75歳の母親に補聴器を買ってあげたいのですが「20万円」もするそうです…補助金など費用をおさえられる制度はないのでしょうか?
配信日: 2025.05.08

しかし、補聴器は性能や機能などによっては数十万円するものもあるため、金銭的な負担は大きくなると考えられます。本記事では、補聴器購入時に利用できる制度や助成金について詳しくご紹介します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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補聴器購入に介護保険は使えない?
介護保険の対象となる福祉用具に該当するものを購入する際は、保険が給付されます。
厚生労働省によると、介護保険における福祉用具の範囲の考え方のひとつに「起居や移動等の基本動作の支援を目的とするものであり、身体の一部の欠損又は低下した特定の機能を補完することを主たる目的とするものではないもの」があります。
聞こえを補う補聴器は「特定の機能を補完することを主たる目的とするもの」に該当すると考えられるため、介護保険の対象となる福祉用具には含まれないようです。
さらに、健康保険や生命保険なども一般的には適用されないため、多くの人が補聴器の購入費用は全額自己負担だと考えているでしょう。ただし、補聴器購入に対する助成制度を設けている自治体もあります。
補助を受けられる制度もある?
保険は適用されませんが、補聴器を購入するにあたって補助を受けられる制度もあるため、事前にチェックしておきましょう。
まず「補装具費支給制度」を利用する方法です。補聴器などの補装具を必要とする障害者、障害児、難病患者などが対象となり、申請により補助を受けられる可能性があります。
厚生労働省によれば、対象と認定された場合、補聴器などの補装具購入費用の原則1割を利用者が負担し、残りの9割は国や都道府県・市町村などの公的補助で賄うことができます。なお、世帯の所得状況により負担上限月額が設定されており、市町村民税課税世帯は3万7200円が負担上限月額となっています。
ほかにも、補聴器の購入費用が医療費控除の対象となる場合もあります。医療費控除とは、その年に支払った医療費が一定額を超えたときに所得控除を受けられる制度のことです。
補聴器の購入が診療や治療を受けるために直接必要であると医師が判断した場合、一般的に支出される水準を著しく超えない範囲であれば、その購入費用は医療費控除の対象となる可能性があります。
自治体による助成金制度の例
自治体によっては独自の助成金制度を利用できるところもあります。いくつかの自治体を例に挙げて「高齢者補聴器購入費助成事業」の内容をまとめました(2025年5月2日現在)。
東京都港区
東京都港区が実施する制度の内容を表1にまとめました。
表1
対象者 | 以下の条件を全て満たす方 ・60歳以上の者または区が実施する高齢者聴力検査の対象者 ・区が指定する医療機関(補聴器相談医在籍)の医師が、補聴器の装用を必要と認める人 ・聴覚障害による身体障害者手帳の交付を受けていない人 |
対象機器 | 管理医療機器としての補聴器本体(片耳1台分)とその付属品 |
助成額 | 補聴器購入額(上限14万4900円) ただし、住民税課税の人は補聴器購入額の1/2(上限7万2450円) |
出典:港区「生活の援助(福祉サービス) 高齢者補聴器購入費助成事業」を基に筆者作成
愛知県豊田市
愛知県豊田市の制度内容は、表2の通りです。
表2
対象者 | 次の全てを満たす方 ・市内で在宅生活をしている18歳以上の人 ・医師により補聴器が必要と認められた人 ・市のほかの補聴器助成の対象者でない人 |
対象機器 | 補聴器本体(1台分)、付属品(イヤモールド、充電器、電池) |
助成額 | ・本人と同世帯の配偶者が市民税非課税の人:購入費用の半額(上限3万円) ・本人または同世帯の配偶者が市民税課税の人:購入費用の半額(上限1万5000円) |
出典:豊田市「給付・サービス 高齢者等補聴器購入費助成事業」を基に筆者作成
福岡県豊前市
福岡県豊前市では、表3のような制度内容です。
表3
対象者 | 以下の全ての要件を満たす方 ・市内に住所を有する65歳以上の方 ・聴覚障害による身体障害者手帳の交付を受けていない方 ・市民税非課税世帯に属する方 ・身体障害者福祉法第15条に規定する医師の診断を受け、補聴器の必要を認める証明(医師意見書)を受けた方 ・過去に本事業の助成を受けていない方 |
対象機器 | 管理医療機器としての補聴器本体のみ |
助成額 | 上限2万円(1人1回限り助成) |
出典:豊前市「高齢者 65歳以上の高齢者の補聴器購入費を助成します」を基に筆者作成
今回の事例のように、補聴器の購入にあたって費用をおさえられる制度や助成金を探している人は、住んでいる自治体に該当する制度がないか調べてみるとよいでしょう。
補聴器購入に介護保険は使えないが、助成金制度が適用される場合もある
補聴器は性能や機能によっては数十万円することもありますが、介護保険は適用されないため、全額自己負担しなければならないと思っている人もいるでしょう。
しかし、「補装具費支給制度」が適用されると原則として1割負担で済むため、申請が可能か確認してみることをおすすめします。また、自治体によっては独自の助成金制度を利用できるところもあるので、調べてみるとよいでしょう。
出典
厚生労働省 介護保険制度における福祉用具、居宅介護支援について 介護保険制度における福祉用具の範囲の考え方(3ページ)
厚生労働省 福祉用具 補装具費支給制度の概要
港区 生活の援助(福祉サービス) 高齢者補聴器購入費助成事業
豊田市 給付・サービス 高齢者等補聴器購入費助成事業
豊前市 高齢者 65歳以上の高齢者の補聴器購入費を助成します
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー