高校3年生・保護者のための奨学金早わかりガイダンス(後編)
配信日: 2019.05.23 更新日: 2019.06.14
前編と合わせてご覧ください。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
申込方法
予約は在籍する高校に必要書類を提出し、インターネットで申込みます。浪人生は卒業後2年まで在籍していた高校を通じて申込むことが可能です。
マイナンバーは、直接、日本学生支援機構に郵送します。郵送することを忘れている方が多いと聞きます。注意してください。
高3の春に申込んだ場合、10月下旬頃、採用候補者決定通知書の交付を受けます。この時点では、まだ、予約の段階なので、進学後、インターネットで「進学届」を出すことにより正式に奨学生になります。「進学届」を出さなければ自動的にキャンセルになります。
ただし、進学先が日本学生支援機構の対象校でない場合は、奨学金を借りることができませんので注意しましょう。
志望校が決まっていなくても予約できます。予約時に、貸与月額、利率の算定方式、保証制度など決めなければなりませんが、「進学届」を提出する時に変更可能です。また、貸与月額などは在学中にも変更可能です。
少しでも奨学金を借りる可能性があるのであれば、予約しておくと良いでしょう。
貸与奨学金は借金
日本学生支援機構「平成29年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」(平成31年3月29日)によると、返還義務を知った時期は、無延滞者では「申込手続きを行う前」が89.0%と9割近いのに対し、延滞者では50.9%と約半数にとどまり、申込手続きまでの認識が十分でないことがうかがえます。
また、延滞者では、貸与終了(卒業など)後に返還義務を知った者の合計は19.1%で、その半数以上の10.7%は「延滞督促を受けてから」知ったと回答している。
日本学生支援機構の奨学金には、返済義務のある貸与奨学金と返済義務のない給付奨学金がありますが、現行の給付奨学金を受給できるのは極端に少なく、ほとんどが貸与奨学金です。奨学金は借金であるということを十分に理解して、返済のことも十分考え、借金してまで進学する価値のある学科などかなどを十分吟味して借りるようにしましょう。
なお、毎月の返還額は、日本学生支援機構のホームページに掲載している「奨学金貸与・返還シミュレーション」で試算できます。
返還が困難になったとき
返還は貸与終了後7か月目から始まります。3月卒業であれば10月からです。病気や失業などで返還が困難になったとき、日本学生支援機構では救済措置を設けています。「減額返還」と「返還期限猶予」があります。
毎月の返還額を1/2(1/3)に減らすことができるのが「減額返還」です。その分の返還期間は2倍(3倍)になりますが、返還予定総額は変わりません(利息は増えません)。
毎月の返還を先延ばしにすることができるのが「返還期限猶予」です。その分返還完了が後ろ倒しになりますが、返還予定総額は変わりません(利息は増えません)。
返還が困難になったら放置せず、日本学生支援機構に相談しましょう。
延滞がつづくと
上記の手続きをとらず、返還金を延滞すると、日本学生支援機構から本人、連帯保証人、保証人に対して、文書と同時に電話による督促が行われます。
延滞3か月以上続くと、個人信用情報機関に個人情報が登録されます(いわゆるブラックリスト化)。
こうなると、クレジットカードの作成・利用が制限され、ローンを組むことも厳しくなります。登録情報は、返還完了後5年間は残ることになります。さらに、9か月超の延滞で、未返還残高等一括請求されることになります。
延滞する前に、返還が困難になったら放置せず日本学生支援機構に相談しましょう。
目的意識を持って進学することが大切
「友達が進学するから自分も行く」「指定校推薦で入れるところならどの大学でも良い」などといった動機で大学等に進学するのはリスクがあります。
大学等では高校と違って専門性を高めるための授業が行われます。興味のない学科に進学しても学問に打ち込めないでしょう。数百万円の借金をしてまで進学する意義があるでしょうか。
しっかり、目的意識を持って進学し、借金の元を取るつもりで、学びたい学科に打ち込むことが大切ではないでしょうか。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。