更新日: 2019.06.28 子育て

生活保護世帯の大学等進学の現状と進学を支援する制度とは

生活保護世帯の大学等進学の現状と進学を支援する制度とは
低所得世帯を対象に大学や短期大学などの高等教育を無償化する法案が5月10日、参院本会議で可決、成立しました。新たな支援の内容は、入学金・授業料の減免と返済義務のない給付型奨学金(学資支給金)の2つです。
 
低所得世帯、特に生活保護世帯にとっては朗報です。生活保護世帯の子どもが大学等に進学する場合の経済的な支援制度について解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

生活保護世帯の大学等進学の現状

生活保護の子どもの大学等の進学率は33.1%にすぎず(2016年4月時点)、全世帯の73.2%を大きく下回ります。理由の一つとして経済的な問題があります。
 
現行制度では、生活保護を受けながらの大学等への進学は認められていません。18歳になると「稼働能力がある」とみなされて、自立のため、働いて収入を得ることが求められます(生活保護法第4条)。
 
就労せずに大学等に進学する場合は、生活保護から外れなければなりません(世帯分離)。学費の他、生活費も、アルバイトや奨学金で賄わなければなりません。
 
世帯分離は別居を意味するわけではありませんが、従来は、「住宅扶助」も減額されていましたので、子どもの大学等進学で保護者の生活も苦しくなりました。この点については改善され2018年度から「住宅扶助」を減額しないこととなりました。
 
進学を後押しする経済的支援は、2018年度から「進学準備給付金」の支給が始まりました。自宅通学生には10万円、自宅外通学生には30万円が支給されます。2017年度からは、日本学生支援機構の給付型奨学金がスタートしました。しかし、私立大学自宅生の場合、月額3万円と決して十分な金額とは言えません。
 
そこで、新たな支援制度では、2020年度に大学等に進学する生徒を対象に、従来の給付型奨学金の対象や支援額を拡充した新しい給付型奨学金と大学等の入学金・授業料の減免措置を創設しました。
このような支援を活用して、生活保護世帯の子どもたちは、大学等進学を諦めないで欲しいと思います。
 

生活保護世帯の給付型奨学金の支給金額

返済義務のない給付型奨学金の支給金額は、世帯の所得金額に基づく区分に応じて、学校の設置者(国公立・私立)及び通学形態(自宅通学・自宅外通学)により決まります。
 
所得金額に基づく区分は3段階に分かれ、年収の目安で表すと、両親・本人・中学生の家族4人世帯の場合、第I区分は年収約270万円未満、第II区分は年収約270万円以上約300万円未満、第III区分は年収約300万円以上380万円未満となります。第I区分の支給額を1とすると、第II区分の支給額はその3分の2、第III区分はその3分の1になります。
 
生活保護世帯の人及び進学後も児童養護施設等から進学する人は、それ以外の方の支給額と異なります。例えば、私大自宅生の場合、第I区分の支給額は月額3万8300円になりますが、生活保護世帯の場合は、月額4万2500円となります。
 

 

 

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入学金等の準備はどうする?

大学等進学のための新たな支援措置は、日本学生支援機構の給付型奨学金の他、大学等が行う入学金・授業料の減免があります。
 
入学金等については、一般的に、入学する前に納付を求められます。大学等において入学金等の納付時期の猶予を行ってくれれば良いのですが、一旦、入学金等を支払った上で、入学後に減免が確定した際に学生等に対して減免相当額を還付するケースも想定しておく必要があります。
 
生活保護世帯に生活保護費以外の収入があった場合、原則、収入認定され保護費から減額されますが、アルバイトで稼いだお金や奨学金を大学の受験料と入学金に充てることは認められており、収入認定から除外されます。
 
大学等進学を目指す人は、アルバイトや奨学金で入学金を貯めておいたほうが良いでしょう。
 
※2019/06/28 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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