居酒屋にある「3000円」(税込み)のコース。消費税が割り切れないけど、問題ない?
配信日: 2025.03.28

今回は、この端数処理に問題はないのか、飲食店はどのようにこの価格を設定しているのかについてまとめました。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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「税込価格」を設定する際の端数処理に関する規定はない
財務省によると、「税込価格」を設定する際の端数の処理方法はそれぞれの事業者の判断に委ねられています。つまり、切り捨て、切り上げ、四捨五入のいずれの方法を選択しても、問題はありません。
ただし、インボイス制度の導入に伴って2023年10月1日以降は消費税額の計算方法に一定のルールが設けられました。国税庁によると、「適格請求書の記載事項である消費税額等に1円未満の端数が生じる場合は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要」があるとされています。
商品ごとに消費税額を計算し、それぞれで1円未満の端数処理を行ってその合計額を消費税額等として記載することは認められません。
総額表示の義務とは
2021年4月1日より、飲食店を含む全ての課税事業者は消費税を含めた総額表示(内税)が義務付けられています。「3000円(税込み)」というコース料金は、この総額表示の一例です。
「3000円(税込み)」コースの場合、消費税額は272.727……円となり、割り切れません。切り捨てでは272円、四捨五入および切り上げすれば273円です。
1円未満の端数が発生し、処理の仕方による消費税額の違いがあっても、総額表示義務によって、最終的な販売価格が合っていれば問題はないといえます。
端数処理が与える店側への影響
一見、小さな違いに感じる端数処理ですが、取引量が増えると損益に大きな影響を与える可能性があるでしょう。
例えば1日50件の「3000円(税込み)コース」の注文がある場合、消費税額は切り捨てだと1万3600円、四捨五入および切り上げだと1万3650円となります。1日あたり50円の差が生じ、年間(365日)では約1万8250円の差です。
消費税は国税として納める必要があるため、規模が大きくなればなるほど、この差は無視できないものとなるでしょう。
また、2023年10月1日からのインボイス制度導入以降、消費税の計算方法に変更が生じ、事業者は以前よりも厳密な消費税計算と記録管理が求められるようになりました。
この変更では、商品やサービスを税率(10%と8%)ごとに合計してから消費税を計算することとなり、前述の通り、商品1つずつに対して消費税額を計算し、端数処理を行って合算する方法は認められなくなっています。
消費者への影響はある?
消費者は、店側が端数処理をどのように行っているかは分かりません。総額表示義務により最終的に支払う金額が示されているため、消費者は追加の費用を心配することなく、表示価格で商品やサービスを購入できるといえるでしょう。
店側は、メニューやウェブサイトなどでの価格表示は必ず税込み価格を明記し、店舗内で統一した端数処理方法を採用して顧客に混乱を与えないようにすることが大切です。加えて、客から端数処理に関する質問があった場合に説明できるようにしておく必要があるでしょう。
消費税の端数処理は各事業者の判断に委ねられており、割り切れなくても問題はない
「3000円(税込み)」のコース料金に見られるような消費税の端数処理は、割り切れなくても問題ありません。店側は、消費者が混乱しないよう総額表示義務を遵守し、店舗内で一貫した端数処理方法を採用して、明確な価格表示を心がける必要があるといえるでしょう。
また、インボイス制度の導入後端数処理に関するルールが変更され、適格請求書1枚あたりに端数処理は1回だけ行う必要があり、異なる税率が適用される品目があれば、税率ごとに別々に端数処理を行うことになりました。
消費者は、消費税額を計算する際に端数処理が発生し、1円程度の誤差があるなど扱いによって金額が若干異なる場合があることを理解しておくとよいでしょう。飲食店に限らず、経営者は消費税の処理方法に関して十分に理解し、法令遵守と顧客満足の両立を目指すことが大切です。
出典
財務省 総額表示に関する主な質問 (Q9) 現在の「税抜価格」を基に「税込価格」を設定する場合に円未満の端数が生じることがありますが、どのように処理して値付けを行えば良いのですか。
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.6371 端数計算
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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