旅行で「東京の路線バス」に乗ったら、入り口で“PASMOをタッチ”して「たった200円請求」に衝撃! 地元は「距離に応じて料金が変わる」のですが、なぜ東京は“安くて定額”なのでしょうか?
地方から東京へ旅行や出張で来た人の中には、路線バスの乗り方に驚いた経験がある人もいるかもしれません。地方では、乗った距離によって料金が変わる路線が多く見られます。
一方、東京23区周辺では「どこまで乗っても同じ料金」のバスが多く見られます。乗車時にPASMOやSuicaを「ピッ」とタッチするだけで支払いが終わるため、「これで本当に大丈夫?」と戸惑う人も少なくないようです。
なぜ東京では、このような定額制が成り立っているのでしょうか。
FP2級、AFP、簿記3級
目次
都市部の路線バスは「どこまで乗っても同じ料金」が多い
地方の路線バスでは、後ろのドアから乗車して整理券を取り、降りるときに運賃表を見ながら料金を支払うケースが多く見られます。乗車した区間が長くなるほど、運賃も上がる仕組みです。
一方、東京23区を中心とした都市部では、「均一運賃制」を採用している路線が多くあります。例えば、東京都交通局が運行する都営バスでは、東京23区内は均一運賃で、2026年5月時点の普通運賃は大人210円です(図表1)。
数停留所だけ乗っても、終点近くまで乗っても、基本的には同じ料金となります。ただし、「東京のバスはすべて定額」というわけではありません。郊外路線などでは、乗車区間によって料金が変わるケースもあります。
図表1
東京都交通局 運賃・乗車券・定期券
バス運賃の決まり方には複数の方式がある
そもそも路線バスの運賃は、全国どこでも同じ考え方で決まっているわけではありません。国土交通省の資料では、一般バスの運賃の制定形態として「対キロ区間制」「特殊区間制」「均一制」「地帯制」の4種類が示されています(図表2)。
つまり、東京のように距離に関係なく同じ料金を支払う方式も、地方でよく見られるような乗車区間に応じて料金が変わる方式も、制度上認められた運賃の決め方なのです。
図表2
国土交通省 乗合バス運賃制度について
東京で均一運賃が広がる背景には「利用者の多さ」と「運行効率」がある
東京23区内を中心とした都市部で均一運賃が多く採用されている背景には、都市部ならではの利用環境があります。
人口密度が高く、短い距離でバスを利用する人が多いため、乗車のたびに細かく運賃を計算するよりも、一律料金にしたほうが乗降をスムーズにしやすいのです。
特に都市部では、停留所での乗り降りに時間がかかると、後続のバスや道路交通にも影響が出やすくなります。乗車時にICカードをタッチするだけで支払いが完了すれば、乗客にとっても分かりやすく、事業者にとっても運行管理がしやすくなります。
一方、地方では長距離を走る路線や利用者が限られる路線も多く、すべての区間を同じ料金にすると採算面で難しくなる場合があります。そのため、都市部では均一運賃、地方では距離制運賃が多いという違いが生まれやすいのです。
「当たり前」の仕組みは地域によって違う
普段は何げなく利用している路線バスですが、地域によって料金の仕組みは大きく異なります。
都市部では利用者数の多さや運行効率の観点から「均一運賃制」が採用されやすく、地方では長距離運行や採算性の面から、乗車区間に応じて料金が変わる方式が選ばれやすい傾向があります。
つまり、どちらが正しいというわけではなく、それぞれの地域事情に合わせて運賃の仕組みが設計されているのです。旅行先で「いつもと違う」と感じたバスの乗り方にも、その街ならではの交通事情やくらしが隠れているのかもしれません。
出典
東京都交通局 運賃・乗車券・定期券
国土交通省 乗合バス運賃制度について
執筆者 : 大林郁哉
FP2級、AFP、簿記3級



