隣家の「庭の木」が“わが家の敷地”まで伸びて迷惑! 妻は「勝手に切っちゃえば?」と言いますが、無断で切るとこちらが“器物損壊”で訴えられる!? 合法的な手順とは
そのため見かねた妻が「うちの敷地に入っているんだから、勝手に切っちゃえば?」と言うこともあるかもしれませんが、「無断で枝を切り落としたら、逆に『器物損壊』で訴えられるのでは?」と不安に感じる人もいるでしょう。
本記事では、となりの木の枝を無断で切った場合のリスクと、近年の民法改正によって明確化された「自分で枝を切るための合法的な手順」について解説します。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
無断で切ると「器物損壊」や「損害賠償」のリスクあり
結論から言うと、妻の言うように無断でとなりの木の枝を切ってしまうのは、非常に危険な行為です。いくら自分の敷地内に伸びてきているとはいえ、その木の所有権はあくまで「となりの家の人」にあります。
他人の所有物を勝手に傷つけたり切り落としたりする行為は、刑法上の「器物損壊罪」(3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金等)に問われる可能性があるほか、民法上の「不法行為」として、木の価値が下がった分の損害賠償を請求されるおそれがあります。
「はみ出しているほうが悪いのだから」という自己判断での実力行使は、日本の法律上原則として認められていません。まずはこの事実を夫婦でしっかり共有し、感情的になって勝手に伐採するのは絶対に避けましょう。
民法改正により「自分で切る」ことが可能に
以前の法律では、となりの家の枝が越境してきても、自分で切ることはできず「となりの人に切ってもらうようお願いする」か、応じてくれない場合は「裁判を起こして切除を命じる判決をもらう」しか方法がありませんでした。
これではあまりにも時間と費用がかかりすぎ、泣き寝入りするケースが多発していました。
そこで、近年の民法改正によりルールの見直しが行われました。現在の民法(第233条)では、一定の条件を満たせば、越境された側の土地の所有者が「自ら枝を切り落としてもよい」と明確に定められています。
これにより、以前のような「裁判をしないと解決できない」という高いハードルが下がり、現実的な対処ができるようになりました。
自分で枝を切り落とすための「3つの条件」
では、どのような条件を満たせば、罪に問われず合法的に自分で枝を切ることができるのでしょうか。現在の民法では、以下の3つのケースのいずれかに該当する場合に、自ら切り取ることを認めています。
1.お願いしても相当の期間内に切ってくれないとき
最も一般的なケースです。まずはとなりの家の人に「枝が越境して生活に支障が出ているため、〇月〇日までに切除してください。対応いただけない場合は、民法第233条に基づきこちらで切除いたします」とお願い(催告)をします。
それでも相手が「相当の期間内」に切ってくれない場合は、自分で切除することが可能です。この「相当の期間」とは、枝を切るための業者手配などの準備期間を考慮し、一般的に「2週間程度」と解釈されています。今日お願いして、「明日すぐに切っていい」というわけではない点に注意が必要です。
2.所有者が分からない、または連絡先が不明なとき
となりの家が空き家になっており、誰が所有者なのか調査しても分からない場合や、所有者は分かってもどこに住んでいるのか不明で連絡が取れない場合は、期間を待たずに自分で切除することができます。
3.急迫の事情があるとき
「台風で太い枝が折れかかっており、今にも自分の家や車にあたりそう」「地震で木が傾き、倒壊の危険が迫っている」といった、命や財産を守るために一刻を争う緊急事態であれば、事前のお願いなしにすぐ自分で切除することが認められます。
トラブルを防ぐための注意点と費用の問題
条件を満たして自分で枝を切る場合でも、後々の「言った・言わない」「勝手に切られた」というご近所トラブルを防ぐために、口頭だけでなく「手紙」や、可能であれば「内容証明郵便」を利用して、お願いした証拠を残しておくことが重要です。
また、切る前と切った後に日付入りの写真を撮っておくと、合法的な対応であったことを証明する強力な証拠になります。
なお、自分で枝を切るためにかかった費用(ノコギリなどの購入費、業者への依頼料、ゴミとしての処分代など)は、本来は木の所有者が負担すべきものなので、となりの家に請求することが法律上は可能です。
しかし、実際にお金を素直に払ってもらえるかは相手次第であり、強引に請求するとその後のご近所関係が修復不可能になるおそれもあります。
まずは「ご自身で切っていただけませんか?」と直接丁寧にお願いし、できる限り相手方に対応してもらって円満に解決する道を探るのが、もっともストレスの少ない賢明な対処法といえるでしょう。
出典
法務省 令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント
執筆者 : 高橋祐太
2級ファイナンシャルプランナー技能士
