【FPが解説】4月から改正雇用保険法の一部が施行! ポイントを見てみよう

配信日: 2025.04.07

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【FPが解説】4月から改正雇用保険法の一部が施行! ポイントを見てみよう
令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)の中から、主な改正内容や創設される「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」の概要を紹介します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

自己都合退職者が、教育訓練等を自ら受けた場合の給付制限期間解除

現行、自己都合で会社を辞めた場合、失業給付(基本手当)の受給に当たり、待期満了の翌日から原則2ヶ月間(5年以内に2回を超える場合は3ヶ月)の給付制限期間があります。
 
2025(令和7)年4月1日より、離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定および就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限期間はなしになります。また、2ヶ月の給付制限期間が1ヶ月に短縮されます。
 

就業促進給付の見直し

現行の就業促進給付には、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当があります。
 
就業手当は、受給資格者が職業に就いた場合、所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上を残して就業をした場合に、就業日ごとに基本手当日額の30%相当額を支給するものです(再就職手当の対象とする就職を除く)。
 
再就職手当は、受給資格者が安定した職業(1年超の雇用見込みのある職業等)に就いた方で、所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合に支給残日数の60%、または70%に基本手当日額を乗じた額の一時金を支給するものです。
 
就業促進定着手当は、基本手当受給者が早期再就職し、再就職後6ヶ月間定着した場合に、離職前の賃金から再就職後賃金が低下していた方に対して、低下した賃金の6ヶ月分を支給するものです。基本手当支給残日数の40%相当額(再就職手当として支給残日数の70%が支給された場合は、30%相当額)が上限となっています。
 
2025(令和7)年4月1日より、就業手当を廃止するとともに、就業促進定着手当の上限を支給残日数の20%に引き下げになります。
 

育児休業給付に係る保険料率引き上げ等

2025(令和7)年4月1日より、当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げる改正を行うとともに、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組みが導入されます。
 

教育訓練支援給付金の給付率引き下げ

教育訓練給付金は、働く人たちの能力開発・キャリア形成を支援することで、雇用の安定と就職の促進を目的としていて、厚生労働大臣が指定している教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるというものです。
 
対象となる教育訓練は3種類あり、それぞれ給付率が異なります。
 
現行、専門実践教育訓練を修了した場合、受講者が指定教育訓練実施者に対して支払った受講費用の最大80%(年間上限64万円)に相当する額がハローワークから支給されます。特定一般教育訓練は最大で受講費用の50%(上限25万円)、一般教育訓練は最大で受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。
 
2025(令和7)年4月1日より、専門実践教育訓練を受給する方を対象とする「教育訓練支援給付金」の給付率が、離職前の基本手当の日額80%相当から60%相当に引き下げられます。
 

「出生後休業支援給付」の創設

現行、育児休業を取得した場合、休業開始から通算180日までは賃金の67%(手取りで8割相当)、180日経過後は50%が支給されます。2025(令和7)年4月1日より、「共働き・共育て」を推進するため育児休業給付金に上乗せする形で給付を手厚くしました。
 
出生後休業支援給付は、子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、夫婦ともに14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付するもので、育児休業給付金(支給率67%)とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げとなります。
 
なお、配偶者がいない場合など夫婦ともに育児休業を取得できる状況でない場合は単独での育児休業取得も対象です。
 

「育児時短就業給付」の創設

現状では、育児のための短時間勤務制度を選択し、時短分の賃金支払い義務は企業にないため賃金が低下した労働者に対して給付する制がありません。
 
2025(令和7)年4月1日より、この収入減を補う「育児時短就業給付金」が創設されました。被保険者が、2歳未満の子を養育するために、時短勤務をする場合、時短勤務中の各月に支払われた賃金額の10%が支払われます。
 

高年齢雇用継続給付の給付率引き下げ

高年齢雇用継続給付は、高年齢者の「仕事に就きたい」という意欲を維持・喚起して、65歳までの雇用継続を援助すること・促進することを目的とし、60歳到達等時点(その日時点で被保険者期間が5年以上ない方はその期間が5年を満たすこととなった日)に比べて、賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の、一定の雇用保険一般被保険者に給付をする制度です。
 
現行、最大給付率(賃金が60歳到達時賃金の61%未満に適用される給付率)は15%ですが2025(令和7)年4月1日より、10%に引き下げられます。
 
以上、ご自身が対象となる制度があれば、積極的に活用しましょう。
 

出典

厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第197回) 令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について
厚生労働省 令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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