出産から1年「出産育児一時金」の申請忘れに気づきました。今から申請しても受け取れるのでしょうか?
配信日: 2025.04.14

あわただしくしていて、気づいたときには、出産から1年も過ぎており、出産育児一時金を受け取っていなかったというケースもあるのではないでしょうか? 今回は、出産育児一時金はいつ申請するものなのか? いつまで給付が受けられるのかについて解説します。

執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
出産育児一時金について知っておこう
まず知っておくべきことは「出産育児一時金」とは、どのようなものなのか? ということです。出産育児一時金は、子どもを出産したときに加入している公的医療保険制度から受け取れる一時金のことを言います。
たとえば国民健康保険に加入しているときには、住居地の自治体から給付されますし、会社員等で働いているときには勤務先に申し出をして、社会保険から給付を受けます。
2023年4月から1児につき一律50万円が支給されることになっており、妊娠22週以上で出産をした方が受給の対象です。なお、妊娠85日以上であれば、死産・流産(医師等の証明が必要)も支給されることになっています。
また、妊娠週数が22週に達していないとき等、産科医療補償制度の対象とならない出産の場合のときの支給額は、48.8万円となっています。
申請方法を知っておこう
出産育児一時金は、申請することで受け取れる一時金ですが、出産予定日の2ヶ月前から出産日までに事前に申請することが必要です。
国民健康保険(国保)に加入している場合は、医療機関等の同意を得て市区町村の国保・年金課 保険給付等に連絡すれば申請書を郵送してもらえます。もちろん、市区町村の該当の窓口で申請書を受け取ることもできます。
会社員で社会保険に加入している場合には、会社の担当部署に申し出ることが必要です。
申請書を書く場合は世帯主と医療機関等の双方の記入をしますが、出産費用が50万円未満の場合で差額分が生じたときには、世帯主(あらかじめ申請書に記入した口座へ振り込み)に支給する仕組みになっています。
ここまで読むと出産した後では、出産育児一時金はもらえないの? と思うかもしれませんが、申請期限は出産した翌日から2年を経過すると無効になります。つまり、冒頭のケース(出産から1年後に気づいた場合)では、このタイミングから申請しても出産育児一時金を受け取れます。
どのように支給されるの?
ここで東京・世田谷区の例をもとに、出産育児一時金がどのように支給されるのか説明します。国内出産の申請方法&支給方法は3つです。
(1) 直接支払制度
世田谷区が医療機関に直接支払うというもので、医療機関等で手続きを行います。
(2) 受取代理制度
小規模な医療機関等が対象で、出産育児一時金は世田谷区から医療機関等へ直接支払われます。手続きは、国保・年金課 保険給付のみといったように、制限があります。
(3) 償還払い
まずは個人が出産費用を全額医療機関に支払うというもので、出産後に申請を行うと出産育児一時金を世帯主に支給する方法です。
償還払いの申請方法は、医療機関等に費用を全額納めた後、所定の書類をそろえて申請します。申請書類は多岐にわたりますので、過不足なく準備するようにしましょう。一時金は、申請書類を受理した後に、約1ヶ月後に世帯主の銀行口座へ振り込まれます。
1. 出産育児一時金支給申請書
2. 医療機関等と取り交わした直接支払制度を利用しない旨の合意文書の写し
3. 医療機関等より発行された出産費用の領収・明細書の写し(直接支払制度を利用していない旨の記載があるもの)
4. 出産した方のマイナ保険証か資格確認書、または被保険者証のいずれか
5. 世帯主と出産した方のマイナンバーカードまたは通知カード
6. 世帯主の口座番号等がわかるもの
7. 本人確認資料
本人確認資料とは、運転免許証、パスポート(日本国発行のもの)、マイナンバーカードなど官公署発行の写真入り証明書です。詳しくは、国保・年金課 保険給付でご確認ください。
なお、死産・流産の場合は上記のほかに以下が必要です。
●上記1・2に加え、妊娠85日以上の分娩であることがわかる書類の写し
●医師等の証明書、死産届、死胎火葬許可証、母子手帳(いずれか1点の写し)
(注意)妊娠85日(妊娠4ヶ月、12週+1日)以上の分娩(流産・死産・人工妊娠中絶を含む)であることが支給条件です。
出産を控えている方、出産を終えられた方は、必ず確認・申請しましょう。
出典
厚生労働省 出産育児一時金の支給額・支払方法について
世田谷区公式ホームページ 出産育児一時金の支給
全国健康保険協会 出産育児一時金について
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト