SNS「年金や介護は子あり・なしで差をつけるべき」投稿に賛否!「少子化に貢献したのに」「生んだのは自己責任」…実際“払う税金・受けられる支援”はどう違う? 手取りから見る「負担の現実」
本記事では手取り収入の試算から、世帯の「負担の現実」を考え、どのように対処すればよいのかを検証します。
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「手取り」から見る、負担の現実
まず、議論の焦点となる「子なし世帯は社会に貢献していないのか?」という問いを、数字で検証します。
国税庁「民間給与実態統計調査」によると、給与所得者(男性)では年間給与額400万円超500万円以下が最も多くなっています。これをもとに、一つの例として年収500万円(40代会社員)の単身・子なし世帯の手取り額を見てみましょう。
年収500万円の場合、社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)の合計は約76万円前後となります。ここからさらに所得税・住民税が引かれますが、単身者の場合、適用される控除は主に「基礎控除」と「社会保険料控除」です。結果として、手取り額は約380万円程度になります。
一方で、子どもがいる世帯はどうでしょうか。同じ年収500万円でも、配偶者を扶養し、16歳以上の子ども1人の場合では、「配偶者控除または配偶者特別控除」や「扶養控除」の適用により、所得税・住民税が軽減されて、手取り額は約400万円程度です。
また「児童手当」などの給付もあるため、世帯収入は単身者より多い見込みです。
これだけを見ると、「子なし世帯のほうが税金を多く払っており、十分に社会を支えている」という主張は、家計という側面からは正論です。彼らが支払う多額の社会保険料や税金は、現在の高齢者の年金や医療費を支える重要な財源となっているからです。
「子育て支援」は不公平な優遇なのか?
しかし、視点を「生涯コスト」に移すと景色が変わります。子育て世帯には手当や税制優遇があるものの、日本政策金融公庫によると幼稚園から大学卒業までの教育費はすべて公立でも約820万円、すべて私立なら2000万円を超えるとされています。
「子どもを生むのは自己責任」という声もありますが、別の視点で見れば、子どもは将来の「労働力」であり「納税者」です。現在の日本の年金制度は、自分が積み立てたお金を将来受け取る「積立方式」ではなく、現役世代が受給世代を支える「賦課(ふか)方式」を基本としています。
つまり、子なし世帯が将来受け取る年金の原資を稼ぎ出すのは、自分たちの子どもではなく「他人の子どもたち」なのです。
子育て世帯が多大なコストと時間をかけて次世代の担い手を育てることは、社会全体の持続可能性を維持する「未来への投資」という側面を持っています。これが、国が多額の予算を投じて子育て支援を行う経済的な合理性です。
「差をつける」ことのリスクと、社会保障のジレンマ
仮にSNSでの意見のように、子どもの有無で年金額に差をつけた場合、どうなるでしょうか。
一見、少子化対策へのインセンティブになるようにも思えますが、現実には「格差の固定化」を招く恐れがあります。不妊に悩む方や、経済的理由で子どもを断念せざるを得なかった方にとって、老後の保障まで削られることは死活問題です。
また、厚生労働省の資料によれば、2070年には総人口が9000万人を割り込んで高齢化率は39%の水準になると推計され、介護現場の人手不足は深刻さを増しています。
将来、子どもが激減すれば、いくら現役時代に高い保険料を払い、多くの貯蓄を蓄えたとしても、サービスを提供する「人」がいなければ、適切な介護を受けることはできません。
この論争の本質は、「誰が得をしているか」ではなく、「全員が余裕を失っている」ことにあります。
子なし世帯は「取られるばかりで将来が不安」と感じ、子あり世帯は「支援があっても生活が苦しい」と感じている。この双方の不満が、立場の異なる相手への攻撃へと繋がっていると言えるでしょう。
個人の備えを強化することを優先すべき?
「子あり・子なし」に関わらず、私たちが直面しているのは「公的保障だけでは不十分かもしれない」という共通のリスクです。
制度の持続可能性を議論することは重要ですが、それと並行して、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった個人の備えを今すぐ検討すべきではないでしょうか。
まとめ
SNSで「年金や介護は子の有無で差をつけるべき」との投稿が波紋を広げましたが、日本での社会保障制度は「世代間扶養」という相互扶助で成り立っています。
子なし世帯は「金銭」という形で今の社会を支え、子あり世帯は「次世代」という形で未来の社会を支えている。この両輪があって初めて、国は成り立ちます。
まずは自身のライフプランを冷静に見つめ直すこと。そして、異なる立場の苦労を数字で理解しようと努めることが、この先不透明な時代を生き抜くための第一歩となるでしょう。
出典
国税庁 令和6年分民間給与実態統計調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
