結婚30年、50代で離婚を考えています。夫の退職金「2000万円」はどのくらい“財産分与”されるのでしょうか?

配信日: 2025.09.01 更新日: 2025.09.26
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結婚30年、50代で離婚を考えています。夫の退職金「2000万円」はどのくらい“財産分与”されるのでしょうか?
熟年離婚を考えている場合、夫の退職金がどの程度財産分与されるか気になっている方も多いのではないでしょうか。退職金は長年の夫婦生活で築き上げた財産として、財産分与の対象になる可能性があります。
 
しかし、その金額や分与の方法は夫婦それぞれの状況によって大きく異なることに注意が必要です。本記事では、退職金が財産分与の対象となるケースや具体的な分割割合について解説します。
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高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

退職金は財産分与の対象になる?

退職金は「給料の後払い」といわれており、財産分与の対象となる可能性が高いです。退職金が財産分与の対象となるかどうかは、次の3つのケースに分類できます。
 
まず1つ目は、すでに退職金が支払われている場合です。この場合、退職金は夫婦の共有財産として預貯金などと同じ扱いとなり、財産分与の対象です。婚姻中に築き上げた財産であるため、財産分与の対象として取り扱われます。
 
2つ目は、夫が在職中で、退職金が支払われる前の場合です。会社の退職金規程が確立しており、将来の支払いが確実に見込める場合には、退職金の一部が財産分与の対象と認められることがあります。
 
この場合、離婚までの勤続年数に応じて退職金の一部が共有財産として計算されます。
 
3つ目は、退職金制度が存在しない場合や退職金の支給が不確実な場合です。このケースでは、財産分与の対象と認められない可能性が高いです。
 
退職金は「夫婦が協力して築き上げた財産」として評価され、その実態に応じて分与の可否が判断されます。退職金を財産分与の対象にしたい場合は、退職金が支払われたあとに離婚するほうが有利になる可能性が高いでしょう。
 

結婚30年のケースで財産分与の分割割合は?

財産分与の基本的な分割割合は、原則として2分の1です。名義の有無に関係なく夫婦が協力して築いた財産を半分ずつに分ける、という考え方に基づいています。
 
ただし、退職金の全額が2分の1ずつ分与されるわけではなく、夫婦が協力して財産を築いた期間に応じて計算されます。
 
結婚して30年が経過した夫婦の場合、夫が退職金を受け取る会社に結婚前から勤めていたとしても、財産分与の対象となるのは結婚から離婚までの期間に相当する部分です。
 
夫の勤続年数が40年で、そのうち結婚期間が30年、退職金が2000万円と仮定すると、「2000万円×30年÷40年=1500万円」で計算され、1500万円が財産分与の対象金額です。そして、1500万円の半分である750万円が分与額の目安となります。
 
最高裁判所事務総局の「令和6年 司法統計年報 3 家事編」によると、婚姻期間が25年以上ある場合に、離婚調停や審判で財産分与の取り決めがあった件数は1946件であり、その金額と割合は図表1のとおりです。
 
図表1

財産分与の支払額 件数 構成比
100万円以下 126 6.47%
200万円以下 106 5.45%
400万円以下 223 11.46%
600万円以下 202 10.38%
1000万円以下 323 16.60%
2000万円以下 369 18.96%
2000万円を超える 230 11.82%
算定不能・総額が決まらず 367 18.86%

出典:最高裁判所事務総局「令和6年 司法統計年報 3 家事編 第27表」より筆者作成
 
最も割合が高いのは、1000~2000万円の18.96%、次いで600~1000万円の16.60%です。この統計から、婚姻期間が長い夫婦は、600~2000万円の間で財産分与が行われるケースが多いことが分かります。
 

退職金を財産分与する際の注意点

退職金を財産分与の対象にする際には、いくつかの注意点があります。まず、すでに退職金が使われてしまっている場合は財産分与の対象にはなりませんが、離婚時点で残っている退職金相当額については、財産分与の対象となります。
 
そのため、退職金の支給前後に相手が財産を処分するリスクがある場合は、財産の保全のため裁判所に「仮差押え」の申立てを検討するとよいでしょう。ただし、仮差押えを行えば、離婚問題が解決するまで退職金を使用することを防げますが、その必要性や見込み額を裁判所に提示する必要があります。
 
また、財産分与の対象は退職金だけではなく、預貯金や不動産、生命保険の解約返戻金なども含めて総合的に判断される点にも注意が必要です。妻も退職金を受け取る立場にある場合は、双方の退職金を合算して分け合うことになり、妻の退職金が高額な場合には分与額が減少する可能性があります。
 
退職金の財産分与は個々の事情によって大きく異なるため、弁護士や行政書士などの専門家に相談しましょう。正確な分与額を把握し、有利に交渉を進められます。
 

離婚時の退職金の分与は専門家に相談して適切な金額を確認しよう

結婚30年で離婚を考えている場合、夫の退職金2000万円は財産分与の対象となる可能性が高いといえます。ただし、財産分与の対象となる金額は「結婚してから離婚までの期間」に相当する部分であり、原則としてその金額の2分の1が分与の目安です。
 
ただし、共有財産の有無や夫婦の収入状況によって分与額は変動するため、弁護士や行政書士などの専門家に相談して、状況に応じた適切な金額を算出してもらいましょう。
 

出典

最高裁判所事務総局 令和6年 司法統計年報 3 家事編
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修 : 高橋庸夫
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