70代の父親に運転をそろそろやめて欲しい…。説得をしたいのですが免許返納のメリットはありますか?また、車の維持費が無くなることで「節約」になりますか?
配信日: 2025.04.28

本記事ではアンケート調査の結果とともに、免許返納のメリットや交通費への影響ついて紹介します。

執筆者:新納康介(にいろ こうすけ)
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA
専門領域:食料安全保障、マイクロファイナンス、超高齢社会
ホームページ https://www.irric.co.jp/research/index.php
RM NAVI https://rm-navi.com/
自動車の維持費がゼロに
自動車の維持費には、自動車税、車検費用、自賠責保険料、任意保険料、メンテナンス費用、ガソリン代などが含まれます。当然、自動車の種類、利用の仕方によって異なりますが、少なくとも年間30万円はかかるといわれています。年金をメインの収入として生活をされる方にとってはかなりの出費かもしれません。
しかし運転免許を返納して、自動車を処分することで、この維持費がゼロになります。一方で、電車、バス、タクシーなどの交通費が発生してしまうので注意が必要です。
交通費が月額3万円も削減?
MS&ADインターリスク総研株式会社が「運転免許返納者」を対象に行った2021年のアンケート調査では、1ヶ月あたりの交通費(車の維持費を含む)は、運転免許保有時と返納後で変化はあったかを聞いています。アンケート結果は図1のとおりです。
運転免許の返納により交通費がトータルで減ったとする回答は、38.1%で、月額3万円以上の節約ができたとする回答は、7.2%でした。逆に交通費がトータルで増えたとする回答は8%でした。つまり、これは、運転免許の返納により、交通費が増えてしまい、節約にならなくなる可能性は1割未満であることを示しています。
図1 運転免許を保有しなくなってからの交通費の変化
出典:MS&ADインターリスク総研株式会社「運転免許返納者に対するアンケート調査(2021年)」をもとに筆者作成
運転免許返納は、経済面以外にもメリットがあります
運転免許の返納によるメリットには、直接的な費用の削減の他にも、「事故を起こす心配がなくなる」ことや、「運動量が増えて健康になる」ことが挙げられます。つまり、精神面、健康面でもメリットがあるということが前述のアンケートで明らかになっています。
これらは、まわりまわって医療や介護の費用の節約につながります。なぜならストレスが減り、健康になるということは、「健康寿命の延伸」「認知症の防止」にもつながるのです。このようなメリットを高齢ドライバーであるご家族に強調してみることも効果的かもしれません。
運転免許返納後のQOLの維持は重要
ただし、高齢ドライバーの運転免許の返納により、単純に外出の頻度が減ったということでは、交通費は節約できてもQOL(Quality of Life、生活の質)を損ねてしまいかねません。そこは運転免許返納の前にあらかじめ考えておく必要があります。お買い物、通院、およびレジャーなどのための足の確保はQOLの維持のために不可欠です。
まとめ
高齢者ドライバーの運転が危ないのかについては、年齢も考慮すべきですが、年齢で一律に危ないとするのも問題です。運転からの卒業も個別の事情で考えるべきだといえます。
ご両親の説得方法に悩んでいる場合は、運転適性診断を受けてもらうことや、自動車保険のテレマティクスサービスが提供する安全運転スコアなどの客観的な指標を利用してお話をすることをおすすめします。
出典
MS&ADインターリスク総研株式会社 高齢者の運転免許の返納者の実態と意識について ~アンケート調査結果より(2021年版)~ リサーチ・レター2021年第2号
※2025/4/28 記事を一部修正しました。
執筆者:新納康介
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA