生活保護世帯です。子どもが大学への進学を希望していますが、生活保護世帯でも大学進学はできますか?

配信日: 2026.03.12
この記事は約 6 分で読めます。
生活保護世帯です。子どもが大学への進学を希望していますが、生活保護世帯でも大学進学はできますか?
生活保護世帯の子どもが大学等へ進学すると生活保護世帯から外されてしまい、自ら学費、生活費、医療費などを捻出しなければならず相当の負担です。しかし、進学を後押しするさまざまな制度を利用して、進学することは可能です。
新美昌也

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

生活保護世帯の進学率

厚生労働省の調査によると、直近の全世帯の高等学校等進学率は98.9%、大学等進学率は76.4%(うち、大学・短大進学率は57.7%、専修学校・各種学校進学率は18.7%)となっています。
 
一方、令和6年4月1日時点、生活保護世帯の高等学校等進学率は92.5%、大学等進学率は40.6%(うち、大学・短大進学率は24.2%、うち、専修学校・各種学校進学率は16.4%)となっています。
 
また、都道県別では、最も進学率が高いのは京都府(56.6%)となっており、次いで兵庫県(49.0%)、沖縄県(48.9%)の順です。一方、最も低いのは和歌山県(18.9%)、島根県(19.2%)、香川県(19.7%)となっています。
 
単純には比較できませんが、生活保護世帯の大学・短大進学率は、全世帯に比べ半分とかなり低くなっていますが、さまざまな支援策により大学等進学率は年々上昇しています。
 

生活保護世帯の子どもが大学等に行くデメリット

現行の生活保護制度では、高校卒業後に大学等へ進学するには、昼間働いて夜間大学等に通うような場合を除いて、生活保護を利用しながら就学することは認められていません。
 
そのため、大学等に進学するには、世帯分離(別居する必要はありません)する必要がありますが、世帯分離すると、生活保護で受けていた生活扶助や医療費扶助について、自分の分のが利用できなくなります。ただし、同居している場合は、住宅扶助費は減額されません。
 
したがって、大学等に進学した同居の子どもは、住居費以外の自分の生活費や学費について、奨学金やアルバイト等で捻出する必要があります。また、市区町村の国民健康保険に加入する必要がありますので、相当の負担となります。
 

生活保護世帯の子どもが大学等に行くメリット

大学卒は、高校卒に比べさまざまなメリットがあります。例えば、「就職先の選択肢が広がる」「大学卒でなければ得られない資格を取得できる」「生涯の友が得られる」などです。特に大きいメリットは生涯賃金の差です。
 
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2024」によると、高校卒と大学卒の生涯賃金(60歳まで、退職金を含めない)を比べると、高校卒女性1億5440円・男性2億880万円に対して、大学卒女性2億190万円・男性2億5150万円となっており、高校卒と大学卒では生涯賃金で約5000万円の差があります。
 
文部科学省の令和7年度の調査等を参考に試算すると、入学から卒業までの学費は、国立大(4年制)は約243万円、私立大文科系は約454万円、理科系は約613万円となります。高校卒と大学卒の生涯賃金の差は約5000万円ですので、大学等への進学は大きな投資効果が得られます。
 

大学等進学を後押しするさまざまな制度

大学等進学を後押しする主な制度を紹介します。
 

・進学給付金

高校等を卒業して進学する生活保護世帯の子どもには、「進学準備給付金」が支給されます。支給額は、進学のために転居する場合は30万円、現在の自宅から通学する場合は10万円です。
 
申請は、入学手続きを開始した日以降、原則、生活保護世帯に属している間に行います。合格発表後、速やかに進学準備給付金を受け取ることができるよう、受験校がまったら、まずはケースワーカーに相談しましょう。
 

・高等教育の修学支援新制度

学費や生活費については「高等教育の修学支援新制度」が利用できます。これは、大学等の授業料・入学金減免と、原則返還を必要としない日本学生支援機構の給付奨学金がセットになった制度です。
 
例えば、生活保護世帯の子どもが私立大学に進学する場合、入学金約26万円、授業料約70万円まで減免され、自宅通学の場合は月額4万2500円、自宅外通学の場合は月額7万5800円が給付されます。
 
この制度の対象となる学校は限られていますので、志望校に確認しましょう。令和7年11月25日現在、大学・短期大学は95.6%、専門学校は79.6%が対象となっています。
 
在籍する高校卒業年次の春に、予約申し込みできますので予約しましょう。
 
日本学生支援機構の奨学金には原則返還不要な給付奨学金のほか、返還必要な貸与奨学金があります。貸与奨学金には、月額貸与の無利子の第一種奨学金と利子付き(上限利率3%)の第二種奨学金、利子付きの入学時特別増額貸与奨学金があります。
 
これらは条件を満たせば、すべて併用できます。採用候補者になっても進学時に辞退できますので、迷った場合はすべて予約申し込みするとよいでしょう。申し込みの際、学力基準として1・2年の評定平均値が3.5以上必要ですが、ない場合でも高校がレポート等で学修意欲や進学目的等確認できれば学力基準を満たします。
 
給付奨学金と併せて貸与を受ける場合、第⼀種奨学金の貸与月額は給付奨学金の支援区分等に応じて併給調整され、生活保護世帯の場合は0円となりますので、第二種奨学金も申し込んでおきましょう。
 
貸与奨学金も、「高等教育の修学支援新制度」は利用できませんので注意しましょう。
 
入学手続きに必要な入学金等が不足する場合、アルバイトや社会福祉協議会の「教育支援資金の貸付制度(無利子)」が利用できます。また、ひとり親家庭であれば市区町村の「母子父子寡婦福祉資金貸付制度(無利子)」が利用できます。
 
また、有利子ですが、「国の教育ローン(日本政策金融公庫)」の利用も可能です。さらに、日本学生支援機構の「入学時特別増額貸与奨学金」の採用候補者は、労働金庫(ろうきん)の「入学時必要資金融資」も利用できる可能性があります。
 
これら公的貸付制度や各種奨学金は、収入認定除外の取り扱いをしてもらえますので、ケースワーカーに事前に相談してください。
 
その他、大学独自の奨学金や民間団体の奨学金は、給付型が多いので調べてみましょう。
 
また、キーエンス財団の大学新1年生対象給付型奨学金は、月額給付額12万円(4年間)、1500名募集の大型奨学金となっています。民間団体の奨学金を探すには、奨学金検索サイトを利用するとよいでしょう。
 

まとめ

生活保護世帯の子どもでも、経済的な理由で進学を諦める必要はありません。進学給付金、高等教育の修学支援新制度などさまざまな支援策がありますので、進学後の生活の計画を立てられるように高校生の早い段階でケースワーカーに相談しましょう。
 

出典

厚生労働省 生活保護制度
独立行政法人労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2024 -労働統計加工指標集-
文部科学省 高等教育の修学支援新制度
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 給付奨学金の支給額
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 給付奨学金と併せて利用する第一種奨学金(併給調整)
公益財団法人キーエンス財団 あなたの、これからの4年間を支えます 返済不要の給付型奨学金
 
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

  • line
  • hatebu

【PR】子どもの教育費はいくらかかるの?かんたん30秒でシミュレーション

【PR】 yumobile
【PR】
FF_お金にまつわる悩み・疑問