「築50年の自宅」に住み続ける高齢の両親。「死んだらつぶして」と言われているけれど、かなり古いので地震などが心配です。手ごろな「中古マンション」に引っ越してもらうべきでしょうか?
配信日: 2025.04.06 更新日: 2025.04.07

地震の耐久性の観点で言えば、築年数の長い家は、その状況によってはリフォームや建て替えが必要となってきますが、高齢者が住んでいる場合「年齢的に大金をかけても寿命であまり住めないかもしれない」とあまり乗り気にならないこともあるかもしれません。
しかし築50年ともなると、地震に対する耐久性はどのくらいなのでしょうか。そもそも高齢者だけの世帯が戸建てに住み続けることにリスクはないのでしょうか。本記事では防災士の資格を持つ筆者が、築年数と耐久性、また戸建てとマンションに暮らすメリット・デメリットについて解説します。

執筆者:渡辺あい(わたなべ あい)
ファイナンシャルプランナー2級
築年数で地震の耐久性はどのくらい違うの?
地震に対する耐久性は、その家を建てたときの建築基準によって異なります。耐震の基準には大きく分けて3つあり、それらは「旧耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準」と言われます。
「旧耐震基準」は、1950年から1981年5月まで適用されていたもので、「震度5強程度」の揺れに対して、家屋が倒壊・崩壊しないという基準となっていました。
しかし1978年に発生した宮城県沖地震の被害を受けて、震度6強~7程度の揺れでも家屋が倒壊・崩壊しないことを基準としたものが「新耐震基準」と呼ばれます。1981年6月1日から施行されて以降、現在も耐震の基準となっています。
この「新耐震基準」を基に2000年6月1日以降にさらに強化したものが「2000年基準」です。基本的には「新耐震基準」がベースとなっていますが、阪神淡路大震災で多く倒壊した木造建築の耐震性をさらに強化する改正が加えられたものとなっています。
今回の場合、2025年時点で築50年の家は1975年頃に建てられているため、「旧耐震基準」を基に建てられていることになります。そのため震度6弱以上の巨大地震が発生したときには、倒壊の可能性が少なからずあるため、防災の観点から言えば「倒壊のおそれのある家」となってしまうのです。
長く暮らした戸建てに暮らすメリット・デメリットとは
今回のようなケースで、高齢になった親が長く暮らした自宅に住むメリットとして挙げられるのが、昔ながらの知人友人が近所にいるという点です。近年では核家族化が進んでおり、高齢者だけの世帯も増えています。遠くに住む子どもには頼りにくいことも、近所の友人とお互いを助け合うことができるのは、心強いといえます。
また住宅の環境にもよりますが、戸建ては家同士が離れていることも多く、マンションのような集合住宅と比べて生活音が響きにくく、騒音がさほど気にならないことが多いでしょう。できるだけ静かな環境で生活をしたい人たちには、戸建ての暮らしが向いているかもしれません。
一方、戸建ては防犯面でのデメリットがあります。高齢者の世帯は犯罪に狙われるリスクが高く、築年数の大きい家は新しい家と比べてセキュリティがしっかりしていないことが多いので、空き巣や忍び込みの犯罪に狙われやすくなる可能性があるのです。
マンションに引っ越すメリット
マンションに住む場合、戸建てのような近隣住民との関係は希薄になってしまう可能性はありますが、かわりに日常の「困りごと」に関しては管理業者が対応してくれるというメリットがあります。
マンションの清掃や点検のほか、住宅のメンテナンスも個人で行うことが不要になるので、高齢になり家の手入れに手が行き届かない場合、マンションに住む大きな利点といえるでしょう。また、マンションによってはオートロック機能がついていたり、2階以上の部屋であれば、空き巣が侵入しにくくなるため、セキュリティ面でも安心です。
まとめ
1981年以前に建てられ、耐震補強工事などを行っていない住宅は、防災の観点で言うと耐震性で不安が残ります。また高齢者が戸建てに住むことは、防災面の他にもセキュリティ面でのデメリットがあるでしょう。
高齢者の世帯にとって、戸建てとマンションのどちらが「終の棲家」としてふさわしいと考えるかは人それぞれですが、どちらを選択するにしても、安全にそして安心して暮らせるように、必要に応じて手を加えて、住宅環境を整えておくことが必要です。
出典
国土交通省 住宅・建築物の耐震化について
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級