「イカの街・函館」に移住したのに“不漁&高値”で肝心のイカがいない!? 名物スルメイカが「1キロ1万円」の“ご祝儀価格”…それでも「オオズワイガニ1匹300円」で食卓は豊か? 在住者が実録レポート
それでも、わが家の食卓が寂しくなったわけではありません。昆布やホッケ、大量発生したカニ、新顔の養殖サーモンなど、イカ以外の海の幸が驚くほど充実しているからです。
この記事では、名物に起きた異変を入り口に、港町のリアルな食生活を在住者の目線でお伝えします。
FP2級、北海道在住ライター
そもそも、なぜ「イカの街」でイカが消えたのか
函館のスルメイカは、なぜここまで手の届かない存在になったのでしょうか。価格や漁の現場、専門家が指摘する原因を順に見ていきます。地元で起きている変化は、想像以上に深刻なものでした。
スルメイカが記録的不漁に。取扱量は過去最低、初競りは1キロ1万円超という現実
函館の市場では、スルメイカの取扱量と初競りの値段が、不漁の深刻さを映しています。まずは図表1で取扱量の推移を確認します。
図表1 函館市水産物地方卸売市場のスルメイカ取扱量
| 年度 | 取扱量 |
|---|---|
| 2008年度(ピーク) | 約8924トン |
| 2023年度 | 約317トン(過去最低) |
| 2025年度 | 約694トン(やや回復) |
函館市水産物地方卸売市場の資料より筆者作成
ピーク時と比べると、直近の取扱量は1割にも届きません。全国の漁獲量も1968年の約56万トンから、2022年度は約3万7000トンへと大きく落ち込みました。初競りの最高値も上がり続け、2026年にはご祝儀相場で1キロ1万2000円まで跳ね上がっています。ご祝儀価格とはいえ、名物が高嶺の花になりつつある状況がうかがえます。
イカがなくても食卓は豊か――在住者が実際に買っている海の幸
写真1
筆者撮影
ここからは、わが家の食卓に実際に並ぶ魚介を紹介します。価格は近所のスーパーで見かける目安です。イカが高くても献立に困らない理由が、きっと伝わるはずです。
まずは、この記事で紹介する魚介と価格の目安を図表2にまとめました。
図表2 スーパーで販売されている魚介と価格の目安
| 魚介 | 価格の目安 | ひとことメモ |
|---|---|---|
| オオズワイガニ | 1匹 数百円 | 大量発生で手頃、時期による |
| 真ホッケ | 1匹 500~1000円 | 日常の焼き魚の定番 |
| ゴッコ(ホテイウオ) | 数百円 | 冬の鍋向き、下処理に一癖 |
| 函館サーモン | 刺身が数百円で並ぶことも | 新顔で価格は不安定 |
| ブリ | 切り身 数百円 | 漁獲豊富だが地元消費は低め |
| 北寄貝・ツブ貝・マダラ・ニシンほか | 品目により様々 | 通年で食卓を支える地物 |
筆者作成
いずれもイカより手が届きやすく、季節ごとに入れ替わりながら食卓に並びます。ここから一つずつ、味や食べ方を紹介します。
厄介者が救世主に!? 大量発生の「オオズワイガニ」が1匹数百円
写真2
筆者撮影
北海道の太平洋側では、2023年ごろから日高や噴火湾でオオズワイガニが大量に発生しています。もともとはカレイ漁の網を破ってしまう厄介者として扱われてきました。
ところが安く売り出したところ人気が高まり、いまでは甲羅盛りなどの加工品も登場しています。時期によっては1匹200~300円ほどで並び、イカが高騰する食卓の心強い味方になっています。身は小ぶりですが甘みがあり、味噌汁にすると濃厚なだしが出ます。
食卓の定番「真ホッケ」――脂ののった開きが1匹500~1000円
函館の食卓で最もなじみ深い焼き魚が、脂ののった真ホッケの開きです。近所のスーパーでは1匹500~1000円ほどで手に入ります。肉厚の身はふっくらと焼き上がり、大根おろしとの相性もよく合います。
値段が手頃で調理も難しくないため、忙しい平日の夕食でも活躍します。イカが特別な日のごちそうに変わったいま、日常を支えているのはこうした魚です。
冬の名物「ゴッコ(ホテイウオ)」――数百円だが下ごしらえに一癖
冬の函館を代表する魚が、ゴッコの名で親しまれるホテイウオです。数百円で買え、郷土料理の「ごっこ汁」にすると体が芯から温まります。
ただし調理の前に熱湯をかけて粘膜を取り除く下ごしらえが必要で、はじめは少し手こずるかもしれません。皮にはコラーゲンが多く、湯通ししてから煮るのが地元のやり方です。恵山地区では毎年2月に「恵山ごっこまつり」が開かれ、冬の名物として定着しています。
実は漁獲豊富な「ブリ」――切り身数百円なのに、地元では持て余され気味
函館は、意外にもブリの漁獲が豊富な街です。漁獲は多く価格も手頃ですが、函館にはもともとブリを食べる習慣がありませんでした。そのため、店先では持て余され気味です。近年はブリカツやブリ塩ラーメンなど、地元での消費を広げる動きも出てきました。
イカがなくても、函館はやっぱり「うまい魚介の街」
名物のスルメイカは、確かに遠い存在になりました。それでも函館の食卓は、豊かさを失っていません。ここまで紹介してきた海の幸を振り返り、この街の底力をまとめます。
昆布やカニ、ホッケにゴッコ、新顔の函館サーモンやブリまで、この街の海は驚くほど多彩です。スルメイカが値を上げても、旬をたどれば選べる魚介はむしろ広がります。
移住して実感したのは、「イカの街」という呼び名だけでは足りない港町の奥行きでした。名物のイカを待ちながら、手頃で豊かな海の幸に囲まれて暮らす。それが、いまの函館のリアルな食卓です。
出典
函館市 函館市地方卸売市場取扱実績(水産物・青果物) するめいか月別取扱実績
執筆者 : 木彫りグマ
FP2級、北海道在住ライター



