コンビニで550mlのボトルの水が108円でしたが、2Lのボトルも同じ値段なので2Lのほうを購入しました。でも、全部飲み切れずに中身を捨ててしまいました。なんでこんなことをしたのかモヤモヤしています。
最初に提示された数字や情報(アンカー、船のいかり)が、その後の判断に無意識に影響を与える認知バイアスの一つに「アンカリング効果」があります。アンカリング効果は、購買行動において非合理的な判断をもたらすことがあるので注意が必要です。
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA
専門領域:食料安全保障、マイクロファイナンス、超高齢社会
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アンカリング効果
コンビニの水の場合、アンカリング効果は次のように考えられます。550mlサイズで108円という価格が、最初に目にするアンカーとして機能します。その後に提示される2Lサイズでも108円という価格は、アンカーと比較されます。
2Lサイズの水は550mlあたりに換算すると、108円 ÷ 3.6(550mlが約3.6本分)=30円となり、108円に対して圧倒的に安価に感じられます。もし550mlの価格を知らずに、いきなり2Lで108円という価格だけを見ても、それほどお得感を感じないかもしれません。しかし、550mlの価格がアンカーとして存在することで、2Lの価格がより魅力的に映るのです。
水はサイズで用途が違う
しかし、単純に単価の差でお買い得かどうかを決めてしまうと後悔することになりかねません。2Lサイズの水は、そもそも家庭などにおけるストック用で、重くて持ち運びに不便ですし、中身を全部飲みきるには1日かかるかもしれません。
一方で、550mlサイズの水は携帯がしやすく、外出時の水分補給に便利です。実際は、同じ水でもその量によって用途と需要が異なるため、それぞれに合理的な価格がつけられているのです。
今回のケースでは、そもそも携帯用の水を購入するにあたって、ストック用の水と値段の比較をしています。その結果、飲み切れない水を捨ててしまう結果となりました。このようなことを防ぐために「安い、お得だから買う」の前に「必要なものを必要な分だけ買う」という考えも大事にすることをお勧めします。
アンカリング効果の応用と注意点
アンカリング効果は、意図的に使われることがあります。例えば、レストランで「お待ち時間は約30分です」と言われた後、20分で案内されると、「30分(アンカー)より早く案内された」と受け取り、顧客はよいサービスを受けたと感じやすくなります。
また、「通常○○円のところを××円で大サービス」といったいわゆる二重価格表示は、通常価格をアンカーとして、割安感を強調し、アンカリング効果を狙うものです。しかし、このアンカーが、実際と異なる場合やあいまいな場合は、不当なものとして景品表示法に違反するおそれがあります。
アンカリング効果を理解することは、賢い購買行動の第一歩となるでしょう。ぜひ、日常生活のさまざまな場面でこの効果を意識してみてください。
出典
消費者庁 二重価格表示
執筆者 : 新納康介
MS&ADインターリスク総研 主席研究員、東北大学大学院国際文化研究科招聘講師、英Cardiff Business School MBA
