電気代の高騰が理由でマンションの管理費を「5000円値上げ」されそうです。管理費の値上げは拒否することもできるのでしょうか?
配信日: 2025.04.15

今回は、電気代の高騰によるマンション管理費の値上げの仕組みを解説します。管理費の値上げが拒否できるケースにも触れるので、参考にしてください。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
マンション管理費の値上げはどのように決定する?
マンション管理費の値上げは、大きく分けて2つの議決総会によって決定されます。一つは「普通決議」、もう一つは「特別決議」です。
それぞれの仕組みを詳しくみていきましょう。
普通決議で値上げが決まる仕組み
マンションの管理費(金額)が規約に直接記載されていない場合、管理費を値上げするには「普通決議」が採用されます。
以下は、普通決議について、建物の区分所有などに関する法律「第5節(第39条)」の一部です。
「集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する」
規約本文に「管理費等の額は別に定める」と記載されていれば、その別表は規約の一部とはならず、区分所有者および議決権の過半数の賛同で管理費の値上げが決定されます。
特別決議で値上げが決まる仕組み
規約本文に「管理費等の額は別表の通りとする」との記載があり、別表が規約の一部となる場合、管理の値上げには「特別議決」が必要です。
特別議決について、同じく区分所有に関する法律の「第5節(第31条)」の一部をご紹介します。
「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする」
この場合、別表の変更は規約変更に該当するため、区分所有者および議決権の4分の3以上の賛同が必要です。ただし、規約に別表に関するただし書きがある場合は、普通決議で採択できます。
マンションの管理費の値上げが決定する流れ
マンション管理費の値上げが決定されるためには、国土交通省の標準管理規約に沿った決議総会が実施されます。値上げ決定までの流れをみてみましょう。
(1)管理費値上げに関する招集の通知
(2)総会の開会・理事長のスピーチ
(3)議事録作成者の選出
(4)管理値上げの討議
(5)総会の閉会・終了のあいさつ
以上の流れで、マンション管理費の値上げを討議・決定します。
電気代の高騰がマンション管理費に与える影響
ここ数年は物価の高騰や円安、地政学的要因などから「物価高」が家計や企業の支出を圧迫しています。管理会社からの値上げ要請が増え、マンション管理組合の会計はひっ迫しているようです。
なかでも電気代は、管理組合において最も深刻な収支問題になっているとの見方もあり、すでに値上げが適用されているマンションも少なくないでしょう。マンションに必要な電気は設備などにもよりますが、主に共用部の照明やエレベーターなどがあります。
図1は、東京電力ホールディングス株式会社が公開している「平均モデルの電気料金」です。
図1
出典:東京電力ホールディングス株式会社「平均モデルの電気料金」
2021年の1月の平均モデルの電気料金は6317円、2022年9月は9126円で、2023~2024年は9000円台や6000円台の月もありましたが、ほとんどの月は7000円台で推移しています。
電気料金の高騰が続けば、管理組合は赤字決算となり区分所有者が負担する可能性があるため、管理費の見直しは必然です。
管理費の値上げに反対・拒否できるケース
管理費の値上げに反対・拒否する方法はあるのでしょうか。
管理費の値上げは原則として総会で決議が出されるため、一人が拒否しても値上げを回避することは難しいでしょう。しかし、値上げの理由や金額によっては、多数の組合員から拒否される可能性はあるかもしれません。
管理費値上げへの管理組合の対応策
マンション共用部の電力管理を見直すだけでも、電気代の削減につながります。代表的な対応策には、料金プラン・電力会社・照明灯の数・点灯の時間帯などの見直しです。さらに、電力会社を変更したり電灯をLED化したりすることで、節約効果が得られることもあります。
管理費の値上げは管理組合の多数決で決まる
マンション管理費の値上げは、普通決議か特別決議により多数決で採択が決まります。値上げ通知を受けた時点では未確定であり、値上げに納得する組合員がどれだけいるかによるといえます。
一人が拒否しても値上げの回避にはつながりませんが、拒否する組合員が多ければ決議の結果が変わる可能性もあるでしょう。
出典
デジタル庁 e-GOV法令検索 建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第三十一条、第三十九条
東京電力ホールディングス株式会社 平均モデルの電気料金
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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