【独身偽装】マッチングアプリで「友人の夫」を発見!「彼女はいない」と言ってるけど“嘘ではない”なら詐欺じゃない? 知らぬ間に「不倫シタ側」になるケースも…実際の判例をもとに解説
しかし、「妻がいない」とは言っていないから、うそではないともいえます。そんな巧妙な独身偽装が法的にどう裁かれるのか、気になる人も多いかもしれません。本記事では、独身偽装の定義、詐欺罪の成否、実際の判例を分かりやすく解説します。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP
独身偽装とは何か
独身偽装とは、一般に「法律上の婚姻関係にある人(既婚者)が、その事実を隠したまま、相手に゛自分は独身(未婚)だ”と思い込ませたうえで、恋愛関係や性的な関係、あるいは結婚を前提とした交際などに入る行為」を指します。
独身偽装は、相手の人生設計に直接かかわる「婚姻の有無」という核心的な情報を隠したり、虚偽で伝えたりします。それにより、相手が自分の意思できちんと判断する機会を奪ってしまう点が問題です。
なお、現行の刑法や民法に「独身偽装罪」「独身偽装」という言葉が明文で登場するわけではありません。
ただ、恋愛・婚活・マッチングアプリにまつわるトラブルとして被害相談が増えるなかで、こうした行為をひとまとめに表す言葉として社会的に広まっている状態です。
うそはついていないから罪にはならないのか
「彼女はいない、と言ったのは本当のこと。妻がいないとは言っていないからうそはついていない」独身偽装をした既婚者がこんな言い訳をすることがあります。
確かに「彼女はいない」という言葉を文字どおりに読めば、「妻はいない」とは言っていません。しかし、その言い回しが相手に「この人は独身だ」と思い込ませる目的で使われたのであれば、独身偽装の評価を免れるのは難しいと考えられています。
しかし、独身偽装が直ちに詐欺罪(刑法246条)にあたるかというと、そう簡単ではありません。詐欺罪は、財産をだまし取ることを罰する「財産犯」です。そのため、交際すること・性的な関係を持つこと自体は、通常、財産犯の対象になりにくいとされています。
実際の法的トラブルでより争点になりやすいのは、民事上の「貞操権侵害(不法行為)」です。貞操権侵害とは、「性行為をする・しないを自分で決める権利=性的自己決定権」を、だまされたり強制されたりすることで侵害された状態を指します。
独身偽装の実際の判例
では、実際の裁判ではどのような判断がなされているのでしょうか。貞操権侵害などを理由に損害賠償が認められた裁判例を2つ見てみましょう。
【東京地裁】マッチングアプリで既婚を隠し交際→約150万円の支払い命令
裁判所・判決日: 東京地裁(2025年12月8日)
マッチングアプリで出会った男性が、既婚であることを隠して「独身」「交際相手はいない」などと説明し、約4ヶ月にわたって交際。その間、複数回の性交渉がありました。
裁判所は、既婚という事実を意図的に隠したまま関係を続けた行為が、相手の貞操権(性的自己決定権)を故意に侵した不法行為にあたると判断。慰謝料を含む損害賠償として、約150万円の支払いを命じました。
【大阪地裁】「独身限定」の婚活アプリで既婚が独身と偽る→55万円の支払い命令
裁判所・判決日: 大阪地裁(2025年10月21日)
独身者限定をうたう婚活アプリに既婚男性が登録し、独身であるかのように振る舞いながら交際・性交渉を重ねていたケースです。後に既婚であることが発覚しました。
裁判所は、婚姻の有無は性交渉を伴う交際をするかどうかを判断するうえで欠かせない情報だと指摘。独身と偽ることで相手がきちんと判断できる機会を奪ったことは貞操権侵害にあたるとして、慰謝料55万円の支払いを命じています。
まとめ
独身偽装とは、既婚者がその事実を隠したまま、恋愛関係や性的な関係、あるいは結婚を前提とした交際などに入る行為を指します。
「独身偽装罪」という法律上の罪名こそありませんが、相手の性的自己決定権を侵害したとして、民事上の不法行為(貞操権侵害)で慰謝料が認められた裁判例は複数あります。
「うそはついていない」という言い訳は通用しないケースがあり、被害に遭った場合は早めに専門家へ相談しましょう。
出典
法務省 性犯罪関係の法改正等 Q&A
執筆者 : よし・こう
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP
