多子世帯の大学無償化(給付型奨学金)は毎年更新が必要? 手続き期限と、継続願を出さない場合の影響を知りたいです
一見朗報ですが、一方で多くの注意点があります。多子世帯であるからといって、自動的に入学金や授業料が無償になることはなく、卒業さえすればよい、というわけではありません。
後で「しまった!」とならないよう、本記事でポイントと注意点を解説します。
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。
多子世帯の大学無償化とは?
ここで、「そもそも高等教育負担軽減制度って何?」という方に向けて、簡単におさらいしておきましょう。
高等教育、いわゆる大学や専門学校などの無償化制度は2020年度(令和2年度)に始まりました。本記事で説明する授業料等減免や給付型奨学金も、この時にスタートしたものです。
ただし、この時点で支援対象になる学生は、扶養する子の数や進路にかかわらず、「住民税非課税世帯、及びそれに準ずる世帯の学生」としており、年収目安380万円までの世帯が対象でした(図表1)。
図表1 高等教育の修学支援新制度(令和2年時)
出典:文部科学省(※1)
しかし、子どもの数が多ければ多いほど、家庭にとって高等教育費の負担は重くなります。そのような家庭にとっては、年収がいくらあっても足りない、ということもあるはずです。
そこで、2025年度からは、多子世帯への授業料等減免について、年収制限が撤廃されました(図表2)。
つまり、扶養している子どもが3人以上いれば、大学や短大、高専や専門学校の入学金と授業料が国公立か私立かにかかわらず、減免の対象になったのです。
図表2 高等教育の修学支援新制度(令和7年度から)
出典:文部科学省(※2)
具体的な支援内容は?
具体的な支援内容には、給付型奨学金と授業料・入学金減免の2つがあります(図表3)。
図表3 支援内容
出典:JASSO(※3)
給付型奨学金の支給額は、国公立大学の場合は図表2の区分に応じて、月額7300円から最大2万9200円、私立大学の場合は月額9600円から最大3万8300円が支給されます(いずれも自宅通学の場合)(※4)。
一方、授業料・入学金減免は、国公立大学の場合は入学金が28万円、授業料が54万円です。私立大学は入学金が26万円、授業料が70万円の支援となっています(図表4)。
図表4:授業料・入学金減免の支援額
出典:文部科学省(※5)
ちなみに、日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、令和6年度の国立大学の平均授業料は年45万7100円、私立大学が年101万4100円(いずれも昼間部)となっています(※6)。進学する学部にもよりますが、授業料だけに絞れば、国立大学の授業料は授業料減免額でまかなえるかもしれません。
多子世帯支援の注意点は?
多子世帯への支援が拡充されたことは喜ばしいのですが、制度の内容はその分やや複雑になった感があります。利用の際は次の点に注意しましょう。
1. 給付型奨学金と授業料・入学金減免の両方を受けられる、とはかぎらない
ここは、見落としやすいポイントです。
多子世帯支援の拡充により、年収制限が撤廃されたのは授業料・入学金減免です。給付型奨学金は、図表2にあるとおり、所得などに応じて支援区分が分かれ、支援額が変わります。
また、これは多子世帯にかぎりませんが、給付型奨学金には「高等学校等における第1学年から申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること」(※7)などの学力基準が設けられています(予約採用の場合)。
つまり、年収や学力、その他の基準(学生と生計維持者の資産合計額など)によっては、給付型奨学金は受けられず、授業料・入学金減免のみ受けられる、ということがあり得ます。
2. 子が3人いても、子が扶養から外れると多子世帯の扱いではなくなる
多子世帯の判定対象となる子とは、おおまかには家族や親族から経済的な支援を受けている子です。その判定は、マイナンバーを通じて日本学生支援機構(JASSO)が行います。
しかし、その子が就職するなどして一定の収入を得て扶養から外れてしまうと、その子が「多子世帯」の子としてカウントされなくなります。
例えば、子が3人いて、年長の子が大学に入学した場合は、その下の子が扶養親族に該当していれば、年長の子は多子世帯の支援を受けることができます。
しかし、年長の子が卒業して就職した場合は、多子世帯の判定となる子は2人となるため、下の2人の子は多子世帯の支援を受けることができません。
なお、もし年長の子が大学院に進学した場合、大学院の入学金や授業料は支援の対象ではありません。しかし、引き続き扶養親族であれば、多子世帯の子としてカウントされるため、その下の2人の子は支援を受けられる可能性があります(※8)。
制度を利用するにはどんな手続きが必要?
前置きが長くなりましたが、ここからは表題にあるとおり、制度利用後の手続きです。以降、収入要件がある給付奨学金を前提に説明します。
支援対象者となった場合は、毎年行われる「在籍報告」と「適格認定」で、対象者として要件を満たしているかが確認されます。なお、表題にある奨学金継続願は、給付奨学金については2024年度から廃止されています(※9)。
このなかで、特に気になるのは適格認定の方でしょう。学力基準と家計基準があり、支援の継続のためには、これらの基準を満たす必要があります(図表5)。
図表5 支援対象者の要件
出典:文部科学省(※10)
特に、学生である支援対象者の方にとっては、2年次以降の学業成績がGPAで上位2分の1以上となっている点は注意が必要です。
もし手続きを忘れたら?
期限までに在籍報告を提出しなかった場合、もしくは家計基準を満たさなくなった場合は、支援の支給が止まってしまいます。
しかし、そのまま打ち切りになってしまうわけではなく、その後に提出すれば支援は再開されますが、止まっていた期間分の支援はその後も支給されない恐れがあります。
一方、以下の場合に該当した場合は、支援自体が打ち切られてしまいます(※11)。
・修業年限で卒業・修了できないことが確定した場合
・修得単位数が標準修得単位数の6割以下の場合
・授業への出席率が6割以下など、学修意欲が著しく低いと大学等が判断した場合
・連続して警告(例、修得単位数が標準修得単位数の7割以下)を受けた場合(停止を除く)
以上のとおり、支援を受けられるようになったからといって、その後も自動的に支援が継続されるわけではありません。在学中であっても、在籍報告を忘れず、家計、学力基準を満たしているかどうか、保護者と子の両方が注意しておく必要があります。
不安を感じたら自ら学生課へ確認
ここまでお読みいただいた方は、制度の内容や認定方法、そして在学中の手続きなどが複雑だと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
申請漏れなどを防ぐためには、学校からの通知には必ず目を通してください、と申し上げたいところですが、学校によっては通知のタイミングや、通知方法に違いがあります。不安を感じたら、自ら学校の担当部署(学生課など)に問い合わせて、前もって情報を得ておくことをお勧めします。
出典
(※1)文部科学省 高等教育の修学支援新制度について
(※2, 5)文部科学省 令和7年度からの奨学金制度の改正 P6
(※3)独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 高等教育の修学支援制度リーフレット
(※4)独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 給付奨学金の支給額
(※6)独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 令和6年度学生生活調査結果 IV集計表 P1
(※7)独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 進学前(予約採用)の給付奨学金の学力基準
(※8)文部科学省 令和7年度からの奨学金制度の改正に係るQ&A P4 問3-4
(※9)独立行政法人日本学生支援機構(JASSO) 「奨学金継続願」を入力しましょう
(※10, 11) 文部科学省 大学生の皆さんへ(※11は筆者一部修正)
執筆者 : 酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。






