10年以上音信不通だった父が要介護になり、地域包括支援センターから連絡が来ました。「施設費用を負担してほしい」と言われましたが、断ることは可能ですか?強制的に引き落とされたりするのでしょうか?

配信日: 2026.08.22
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10年以上音信不通だった父が要介護になり、地域包括支援センターから連絡が来ました。「施設費用を負担してほしい」と言われましたが、断ることは可能ですか?強制的に引き落とされたりするのでしょうか?
10年以上連絡を取っていない父について、突然「介護施設の費用を負担してほしい」と言われれば戸惑うでしょう。
 
親子には法律上の扶養義務がありますが、それだけで地域包括支援センターが子どもの銀行口座から施設費用を強制的に引き落とせるわけではありません。負担できない事情があるなら、その旨を伝えることは可能です。
 
ただし、扶養義務そのものがなくなるわけではないため、父の資産や年金、公的な負担軽減制度を確認し、必要に応じて家庭裁判所や専門家へ相談しましょう。
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親子には扶養義務があるが「施設費を全額払う義務」とは限らない

民法877条では、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養する義務があると定めています。実の父と子は直系血族なので、10年以上音信不通だったとしても、親子関係が続いている以上、法律上の扶養義務が直ちになくなるわけではありません。
 
ただし、これは「父の介護施設費が月15万円なら、子どもが必ず15万円全額を払う」という意味ではありません。
 
誰がどの程度扶養するかについて当事者間で話がまとまらない場合、家庭裁判所の扶養請求調停や審判を利用する仕組みがあります。裁判所は、扶養する側とされる側の収入、資産、生活状況、ほかの扶養義務者の存在など、さまざまな事情を考慮して判断します。
 
たとえば、自分にも子どもがいて住宅ローンや教育費を負担している、収入に余裕がない、父に年金や預貯金がある、といった事情があれば、それを無視して一方的に高額な負担が決まるわけではありません。
 
「親子なのだから払ってください」と言われただけで、その場で金額に同意する必要はありません。
 

地域包括支援センターが勝手に口座から引き落とすことはできない

地域包括支援センターは、高齢者や家族の相談を受け、介護、医療、福祉などのサービスにつなぐための公的な相談機関です。
 
厚生労働省によると、地域包括支援センターは市町村が設置主体となり、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員などが、高齢者と家族への総合的な相談支援などを行っています。
 
つまり、地域包括支援センターは家族から施設費を強制徴収する機関ではありません。
 
本人の同意も契約もないまま、センターが子どもの銀行口座から施設代を勝手に引き落とすことはできません。口座振替をするには通常、本人による手続きが必要です。
 
また、「支払います」という契約をしていない段階で、施設から突然自分宛てに請求が来たとしても、まず請求の根拠を確認しましょう。
 
仮に、これから介護施設への入所を行う段階だった場合、特に注意したいのは、施設入所の際に「身元引受人」「連帯保証人」などの書類へ安易に署名しないことです。契約内容によっては、父本人とは別に、子ども自身が費用を支払う義務を負うことがあります。
 
支払いが難しいなら、「自分が契約上の保証人になることはできません」「経済的な援助は難しいです」と最初にはっきり伝えることが大切です。
 

まず父本人の年金・資産と公的な軽減制度を確認する

民法上の扶養義務はあるため、父の施設入居が必須な状況であるなら、兄弟姉妹の誰かが協力しなければなりません。ただし、施設費を子どもが負担する前に、父自身の収入や資産でどこまで支払えるかを確認しましょう。
 
介護保険施設では、介護サービスの自己負担のほか、食費や居住費などがかかります。ただし、所得や預貯金が一定以下の人については、食費・居住費を軽減する「負担限度額認定」などの仕組みがあります。
 
厚生労働省も、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院などについて、低所得者向けに食費や居住費の補足給付を設けています。なお、令和8年8月1日より一定の利用者の負担限度額が引き上げられています。
 
父の年金額が少ないなら、高額介護サービス費など、ほかの負担軽減制度を利用できる可能性もあります。地域包括支援センターへ「私が払う前提ではなく、父本人が利用できる公的制度をすべて確認したい」と伝えましょう。
 
それでも生活そのものが成り立たない場合は、生活保護を含む福祉制度の相談が必要になることもあります。10年以上疎遠だった事情についても、隠さず説明してください。虐待を受けていた、父との関係に深刻な問題があったなど特殊な事情があるなら、法律相談も検討しましょう。
 

まとめ

実の父と子には民法上の扶養義務があります。そのため、「10年以上音信不通だから法律上まったく無関係」とは言えません。
 
しかし、地域包括支援センターから「施設費を負担してほしい」と依頼されたからといって、その金額をすぐ支払う義務が確定するわけでもありません。センターが本人の同意なしに子どもの口座から費用を強制的に引き落とすこともできません。
 
まずは父の年金、預貯金、介護保険の負担軽減制度を確認し、自分が経済的に負担できないなら正直に伝えましょう。また、施設の保証人になる書類には、責任の範囲を確認せず署名しないことが重要です。
 
扶養額について争いになれば、家庭裁判所の調停や審判で事情を踏まえて判断される仕組みがあります。突然の連絡だけで「自分が全部払わなければ」と抱え込まず、公的制度と相談窓口を使って負担方法を整理しましょう。
 

出典

e-Gov 法令検索 民法
裁判所 扶養請求調停
厚生労働省 地域包括支援センターについて
厚生労働省 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説
厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1506 令和8年5月29日
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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