足の悪い母のため「年金10万円」を“母のキャッシュカード”で引き出しています。友人に「親の死後に兄弟から『使い込み』と言われ泥沼になる」と言われましたが、親子で同意があるなら大丈夫ですよね?
親の同意があったとしても、家族がキャッシュカードで現金を引き出す行為は、後になって「使い込み」を疑われるリスクをはらんでいます。本記事では、親の口座管理に潜む相続時のリスクと、対処法についてFPの視点から解説します。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
「親に頼まれた」は証明が難しい? 死後に発覚する使い込みの疑い
親が元気なうちは、「毎月10万円下ろしてきて」という口頭のやり取りだけで、生活が回ることはもあるでしょう。しかし、親が亡くなると銀行口座は凍結され、遺産分割協議のために過去の取引履歴がほかのきょうだいにも開示されることがあります。
このとき、毎月ATMで引き出されている「10万円」という記録を見たきょうだいから、「母の生活費に毎月10万円もかかるはずがない。使い込んでいたのではないか」と疑問を持たれるケースがあります。
親が亡くなっている以上、「母に頼まれた」という主張を証明してくれる人はいません。結果として、民法第703条に定められた「不当利得返還」請求として、引き出したお金の返還を求められ、きょうだい間でトラブルに発展する可能性があります。
口約束だけでは不安。「証拠」を残しておく方法
こうした使い込みの疑いをかけられないようにするためには、客観的な証拠を残しておくことが大切です。引き出した10万円が、親の食費、医療費、介護サービス代などに使われたことを示せるよう、買い物のレシートや病院の領収書を保管しておくとよいでしょう。
ノートなどを1冊用意し、「〇月〇日、生活費として10万円出金」という記録とともに、その月にかかった領収書を貼り付けておく方法も有効です。「これだけの介護費用や生活費がかかっていた」という記録があれば、ほかの兄弟にも状況を理解してもらいやすくなります。
銀行の規約にも注意。正しい管理方法は「代理人カード」
相続トラブルとは別の視点でも、注意しておきたい点があります。
銀行のキャッシュカードは、名義人本人以外の利用を規約で禁じています。銀行窓口で「母のカードで代わりに下ろしている」と伝えると、不正利用や預金者の判断能力の低下を疑われ、口座が凍結される可能性があります。
この問題に対応する方法として、親に判断能力があるうちに、銀行窓口で「代理人カード(家族カード)」を発行してもらう方法があります。代理人カードであれば、指定された代理人がATMで親の預金を引き出すことができ、銀行の規約にも沿った形になります。
まとめ
親のキャッシュカードを預かって現金を引き出す行為は、親切心からであっても、将来の「使い込みトラブル」につながる可能性があります。
支出の領収書を保管し、可能であれば親と一緒に銀行へ行き代理人カードを作成するなど、早めに準備しておくことをおすすめします。
執筆者 : 高橋祐太
2級ファイナンシャルプランナー技能士

