更新日: 2019.06.26 その他暮らし
子どものお金は、教育資金ではなくて、進学資金を貯めていく
教育資金は、お子さんが学校を卒業するまで、ずっとかかる費用だと思いますよね。だから、将来の子どもの進学に向けてお金を貯める…確かに間違いではないのですが、文科省のデータを見ると、私たちが今まで思っていた教育資金は、実は「進学資金」だったということが分かります。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
幼児教育から高校までの学習費。思ったよりも少ない?
文部科学省「平成28年度 子供の学習費調査」を見ると、幼児教育から高校までの学習費がどれぐらいかかるか、の目安を知ることができます。
学習費の総額には、学校に通ううえで必要な学校教育費はもちろん、給食費や学校外の活動費も含まれます。上の表は、幼稚園から高校まですべて公立に通った場合の学習費の総額です。
興味深いのは、このケースの場合、教育資金が1月当たりおおよそ4万円以下になっているということです。公立なので確かに少ないとは思いますが、みなさんが思う教育資金のイメージはもっと高額だったのではないでしょうか。
私立大学にかかる費用はいくらくらい?
それでは、大学にかかる費用はどのようになっているのでしょうか。
文部科学省「平成28年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によると、私立大学にかかる費用は下の表のようになっています。
例えば、私大の文系の場合、初年度にかかる費用の平均が115.1万円となっています。この金額から入学料23.5万円を引いた金額は91.6万円。これが2年目~4年目までに最低限かかる1年ごとの固定費です。そして、これを1カ月当たりの金額に換算すると7.6万円になります。
この金額を幼稚園から高校まで公立に通った場合の1カ月当たりの金額と比べると、それなりに高いと感じるかもしれません。
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幼稚園~高校までのお金が「教育資金」、大学に通うためのお金が「進学資金」
このようなことから、原則的に「教育資金」は幼稚園~高校までのお金、そして、「進学資金」は大学に通うためのお金といった、一定の定義づけができるのではないでしょうか。
つまり、このケースでは、教育資金が子どもを学校に通わせるために使っていく目先のお金である一方、進学資金は、将来の進学に向け長期的に貯めていく必要があるお金ということになります。
一般的なご家庭の教育課程では、このようなことが言えますが、必ずしもすべてに当てはまるわけではありません。当たり前のことですが、幼稚園から大学まで私立の学校に通ったり、子どもが2人、3人といるご家庭ではもっとお金がかかります。
というわけで、今回お伝えしたかったことは、教育資金と進学資金はそもそも意味合いが異なっているため、世間で言われているように「教育資金はちゃんと準備しなきゃダメだよ」といった流れに安易に乗らなくてもいいのではないでしょうか、ということです。
子どもがどのような教育課程に進むかは未知の世界です。…だから、教育資金を準備するというのは分かりますが、ここにばかり目がいってしまうと、今度は老後に向けたお金を貯めるのがおろそかになってしまいます。
子育てしながら、老後のお金を貯めるのは難しいものです。でも、方法はいろいろとあります。お金に目的をつけて上手に貯蓄していくようにしましょう。次回は、「保育園・幼稚園の無償化」についてお伝えしていきます。
出典
文部科学省「結果の概要-平成28年度子供の学習費調査」
文部科学省「平成28年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)