10年間で設立件数が約3倍の「合同会社」。よく聞く「株式会社」との違いは?

配信日: 2025.04.08

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10年間で設立件数が約3倍の「合同会社」。よく聞く「株式会社」との違いは?
近年、日本で注目を集めている会社形態が「合同会社」です。2006年の会社法改正により導入された比較的新しい会社形態ですが、2013年から2023年の10年間で設立件数は約3倍となっています。
 
今回は、合同会社の設立が増加した理由と、株式会社との違いなどについてまとめました。
FINANCIAL FIELD編集部

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合同会社とは

合同会社は、2006年に施行された「会社法」に基づいて新たに設けられた会社形態の一つで、正式には「持分会社」に分類されます。
 
会社法576条によると、合同会社について「社員全員が有限責任社員とする」と定めています。経営に関する決定権は出資額に左右されることなく、意思決定が迅速に行われる点がメリットといえるでしょう。
 
合同会社は、将来的に事業が拡大する際は必要に応じて株式会社への組織変更も可能で、特に小規模事業や新規事業の設立に適した形態といえます。
 

合同会社と株式会社の違い

合同会社と株式会社は、さまざまな面で異なる部分があります。表1に株式会社と合同会社の違いをまとめました。
 
表1

合同会社 株式会社
所有と経営の関係 所有(出資者)と
経営が一致
所有(株主)と
経営(取締役)が分離
意思決定の方法 社員の同意で決定
(原則、一人一議決権)
株主総会で決定
(議決権は株式数に応じる)
設立費用 約6万円~ 約22万円~
定款の認証 不要 必要
役員の任期 任期なし 最長10年
決算公告 不要 必要
資金調達 おもに借り入れや
補助金による
株式発行による
資金調達が可能

※筆者作成
 
合同会社では出資者が経営に直接携わりますが、株式会社では会社を所有しているのは株主で、株主総会で選任された取締役が経営を行います。
 

合同会社が増加した背景

合同会社の設立件数が増加する背景には、以下のような要因があると考えられます。


・低コストで設立可能
・設立手続きの簡素化
・経営の柔軟性

法人化がもたらすのは信用度の向上や税制上のメリットです。設立に必要な費用が株式会社に比べると少なく済み、手続きも簡略化されていることから、個人事業主が法人化を検討する際大きな魅力となり、合同会社の設立が増加しているとみられます。
 
また、合同会社では出資者(社員)が直接経営に参加できるため経営上の重要事項について意思決定が速く、経営の自由度が高いことも選ばれる要因の一つでしょう。
 

合同会社のデメリット

合同会社は、導入から20年ほどと新しい会社の形態であることから認知度が低く、株式会社に比べて社会的信用度が低い傾向があるといえます。特に、BtoB(企業間取引)において取引先から信頼されにくくなる可能性があり、契約や業務の交渉で不利になるケースもあるでしょう。
 
また、合同会社は株式を発行できないため、資金調達の手段は国や自治体からの補助金や助成金、融資が主となります。外部から大規模な投資を受けることが難しく、成長の限界があるかもしれません。
 
そのほか、出資比率に関係なく利益配分を決定できることで不公平感が生じた結果、出資者間で対立する可能性もあります。方向性を巡って意見の不一致がある場合、経営判断が停滞するおそれもあるでしょう。
 

合同会社は設立のハードルが低く、自由度が高い。ただしデメリットもあるため慎重な検討が必要

合同会社の設立件数は増加傾向にあり、この傾向は今後も続くと予想されます。低コストで設立でき、経営の柔軟性が高い合同会社は、起業家や法人化を考える個人事業主にとって大きなメリットとなるでしょう。
 
合同会社の増加は、より多くの人が会社設立に挑戦しやすくなったというビジネス環境の変化を反映したものと考えられます。ただし、合同会社にもデメリットがないわけではありません。そのため、法人化する際は事業の目的や将来のビジョンに合わせて慎重に検討するべきでしょう。
 

出典

デジタル庁 e-GOV 法令検索 会社法(平成十七年法律第八十六号)第五百七十六条4
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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