独身の叔父が病気で働けなくなり、「生活保護」を申請することに。姪である私の元にも「扶養照会」の電話がきたのですが、“年収400万円以下”でも援助しなければなりませんか…?
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「生活保護」を申請すると「扶養照会」が行われる
厚生労働省は生活保護について、「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とした制度」であるとしています。
生活保護の受給にあたっては、以下に挙げられる措置などを講じた上で「なお生活に困窮している状態である」ということが前提です。
・資産の活用
・能力の活用
・その他利用可能な手段の活用
・扶養義務者の扶養
この「扶養義務者の扶養」の観点から、生活保護の申請を受けた福祉事務所は、扶養義務者へ「扶養照会」と呼ばれる問い合わせを行うケースがあります。
扶養義務者からの扶養は保護に優先されるのが原則
民法第877条が定める扶養義務者は、「三親等内の親族」です。「三親等」には本人の曾祖父母やひ孫のほかに、「おじ・おば、甥・姪」などの「傍系血族」も該当します。従って、掲題の「独身の叔父」の「姪」にあたる方も「三親等内の親族」であり、民法上の「扶養義務者」の1人です。
厚生労働省は「親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください」としています。そのため掲題の事例のように、姪や甥であっても病気で働けなくなった叔父の援助をお願いされる可能性はあるようです。
扶養照会が「生活保護の申請」の障壁に? 扶養を断ることも可能!
ある国会議員は第211回国会において、「生活保護申請における扶養照会と民法第八百七十七条第一項、第二項及び第七百五十二条の扶養義務規定に関する質問主意書」を提出し、「扶養照会は、親族に知られたくないという申請者の思いから申請の妨げになり、真に必要な人に支援がいきわたらないというだけでなく、一人につき複数回の照会をかける場合もあり、事務作業が膨大であり自治体に大きな負担となっている」と指摘しました。
また日本弁護士連合会(日弁連)についても、パンフレット「あなたも使える生活保護」の中で、「援助(扶養)を強制されることはありません」との見解を示しています。
加えて、「援助はできる範囲ですればよく、援助する気持ちや余裕のない場合には、親族は断ることができます。また、親族が援助を断っても生活保護は利用できます」という立場も取っています。
掲題の事例のように、扶養義務者自身に十分な生活余力がない場合には、援助が困難と判断されることもあります。そのため、仮に扶養を断っても法的な問題は生じないと解釈されるケースもあるようですが、状況に応じて慎重に判断する必要はあるかもしれません。
まとめ
生活保護申請に際しての「扶養照会」は、「扶養義務者の扶養」の観点から行われる問い合わせです。
申請者本人があらゆる援助を活用した上で申請する制度であるため、申請者の「甥・姪」であっても扶養照会が実施されるケースが考えられます。
しかし、親族の援助は強制ではなく経済的な事情などを理由に扶養を断ることもできるようです。そして、親族に援助を断られた場合でも生活保護申請を進めることはできるため、状況に応じて慎重に判断するのがいいでしょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
e-Gov法令検索 民法第877条
衆議院 生活保護申請における扶養照会と民法第八百七十七条第一項、第二項及び第七百五十二条の扶養義務規定に関する質問主意書
日本弁護士連合会 あなたも使える生活保護(4ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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