これからのマイホーム選び(一戸建て編)
配信日: 2019.07.03
以前は「いつかは一戸建て」という希望をお持ちの方が多かったのですが、最近では、終(つい)の棲家としてマンションを選択する人も増えました。最近はマンション価格が高騰したことから、一戸建てとマンションの価格の差が縮まっています。
一戸建てとマンションのどちらを選ぶかはそれぞれのメリットとデメリットを考えておく必要もあるでしょう。また、物件選びの際のチェックポイントも抑えておく必要があります。今回は「一戸建て」を選択する場合のアドバイスをお伝えします。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
http://www.nishiyama-ld.com/
「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。
西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/
「一戸建て」のメリットとデメリット
マンションと比較した場合の一戸建てのメリットとしては、
・上下、左右に接する居宅がなくプライバシーが保たれやすい
・庭や敷地内の駐車場がついている
・増築やリフォームなどが自由にできる
・土地の所有権がついている(借地権の場合もあり)
・ペットが飼える(マンションでは規約を守らなければならない)
などがあげられるでしょう。
また、デメリットとしては
・(マンションと比べ)駅から離れていることが多い
・修繕費などを自分自身で計画的に積み立てておく必要がある
・セキュリティー面で脆弱
・自分で庭木の手入れなどをする必要がある
・2階以上の場合、階段などで有効面積が減り、家の中の動線も制約を受ける(バリアフリーなども含めて)
などがあげられます。
人それぞれ異なるチェックポイント
マイホームを選択する際、重視すべきポイントも人それぞれです。誰にでもマッチする家というのはありません。地域によっても違いますし、予算の額によっても選択肢は変わってきます。
家族の人数や年齢、職場や学校の場所など、様々な事情もあります。それにより、希望する物件の場所(立地)や面積、間取りも大きく変わってくるでしょう。地震があり、四季もある日本の住宅は、欧米に比べ過酷な環境に耐えなければなりません。耐震性や環境性能などは日進月歩で進化しています。
モデルルームなどに行くとハウスメーカーの営業マンは自社で施工を請けたいため、良いことばかり話します。ほかのメーカーに比べて自社がどれほど優れているかを語る人も少なくありません。あらかじめ、自分たちにとって最も重視すべきことは何なのかを考えておく必要があります。
今だけを考えないこと
まず大切なことは「今のことだけを考えない」ということです。立地について、例えば「お子様が学校に通いやすいところ」と通学に便利な立地を中心に物件探しをしたとします。今通っている学区を離れたくない、という場合があることも否定はしません。
しかし、お子様の学校に通う期間は限られています。一方でマイホームはその後何年も住み続けることになるでしょう。また、駅からバス便や、距離があって高低差もあるような立地の場合、将来にわたって不自由がないかどうかも確認しておく必要があります。
人口が減少しているエリアでは、バス路線が廃止になることもありえます。バス便でなくても、坂道の上り下りがきつく、結局家に引きこもってしまわざるをえないような場所もあるでしょう。
面積や間取りについても将来を見据えておく必要があります。お子様の性別によって別々の子供部屋が必要になったり、お子様が独立したりした後のことも考えるべきかもしれません。
今だけでなく、少なくとも20年、30年先の家族の形をイメージすることが重要です。先のことはわかりません。実際には、当初の想定と違うことも起きるかもしれません。しかし、様々な想定に柔軟に対応できるかどうかも重要です。
「建売り」か「注文住宅」か
一戸建てを選ぶ場合に選択肢として「建売り」と「注文住宅」のどちらにするかがあります。
「建売り」というのは、すでに出来上がっている、あるいは施工中の建物を購入するもの。一方「注文住宅」は土地を購入し、自分で選んだハウスメーカーや工務店に施工を依頼するものです。設計士(建築士)に設計を依頼し、さらに工務店を選ぶという場合もあります。
注文住宅の場合、「土地購入時」には土地の売主に、「建物発注時」には施工業者にと代金を支払うタイミングが2回以上になります(着工時と竣工時に分けて支払う場合のほか、設計料を別途支払う場合は3回以上の場合もあります)。
土地を購入するときに、予定している施工業者から施工費の概算見積りを取り、金融機関に土地代と建物代の合計額で住宅ローンの相談をしておくことで、対応が可能です。
逆に言えば、施工費の見積りが必要になることから、あらかじめどこの施工業者に依頼するか目星をつけておく必要があります。施工業者にあらかじめ概算を依頼するにはどのようなプランにするか、あらかじめ考えておかなければなりません。
土地には建築基準法などの法や条例で建蔽(けんぺい)率や容積率、斜線規制など様々な制約があります。想定している施工業者に検討している土地で希望するプランが実現できるかどうかも併せて確認するようにしましょう。
「建売り」の場合、すでに出来上がっている物件、あるいは設計が決まっている物件を購入するのでこうした手間はかかりません。しかし、建売り住宅は多くの人に幅広く受け入れられる、特徴のないプランになっているものが少なくありません。
せっかく一戸建てを買うのならば、ちょっと個性的なプランや、内外装のデザインなどを検討することも楽しみの一つだと言えます。
進歩する「耐震性能」と「環境性能」
もうひとつ重要なことがあります。「建売り」の場合、建物はローコストで建てられたものがほとんどです。
ほとんどのお客様が物件探しの際に考えるのは、立地(所在地)、面積、間取りと価格。「○○線△△駅から徒歩10分以内の80平方メートル以上、3LDKで価格は6000万円以内」といった感じです。
土地代は相場がありますし、周辺の競合物件とのバランスもあるでしょう。建売業者が価格で差をつける場合、施工費をいかにコストダウンするかが重要になってきます。
住宅の場合、床下や壁の中、天井裏などは完成すると見えなくなってしまいます。この見えなくなる部分がコストダウンのポイント。
部材のグレードや、耐震性能も含めた構造、断熱材が薄かったり、サッシのグレードが低かったりするなどの影響で環境性能が劣ることもあります。なかには手抜き工事の物件もあるかもしれません。
耐震性能は建築基準法で求められる基準があります。ただ、建築基準法の基準は「震度7程度の地震でもすぐには倒壊しない」というもの。
つまり、一回の震度7では倒壊しないことから直ちに人命には影響しないというレベルです。熊本地震のように震度7に複数回見舞われるような場合の想定はしていません。
最近の大手ハウスメーカーは耐震性能について、建築基準法で求められるレベルを大きく上回る耐震性能を有している建物を作っている会社が増えています。
地震はいつ来るかわかりませんし、その物件の立地がどのくらいの震度になるかもわかりません。しかし「我が家は安心」と思えることは重要なことだと思います。
環境性能についても、最近の住宅は進歩しています。特に2020年からは住宅に求められる環境性能について新基準に適合する必要があります。ローコストのハウスメーカーに中には、新基準になる前に建てて売ってしまおうという姿勢の会社も残念ながら存在します。
買ったばかりの建物がすぐに「旧基準」になってしまうと、仮に何らかの事情でその建物を売りに出す場合にも評価は下がってしまいますし、そもそも環境性能が低いということはエネルギー効率が悪く、新基準の建物よりも空調費の負担も増えることになります。
これらの性能が高ければ価格も上がります。「30年住めればいい」と割り切る考え方もありますが、次の世代にも継承したい資産として考えるような場合、長い目で見るとどのような選択をすべきか変わってくるかもしれません。
まとめ
他にもいろいろ考えるべきことはありますが、一戸建ての物件選びをする場合に気にすべき重要なポイントの一部をご紹介しました。
最近はマンション価格が高騰したのに対し、一戸建ての価格は比較的安定しており、結果として、同じくらいの面積で比較した場合の価格差が小さくなりました。
都心部では、土地の価格が高いため、総額ではまだ戸建の方が高いですが、少し都心から離れ、土地代が下がると価格の差はほとんどないところも増えています。
マンション販売業者も都心から離れた場所の物件は戸建と競合するため、最近では、新築マンションの販売戸数も減っています。
戸建の場合、立地にもよりますが、建物のように経年劣化しない土地の所有権もあることから、資産価値としては維持しやすいとも言えます。「いつかは一戸建てに住みたい」と考える人にとって、今は一戸建て購入のチャンスと言えそうです。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役