしていきます。
 
前田紳詞

執筆者:前田紳詞(まえだ しんじ)

ファイナンシャルプランナー

日本経済新聞読み方専任講師、ドラッカー学会学会員、前田マネジメント代表、㈱マイビジネスクリエイトオフィス取締役、 NPO法人人財育成支援ネット理事
外資系メーカー、外資系金融機関で勤務後、ファイナンシャルプランナーとして独立。 現在、前田マネジメント代表として企業、金融機関、行政、医療関係機関、研修センター、商工会議所などで講演や研修講師を担当。

幅広い知識や経験を活かし、ファイナンシャルプランナー業務だけでなく人材育成やマーケティングなどのマネジメント研修も行っている。年間講演回数は150回以上。

「教育を通じて人の成長のサポートをする」を理念に、自ら考え行動し人生を豊かにする「ライフマネジメント」の実現を目標に活動している。
http://m-lm.biz

人手不足による運送費高騰が引き起こすインフレ

厚生労働省が発表した2018年12月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は1.63倍と、人手不足状態が続いています。リーマンショック後の2009年を境に有効求人倍率はずっと上昇しており、今後も人手不足の悪化が予想されます。
 

※厚生労働省「一般職業紹介状況(平成30年12月分及び平成30年分)について」より
 
業種別ではタクシー運転手やトラック運転手などを含む「自動車運転の職業」が3.23倍とかなり高い状態です。
 
仕事の関係で地方都市の駅から客先までタクシーをよく利用しますが、早朝はタクシーの予約がほとんどできなくなりました。タクシー運転手の大半が60歳以上の高齢者で、最近乗ったタクシー運転手は全員が70代でした。
 
運転手の方に話を聞くと、タクシーの車は余っていても運転手が足りず予約を受けられないそうです。定年に達しても会社から引き留められてなかなか退職させてもらえず、74歳でも働いている方もいました。私が乗ったあるタクシー会社の営業所は運転手不足で閉鎖になります。
 
トラック運転手も同様で、運転手確保のため賃金を上げています。「働き方改革」で残業時間規制が厳しいため、さらに人手不足が助長され運送費の値上げに繋がっています。
 
運送費の上昇が各企業経営にも影響を与えており、食品メーカーやネット通販会社など、さまざまな業界で値上げ、または内容量を減らす実質値上げが始まっています。
 

インフレが金融資産に与える影響

総務省が発表する消費者物価上昇率によれば、2018年は総合指数1.0%、生鮮食品を除く総合指数0.9%、さらにエネルギーを除く総合指数0.4%でした。私たちが普段買い物をして物価を感じるのは一番目の総合指数です。
 
5年後に車を買う費用として100万円を元本保証の金利0.05%の預金に預けたとします。税金を無視したとして、100万円が5年後には約100万2500円になります。
 
車の値段が同じように0.05%値上がりするなら問題ありませんが、仮に毎年1%値上がりしたとすると車両価格は約105万1000円です。元本保証で安全だと思って預けていたら4万8500円購入資金が不足して損します。これがインフレのリスクです。
 

 
日銀はインフレ目標を2%に定めています。もし車両価格が毎年2%上がれば5年後には約110万4000円となり、10万1500円お金が足りなくなり損をします。
 

現金・預金に預けるリスクを知っておく

日本銀行が2018年8月に発表した「資金循環の日米欧比較」によれば、日本人の家計の金融資産は52.5%が安全性の高い現金・預金です。
 

※日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」より
 
多くの人は現金で保持、あるいは預金しておけば安全で損しないと考えていますが、インフレになるとこの考えは通用しません。2019年10月には消費税が10%に引き上げられ、モノやサービスの値段が消費増税分の2%上がります。
 
利回り5~10%を狙うような投資は大きなリスクを背負う必要がありますが、インフレに負けない程度の1~2%程度の利回りであればリスクも低くなります。インフレに負けない程度のローリスク・ローリターン投資を中心とした資産運用を考えてみてはどうでしょうか。
 
参照・出典
厚生労働省「一般職業紹介状況(平成30年12月分及び平成30年分)について」
厚生労働省「一般職業紹介状況(平成30年12月分及び平成30年分)について」職業別一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))
総務省統計局「2015年基準 消費者物価指数 全国 2018年(平成30年)12月分」
日本銀行調査統計局「資金循環の日米欧比較」
 
執筆者:前田紳詞(まえだ しんじ)
ファイナンシャルプランナー
 

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